Qualcommがスマートフォン向けSoCの供給不足に陥っていると報じられる

AMDのCPU・GPUの供給が不足したり、NVIDIAがGPUの供給不足解消のために旧型GPUを再生産したりと、半導体の需要に対して供給が追いつかない状況が続いています。そんな中、半導体大手Qualcommが生産するスマートフォン向けSoCの供給も不足しており、スマートフォンの生産に影響が出ていることが報じられています。

Qualcomm struggles to meet chip demand as shortage spreads to phones: sources | Reuters
https://www.reuters.com/article/idUSKBN2B32OO

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行による物流の停滞や人手不足、PC需要の増加の影響を受けて、世界中で半導体の供給が不足しています。さらに、2020年11月に登場した「PlayStation 5」と「Xbox Series X」の人気による半導体製造ラインの圧迫や、台湾の水不足といった要因が重なり、世界最大の半導体ファウンドリ「TSMC」では半導体の供給不足が深刻化。NVIDIAでは半導体の供給不足への対策として、生産が容易な旧型GPUの再生産を行う事態となっています。

NVIDIAがGPUの供給不足解消のために「GeForce RTX 2060」や「GeForce GTX 1050 Ti」といった旧型GPUの再生産を計画中 - GIGAZINE

そんな世界的な半導体の供給不足が続く中、ロイターは各スマートフォンメーカーに対して取材を実施。その結果、Qualcommの生産するスマートフォン向けSoCの供給不足により、スマートフォンの生産に影響が出ていることが明らかになりました。

Qualcommは、2020年12月に5Gモデムを内蔵したスマートフォン向けハイエンドSoC「Snapdragon 888」を発表しています。しかし、Samsungの関係者はロイターに対して「Snapdragon 888の供給が不足しています」とコメント。加えて、他のSamsung関係者が「Qualcommによるチップの供給不足によって、ミドルエンドおよびローエンドスマートフォンの生産に影響が出ています」と述べたことから、「Qualcommは高い収益を期待できるSnapdragon 888の生産に集中するために、ローエンドチップの生産ラインを犠牲にしている」とロイターは推測しています。

また、「いくつかの主要なスマートフォンブランドの生産を担当する企業」の上級幹部は、ロイターに対して「私たちはQualcommが生産するさまざまなコンポーネントの不足に直面しています。そのため、2021年のスマートフォン出荷量を削減する必要があります」と語ったとのこと。さらにXiaomiのLu Weibing副社長はSNS「Weibo」に「チップの『不足』ではなく『深刻な不足』に直面している」と投稿し、供給不足がひっ迫していることを明かしています。

ロイターはQualcommによるチップの供給不足には、アメリカ政府によるHuaweiへの制裁が影響していると指摘。アメリカ政府の制裁によって各スマートフォンメーカーがHuawei製のチップの採用を見送り、Qualcomm製のチップを採用する事例が増加したことで、Qualcommの供給を上回る需要が発生したとロイターは主張しています。

さらに、「2021年2月にテキサス州で発生した大規模な停電を理由に、Qualcommに半導体を供給するSamsungの半導体ファウンドリが2021年2月16日から稼働を停止しました。このことが、Qualcommの供給不足に影響しているかもしれません」とロイターは述べています。