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世界的な半導体不足が自動車メーカーに大きな打撃を与えている


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは全世界の経済に深刻な打撃を与えましたが、ワクチン接種の進展などに伴って次第に経済は回復しつつあります。ところが、多くの産業分野で必要不可欠な半導体の不足が製造のボトルネックを引き起こしており、特に自動車メーカーが大きな影響を受けているとのことです。

EXPLAINER: Starving for more chips in a tech-hungry world
https://techxplore.com/news/2021-04-starving-chips-tech-hungry-world.html

テクノロジー系メディアのTech Xploreによると、2020年から続く世界的な半導体不足はさまざまな分野に影響を及ぼしているとのこと。たとえば、COVID-19のパンデミックによってリモートワークや遠隔教育が導入されてノートPCの需要が高まりましたが、肝心の半導体が不足しているため人々がノートPCを購入することが困難になりました。また、PlayStation 5やiPhone 12といった高度なチップを搭載するデバイスや、高機能な家電製品の供給にも問題が生じました。


半導体不足の要因にはパンデミックによる工場の操業停止世界的なコンテナ不足による輸送網の混乱、中国とアメリカの対立などが挙げられます。テクノロジー企業・Baird technologyのアナリストであるTed Mortonson氏は、過去30年間にこれほど深刻な半導体不足は見たことがなく、簡単には回復しないだろうと予想しています。

Tech Xploreは一連の半導体不足で大きな影響を受けた分野として、自動車産業を挙げています。高度な電子制御機器が搭載される自動車が増えるにつれて半導体と自動車産業の関わりは増加しており、自動車の製造コストに占める半導体の割合も年々大きくなっているとのこと。調査会社のIHS Markitによると、2000年に製造された自動車に占める半導体のコストは18%でしたが、2020年には40%に到達しているそうです。

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自動車に使用される半導体はコンピューターやゲーム機に搭載されるものとは違って低価格であり、直接競合するものではありません。ところが、低価格帯の半導体を製造するメーカーは自動車よりも収益が高い家電製品に搭載される半導体に焦点を当て、工場のラインを再調整しているとのこと。

半導体が入手できない自動車メーカーは従業員のシフトを調整し、工場を一時的に閉鎖するなどの措置を執りました。中でもフォードゼネラルモーターズ(GM)フィアット・クライスラー(現ステランティス)フォルクスワーゲンホンダなどが大きな影響を受けたとTech Xploreは述べています。

一方、トヨタは2011年の東日本大震災でサプライチェーンを見直したこともあって比較的安定した生産を続けていました。ところが、2021年3月に発生した半導体大手・ルネサスエレクトロニクスの工場火災により、2021年4~6月期の減産は避けられないとみられています。

半導体不足のあおりを受けた自動車メーカーは影響を軽減するため、確保できた半導体を需要の高いピックアップトラックやSUVに優先的に割り当てているとのこと。また、フォードやGM、ステランティスなどはいくつかの半導体なしで車体だけ製造し、後でチップを組み込む製造方式に切り替えているそうです。IHS Markitの推定では、半導体不足によって2021年1月~3月の北米の自動車生産台数が10万台減少し、車両の在庫も急速に減っているとのこと。

半導体メーカーが自動車産業の需要に追いつくのは、早くても2021年7月頃とみられています。GMは半導体不足によって生産と販売に損失が生じ、最大20億ドル(約2200億円)の税引き前利益を失うと予想。自動車産業全体では2021年の前半だけで600億ドル(約6兆6000億円)もの売上を失う可能性があると推定されています。


世界的な半導体不足が続く中、半導体メーカーも事態の解消に向けて動いています。台湾の半導体メーカーであるTSMCは工場の能力を増強するため、今後3年間で1000億ドル(約11兆1000億円)の投資を行うと発表。TSMCはロイターへの声明で、「5Gと高性能コンピューティングの数年間にわたる巨大なトレンドが当社の半導体技術に対する強い需要を刺激すると予想され、より高い成長期に突入しています」「さらに、COVID-19のパンデミックはあらゆる面でデジタル化を加速させます」とコメント。

TSMC to invest $100 billion over 3 years to meet chip demand | Reuters
https://www.reuters.com/article/us-tsmc-investment-plan-idUSKBN2BO3ZJ

また、Intelはアメリカ・アリゾナ州にある2つの製造拠点に200億ドル(約2兆2000億円)規模の投資を行い、自社製品の半導体だけでなくパートナー企業のチップ製造にも注力していく方針を表明しました。

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なお、半導体メーカーが生産能力の増強を目指しているとはいえ、すぐに半導体の生産量が急増するわけではありません。そのため、Tech Xploreは今後もしばらくは半導体の需要が供給を上回る状態が続くだろうと述べています。

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in ハードウェア,   乗り物, Posted by log1h_ik

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