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世界中で実行される「暗殺」を理解するための書籍5選


2017年に金正男氏氏が暗殺されたり、2018年にジャーナリストのジャマル・カショギ氏が暗殺されたりと、現在でも世界中で暗殺が行われています。歴史家でジャーナリストのマイケル・バーリー氏が、そんな暗殺に関する現状を理解するのにオススメな書籍5選をまとめています。

The Best Books on Assassinations | Five Books Expert Recommendations
https://fivebooks.com/best-books/assassination-michael-burleigh/

◆ジャッカルの日
バーリー氏は暗殺関連のオススメ書籍として、まず1960年代のフランスを舞台に、シャルル・ド・ゴール元フランス大統領を手にかけようとする暗殺者「ジャッカル」と警察の追跡を描いたフィクション小説「ジャッカルの日」を挙げています。バーリー氏は本作の「ド・ゴール元大統領を暗殺しようとするジャッカル」と「ジャッカルを追う警察」という2つの追跡描写が「狩り」のように描かれていると指摘。バーリー氏は「人類は、誕生以来多くの期間を狩猟採集社会で過ごしました。このため、人々は狩猟に似ている暗殺というテーマに魅了されるのだと思います」と語っています。

また、バーリー氏は1970年代から1980年代にかけてテロリストとして活動したイリイチ・ラミレス・サンチェスが、「ジャッカルの日」にちなんで「ジャッカル」と呼ばれていたことや、イスラエルのイツハク・ラビン元首相を暗殺したイガール・アミルが「ジャッカルの日」を愛読していたという逸話を挙げ、「私が執筆した本が、暗殺者のお気に入り書籍にならないことを願います。私は責任を負えません」と語っています。

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◆Stalin's Agent: The Life and Death of Alexander Orlov
次に、バーリー氏はソ連の国家保安機関に所属していたアレクサンドル・オルロフの生い立ちについてまとめたノンフィクション小説「Stalin's Agent: The Life and Death of Alexander Orlov」をオススメしています。バーリー氏によると、本作はオルロフ以外の国家保安機関所属者についてもまとめられているとのこと。本作では、それらの人物が外交官として活動しながらスパイ活動を行った詳細が描かれています。

バーリー氏は、本作の中で最も印象に残ったエピソードとして、ロシア・プーチン政権の内情について告発を続けるビル・ブラーダー氏の家族の多くがソ連の内務人民委員部(NKVD)の一員であったというエピソードを挙げ、「本作は全体にわたって啓示に満ちています」と語っています。

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◆The Man Who Killed Apartheid: The Life of Dimitri Tsafendas
バーリー氏はオススメ書籍の3作目に南アフリカのヘンドリック・フルウールト元首相を暗殺したディミトリオス・ツァフェンダスについてまとめたノンフィクション小説「The Man Who Killed Apartheid: The Life of Dimitri Tsafendas」を挙げています。バーリー氏は自身の著作「Small Wars, Far Away Places: The Genesis of the Modern World」でコンゴの歴史についてまとめていますが、南アフリカに関する仕事をしたことはなかったため、本作は非常に興味深い内容に感じられたとのこと。

フルウール元首相を暗殺したツァフェンダスは、精神的錯乱状態から犯行に及んだとされています。しかし、本作ではツァフェンダスが混血で「十分に白人」であったために「アパルトヘイトに反対する黒人による犯行」というストーリーを描けなかった警察当局が、ツァフェンダス氏に対する尋問を何週間にもわたって行い、「体内の寄生虫がフルウール元首相を暗殺するように命令した」という証言を聞き出したというエピソードが描かれています。加えて、本作では「体内の寄生虫がフルウール元首相を暗殺するように命令した」という非現実的な証言ができあがるまでの過程を、ツァフェンダスの生い立ちから詳細に解説しているとのことです。

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◆Sudden Justice: America's Secret Drone Wars
4作目のオススメ書籍は無人戦闘機(ドローン)による攻撃の現状についてまとめたノンフィクション小説の「Sudden Justice: America's Secret Drone Wars」です。ドローンを用いた軍事作戦は世界各地で実行されており、2021年5月には「完全自律ドローン」による攻撃が実行されたことも報じられています。本作は主にアメリカによるアフガニスタン・イラク・ソマリア・パキスタンへの攻撃に焦点を当てていますが、バーリー氏は「それほど遠くない未来に、世界中の国々がドローンを配備するでしょう」と語っています。

本作では、イスラム過激派組織の「ISIL」がAmazonで入手できるような安価なドローンを攻撃に用いていたことや、ドローンの管理を担当する軍人と空軍のパイロットのステータスの差など、ドローンにまつわるエピソードが大量にまとめられているとのこと。バーリー氏は「本作では、ドローンに関する全てを非常に詳細に知ることができます。これは素晴らしい本です」と語っています。

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◆The Killing in the Consulate: Investigating the Life and Death of Jamal Khashoggi
バーリー氏が最後にオススメする暗殺関連書籍は、2018年に殺害されたジャマル・カショギ氏が殺害されるに至った経緯についてまとめた「The Killing in the Consulate: Investigating the Life and Death of Jamal Khashoggi」です。

カショギ氏の暗殺にはサウジアラビアの皇太子が関わっていたと報じられており、バーリー氏もこの暗殺事件に関する記事をウェブに公開していました。記事の公開後に、バーリー氏のTwitterアカウントにアラビア語の脅迫メッセージが届き、メッセージアプリの「WhatsApp」にサウジアラビア大使館を自称する人物からのリンクを含むメッセージが届きました。バーリー氏はサウジアラビアのスパイウェア開発企業「NSO Group」が開発した「リンクを含むメッセージを送信してメッセージアプリのアカウントを乗っ取る」というソフトウェアの使用を疑い、Twitterアカウントを削除してWhatsAppを使うこともやめたとのこと。本作では、トルコの諜報機関がカショギ氏を追跡していたことを含む、暗殺までの過程や、暗殺に対する各国の反応が詳細にまとめられており、バーリー氏は著者のジョナサン・ラグマン氏が危険を省みず本作を公開したことを称賛しています。

Amazon | The Killing in the Consulate: Investigating the Life and Death of Jamal Khashoggi | Rugman, Jonathan | True Accounts

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in メモ, Posted by log1o_hf

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