海賊版サイトがブロックを回避している「モグラたたき戦略」とは？

by Sheep"R"Us

海賊版サイトを排除するための主要な取り組みとして、検索結果などから人気の高い海賊版サイトのドメインをブロックすることによるアクセス妨害が実施されています。一部の海賊版サイトは、このブロックに対抗してドメインを頻繁に変更し、それに応じてブロックする側も多様なドメインに対応するという「モグラたたき状態」になっている現状を、主に著作権問題などを扱うニュースメディアのTorrentFreakが解説しています。

Torrent Site Switched Domains 39 Times This Year to Evade ISP Blocks * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/torrent-site-switched-domains-39-times-this-year-to-evade-isp-blocks-231217/

海賊版サイトのドメインをブロックすることは、海賊版対策として即時的で効果的な方法となっています。Googleは、直接「削除依頼」が行われたサイトや、ブロックされたドメインを検索結果に表示しないため、ユーザーはドメインがブロックされた海賊版サイトにアクセスすることが難しくなります。実際に、Googleは2022年だけで約6億8000万件にものぼる「著作権侵害の疑いがあるコンテンツ」を検索結果から排除したことを報告しました。

Googleが2022年に著作権侵害でブロックしたURLは6億8000万件以上、半数近くが一度も表示されることなくブロックされている - GIGAZINE

しかし、ドメインをブロックしてもサイト自体が閉鎖されるわけではないため、熱心なユーザーがブロックを回避してアクセスするケースもあります。また、海賊版サイト側がブロックに対抗する場合もあり、例えば世界最大級の海賊版ライブラリ「Z-Library」はドメイン差し押さえに対して、ユーザーに固有のドメインを割り当てて規制を回避したり、ドメインが差し押さえられた後でもユーザーが新しいドメインにすぐアクセスできる「ブラウザ拡張機能」をリリースしたりと、さまざまな対抗策を講じていました。

世界最大級の海賊版ライブラリ「Z-Library」がドメイン差し押さえに備えて「サイトにアクセスするためのブラウザ拡張機能」をリリース - GIGAZINE

毎月何百万人ものユーザーがアクセスするスペインのトレントサイト「DonTorrent」は、権利者からの苦情を受けて、繰り返しプロバイダからブロックされています。しかし、TorrentFreakによると、DonTorrentは「ブロックに対する反撃に全力を尽くしている」ため、ブロックによるユーザー数の減少はほとんどないそうです。

DonTorrentは判明しているだけで2023年に入り39回ドメイン名を変更し、ドメインのブロックを回避しています。通常、ドメインが変更されると従来のユーザーが継続してアクセスすることは難しくなりますが、暗号化されたメッセージサービスであるTelegramのDonTorrent公式アカウントには約8万人の登録者がおり、そこでドメイン名の最新情報を共有することでトラフィックを維持しています。その他、暗号化によりブロックを解除するヒントをユーザーに共有したり、ダークウェブの閲覧などにしばしば用いられるTorネットワークでアクセス可能にしたりと、DonTorrentはブロックへの対抗策にかなり積極的に動いています。

プロバイダはDonTorrentの新しいドメインが判明するたびにブロックの対応をしており、次々に現れるドメインにプロバイダはひとつひとつ対応する必要があります。プロバイダがサイトをブロックしても、すぐに次のドメインが用意されてサイトは継続するという「その場しのぎ」で対処するしかない状態から、TorrentFreakは「モグラたたきゲームのようなドメイン回避戦略」と表現しています。

DonTorrentの広報担当は、「季節によってトラフィックの変動はありますが、それらはブロッキングとは関係なく、基本的にDonTorrentのトラフィックは安定しています。そのため、私たちの努力が功を奏したと考えています。予備としてドメインを用意していると、そちらも強力に監視されているケースがあるため、ドメインがブロックされたらその日のうちに新しいものを登録するという形で対応しています」と語っています。