暗殺や脅迫を生み出した世界規模のハッキングを巡りWhatsAppがイスラエルのテクノロジー企業を提訴
by antonbe
「テロや犯罪と戦うために役立つ技術を提供している」というイスラエルのテクノロジー企業NSOグループを、Facebook傘下のWhatsAppが提訴しました。WhatsAppによると、2019年はじめ、NSOグループはWhatsAppのビデオ通話システムを通じて権利活動家や弁護士・ジャーナリスト・学術機関に対して2週間にわたって密かにサイバー攻撃を行っていたとのことです。
Will Cathcart - Why WhatsApp is pushing back on NSO Group hacking - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/opinions/2019/10/29/why-whatsapp-is-pushing-back-nso-group-hacking/
WhatsApp sues Israeli firm, accusing it of hacking activists' phones | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2019/oct/29/whatsapp-sues-israeli-firm-accusing-it-of-hacking-activists-phones
WhatsApp sues Israel's NSO for allegedly helping spies hack phones around the world - Reuters
https://www.reuters.com/article/us-facebook-cyber-whatsapp-nsogroup/whatsapp-sues-israels-nso-for-allegedly-helping-spies-hack-phones-around-the-world-idUSKBN1X82BE
2019年10月29日(火)にカリフォルニア州裁判所に提訴したWhatsAppの主張によると、NSOグループの販売する技術により、2019年4月末から5月中旬までの2週間で、20カ国・1400人以上のWhatsAppユーザーのスマートフォンをターゲットにした攻撃が行われたとのこと。ターゲットになった人物には人権活動家や弁護士、ジャーナリスト、著名な宗教家、人道的活動組織の重役などが含まれました。これにより、脅迫や殺人の標的になった人物も存在するとWhatsAppは考えています。
by arivera
WhatsAppは裁判所に対し、NSOグループがWhatsAppおよびFacebookのシステムにアクセスすることを永久に差し止めることを求めています。また、WhatsAppとの契約を破りFacebookのシステムを悪用したNSOグループの行為はアメリカ連邦法およびカリフォルニア州法で定めるコンピューター犯罪にあたるともWhatsAppは主張しています。
WhatsApp広報は「暗号化されたメッセージアプリを提供する企業が、ユーザーに対してサイバー攻撃を行った民間企業に対して法的アクションを取ったのは、これが初めてのことです」と述べています。加えて、「世界のどこにいようとも人々の権利や自由が守られるためには、このようなサイバー兵器が攻撃を行っていないかしっかりと法的に監視することが必要です」とも主張しました。
これとは別に、NSOグループに対しては、2018年にサウジアラビアのジャーナリストであるジャマル・カショギ氏がサウジアラビア総領事館内で殺害された一件との関連も指摘されています。カナダのデジタル著作権グループCitizen Labはカショギ氏に近しい人のiPhoneがNSOのスパイウェアに感染したことを報告。後にカショギ氏の友人が主張したことには、このスパイウェアにより、カショギ氏がサウジアラビアのロイヤルファミリー対して行った個人的な批判が流出したことが、カショギ氏殺害の大きな一因となったとのこと。
カショギ氏「息ができない」、米CNNが録音内容報道 のこぎりの音も 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3201287
Citizen Labは2018年に、WhatsAppの脆弱性によりiPhone・Androidの両方に対してアタッカーが監視ソフトをインストールできることを発表しました。15億人のWhatsAppユーザーのうち何人が感染したのかは不明ですが、その後、WhatsAppはCitizen Labと協力してNSOグループの技術の特定に至りました。
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