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ドローンが大量破壊兵器になる危険性について専門家が警鐘を鳴らす

by John

小型のドローンは安価に手に入れることが可能で、宅配サービスにも利用されるなど、ドローンは日常に浸透してきたといえます。しかし、ドローンは大量破壊兵器として利用される可能性が十分にありえるとして、専門家が具体的な危険性を示すと共に警鐘を鳴らしています。

Anthrax Vaccine Debate:A Medical Review for Commande
(PDFファイル)https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CSDS/monographs/MONO60%20Drone%20Swarms%20as%20WMD.pdf

Swarms of Mass Destruction: The Case for Declaring Armed and Fully Autonomous Drone Swarms as WMD - Modern War Institute
https://mwi.usma.edu/swarms-mass-destruction-case-declaring-armed-fully-autonomous-drone-swarms-wmd/

2020年時点では、ドローンの目的は主に輸送や撮影といったものですが、大量破壊兵器として利用される可能性もゼロではありません。この危険性はかねてから叫ばれており、2017年に公開された「殺人ドローンが開発されてしまった世界ではドローンがいかに脅威になり人々の生活を脅かすのか」を描いたムービー「Slaughterbots」は、300万回再生を越えるほどの大きな話題となりました。

正義のための殺人ドローンが一般人を次々に殺し出すまでのシナリオを描いた近未来ムービー「Slaughterbots」 - GIGAZINE


ムービーに登場するような「群れになってターゲットを殺しにかかる自律的な殺人ドローン」はまだ開発されていませんが、「群れとして飛行するドローン」自体は実現しており、2018年にはIntelが2018台のドローンを飛行させました

また自律型ドローンもさまざまな場所で開発が進んでいます。完全自律型ドローンの群れを頭文字から「AFADS」と呼びますが、アメリカ・イギリス・韓国・中国・ロシアで開発されている防衛目的あるいは攻撃目的のドローン技術を総合すると、Slaughterbotsに登場するようなAFADSを作り出すことも可能と考えられています。なお、AFADSの「完全自律型」は、「自律的な飛行」と「自律的な標的設定」のいずれも可能であることを意味します。


無人システムや大量破壊兵器の専門家であるZachary Kallenborn氏は、AFADSの潜在的な危険性を鑑み、AFADSを大量破壊兵器として分類すべきだと主張しています。

Kallenborn氏による「ドローン」「複数のドローン」「ドローンの群れ」の違いは以下の通り。ドローンの群れは相互に連携を取るものを指す模様。


「AFADSを大量破壊兵器とみなすこと」は、法的には宇宙条約海底非核化条約第一次戦略兵器削減条約をドローンの群れに適用させることをいいます。しかし、言葉で表すとシンプルなのですが、実際には「大量破壊兵器」は定義が明確ではなく、分類が非常に難しいとのこと。

2006年に発表された包括的なレビューでは、アメリカ政府が少なくとも20もの異なる定義で大量破壊兵器という言葉を使っていることが(PDFファイル)示されました。大量破壊兵器という言葉はあいまいであり、生物学的・化学的あるいは核を使用したものでも「等しい脅威」に見せるとして、使用に同意しない専門家がいるほどです。

それでもKallenborn氏は、「AFADSが大量破壊兵器と分類されないことで、脅威と見なされない可能性がある」としてAFADSを大量破壊兵器と分類することを求めています。Kallenborn氏は、AFADSに「スケーラビリティの容易さ」と、「ターゲットとして軍人と市民を区別できない」という2つの危険性があると説いています。

◆スケーラビリティの容易さという潜在的危険性
AFADSは規模の拡大・縮小が容易なため、「大量破壊兵器」の定義に当てはまらないように簡単に調整することができます。またドローンは初歩的なものであれば3Dプリンターで作ったり、安価で購入したりが可能。このようにして手に入れたドローンは、適切なソフトウェアやハードウェアを使えばドローン同士が情報共有・意志決定する「群れ」に変えることができます。

実際にIntelは以下のような2018台のドローンの群れを作成しましたが、この群れが爆弾を抱えれば、大量の死者を生み出すことは想像に難くありません。


もちろん、ドローンの群れが実際にどれほどの害を生み出すのかは、状況によりけりです。軍は防衛用のカウンタードローンや、ドローン捕獲用のネットを準備するはず。一方でドローンの柔軟性を利用し化学兵器を仕込んだり、逆に対戦車兵器にドローンを仕込んだりも可能であり、これら状況によって死者数は左右されます。

実際にAFADSが大きな被害を生み出した例は2020年時点で報告されていません。近いものとしては、シリアがロシアの軍事基地に対してドローンを一斉発射した件が挙げられます。この時ロシア軍はドローンのうち6機のコントロールを奪い、7機を撃ち落としましたが、攻撃を受けた兵士2名が死亡しました。

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◆本質的な無差別性
Intelの例からも既にドローンの群れを高いレベルでコントロールすることが可能であることがわかりますが、一方でドローンの数が増えるにつれそれらを制御することは難しくなります。2017年には、アメリカ空軍のドローンオペレーターは、他の分野と比較してスタッフ不足と燃え尽き症候群の発生率が高いことが示されました

ドローンの標的は一般的に「負傷してない兵士」です。兵士かどうかは制服を着ていれば判別可能かもしれませんが、兵士が背中を向けていた場合は、負傷していてもわかりません。また、自律的なシステムにする場合、ドローン自体が武装/非武装、軍服/私服、敵/味方などを区別する必要があり、これらはAIによって実行されると考えられますが、近い将来に実現する可能性はまだないとのこと。

歴史を振り返ると、第二次世界対戦時に連合国軍によって行われた無差別爆撃であるドレスデン爆撃や、シリアの化学兵器使用ルワンダ虐殺など、多くの組織が軍の目的を遂行するために民間人を犠牲にするという決断をしています。ドローンが自律的に標的を定められないという欠点を抱えている以上、民間人を含んだ無差別攻撃に利用されることは十分に考えられます。

これらの将来的な危険性を回避するため、Kallenborn氏はアメリカ政府に対し「AFADSを大量破壊兵器と見なすべきであるという立場を正式に表明すること」を求めています。また、大量破壊兵器の撲滅に関わる政府機関・国際機関がAFADSを評価できるようにすること、そして困難であるAFADSの使用を確認する方法を見つけ出すことについても、Kallenborn氏は求めました。

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in ハードウェア, Posted by logq_fa

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