スパイダーマンのトム・ホランド主演で人気SF小説の実写映画化三部作の第1弾「カオス・ウォーキング」予告編が公開中

イギリスの小説家であるパトリック・ネス著の人気SFシリーズ「混沌の叫び」実写化映画3部作の第1作「カオス・ウォーキング」の予告編が公開されています。主演は「スパイダーマン：ホームカミング」で主人公のピーター・パーカー／スパイダーマンを演じたトム・ホランドと、スター・ウォーズの続三部作でレイを演じたデイジー・リドリーが務めます。

Chaos Walking (2021 Movie) Official Trailer – Daisy Ridley, Tom Holland, Nick Jonas - YouTube


猛スピードで飛ぶ宇宙船が……

森の中に墜落。

その現場に居合わせたトッド(演：トム・ホランド)

トッドは森の中で、ヴァイオラと名乗る女性(演：デイジー・リドリー)に遭遇します。

トッドが女性に向けて手を向けると……

ヴァイオラの思考がトッドの脳に流れ込んできました。

トッドが住んでいる星では「ノイズ」と呼ばれる謎の現象により、人は他人の心の声が聞こえるようになっています。

トッドの暮らすプレンティスタウンの首長であるデヴィッド・プレンティス(演：マッツ・ミケルセン)も墜落現場を訪れ……

ヴァイオラと出会います。男性ばかりが住んでいるプレンティスタウンを見て「女性はどこにいるの？」というヴァイオラの問いかけに対し……

「みんな死んだ」と答えるデヴィッド

人の思考が流れ込んでくる「ノイズ」は、ヴァイオラには影響がない模様。「何を考えてるか聞こえるなんて変だ」と指摘するヴァイオラに対して……

「人の考えがわからないなんてそっちの方が変だ」と答えるトッド。

やがて、「その娘を守りたいなら、今すぐここを離れろ」と言われ、トッドはヴァイオラを連れて逃げ出します。そんなトッドとヴァイオラを、プレティスたちが執拗に追いかけます。

ボートを漕いで急流を進もうとしますが……

転覆してしまいます。

銃を突きつけるプレティス。

そして川の中でトッドが戦うのは……

人間ではない何か

「君をきっと守るよ」と、ヴァイオラの手を取りながらトッドはつぶやきます。

そしてプレンティスタウンの空を覆いつくすほど巨大な宇宙船。トッドとヴァイオラの身にいったい何が襲いかかるのでしょうか？

「カオス・ウォーキング」は2021年1月22日にアメリカで公開されます。

なお、カオス・ウォーキングの原作となった「心のナイフ 上(混沌の叫び１)」のレビューは、以下から読むことができます。

心のナイフ 上 （混沌の叫び１） (混沌の叫び 1) | パトリック・ネス, 金原 瑞人, 樋渡 正人 |本 | 通販 | Amazon

ノイズにあふれた世界で、少年はどうすれば成長できるのか

SF仕立ての未来ディストピアYA小説と言えるかと思います。しかも三部作の第一部です。
これは上下巻あわせてのレビューとなります。

宇宙に出て行った人類ですが、ある星（〈新世界〉）の大気圏にはノイズ菌が漂っていました。入植者はそれに次々感染します。菌を持ったものは、すべて「ノイズ」を発し、それが他人に聞こえるようになってしまいます。自分の思念が、言葉でも、映像のかたちでも、ダダ洩れ状態になってしまうのです。動物の思念もそこにまじってきます。（いわば〈サトラレ〉状態、人の思念も個別的に聞こえてきますし、人の多いところでは空間は妄想に満ちあふれています）。

これは、少年が大人になることについての、Ｐ・プルマンの『ライラの冒険』を思わせる「成長」の物語でもあります。「大人の堕落」「教会の圧制(言論思想統制)」「殺戮や戦いは大人のしるしなのか」などなど、かなり似通ったテーマを持っています。
しかしプルマンの「ダスト」よりも、ここでの「ノイズ」はわかりやすく、強いイメージ喚起力を持ち、説得力があります。男性ばかりになってしまったプレンティスタウンのノイズは、たとえば裸の女性やエロティックな妄想にあふれていて、トッドを圧迫します。恨み、欲望、罪悪感、病的な不安。トッドはそれを大人の世界と同一視しますが、それが現実ではなく、「願望・妄想」であることも知っています。

この「ノイズ」は、サイバー空間にたくさんの人の声があふれている現代を象徴しているようでもあります。
自分の思念がまき散らされてしまって、みんなに感知されるという世界で、どうやって人はお互い折り合いをつけていくのか。そして他者を洗脳・統制しようとするのか。これはたいそうリアルな問題提起です。