Amazonによるロボット掃除機「ルンバ」開発元のiRobot買収が独占禁止法違反の可能性があるとして欧州委員会が調査開始
2022年8月、Amazonがロボット掃除機「ルンバ」の開発元として知られるiRobotを約17億ドル(2400億円)で買収すると発表しました。この買収について、EUの政策執行機関である欧州委員会が独占禁止法違反の疑いがあるとして本格的な調査に乗り出したことが判明しました。
Mergers: Commission opens in-depth investigation
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_3702
Amazon's iRobot deal in EU antitrust crosshairs | Reuters
https://www.reuters.com/markets/deals/amazons-irobot-deal-eu-antitrust-crosshairs-2023-07-06/
Amazon’s iRobot Roomba acquisition under formal EU investigation - The Verge
https://www.theverge.com/2023/7/6/23628636/eu-regulators-amazon-irobot-roomba-acquisition-investigation
AmazonによるiRobot買収が発表された直後から、一部の有識者はこの買収によってAmazonが独占的な支配力を手に入れることになると警告していました。Amazonは大手ECサイトやクラウドサービスを展開しているだけでなく、小売業者としてスマートホームブランドのRingや家庭用見守りロボットのAstro、スマートアシスタントのEchoといった消費者向けデバイスの販売も手がけています。この分野においてiRobotはAmazonの競合他社といえる立場であり、買収によって市場支配力が強化される可能性があるというわけです。
また、ルンバをはじめとするiRobotの製品はユーザーについてのさまざまな情報を収集しており、ビッグテックのAmazonがこれらのデータを手に入れることはビジネス上の利点があるとのこと。そのため、規制当局はこの買収が独占禁止法違反に当たるかどうか注視していました。
Amazonによるルンバ開発元の買収は「最も危険で脅迫的な買収になる可能性がある」と有識者が警告 - GIGAZINE
2023年4月には、日本の公正取引委員会に相当するイギリスの競争・市場庁(CMA)がAmazonによるiRobot買収について調査を開始しましたが、6月には「AmazonによるiRobot買収は競争上の懸念につながらない」との判断を下し、買収に認可を与えました。
英競争当局、アマゾンのアイロボット買収認可 「ルンバ」製造 | ロイター
https://jp.reuters.com/article/amazon-com-irobot-antitrust-britain-idJPKBN2Y20NI
しかし現地時間の7月6日、欧州委員会はEU合併規則(EUMR)の下でAmazonによるiRobot買収を評価するため、詳細な調査を開始すると発表しました。欧州委員会は声明で、「私たちはこの取引によって、Amazonがロボット掃除機市場における競争を制限し、オンラインマーケットプレイスプロバイダーとしての地位を強化することを懸念しています」と述べています。
欧州委員会は、Amazonは小売業者が製品を宣伝・販売するオンラインマーケットプレイスを提供すると同時に、自社製品の小売業者としても活動していると指摘。予備調査では、iRobot買収によってAmazonがロボット掃除機の製造と供給における競争を制限し、オンラインマーケットプレイスやその他のデータ関連市場においても、独占的な地位を強化する可能性があるとわかったそうです。
Amazonの広報担当者は声明で、「私たちは欧州委員会との協力を継続し、現段階では質問と特定された懸念に対処することに焦点を当てています」「他の掃除機サプライヤーとの激しい競争に直面しているiRobotは、実用的かつ独創的な製品を提供しています。AmazonはiRobotのような企業に対し、イノベーションを加速する資源を提供すると同時に、重要な機能へ投資しつつ消費者の価格を下げることができると信じています」と述べました。
今回の発表は、あくまで欧州委員会が本格的な調査を開始するというものであり、最終的にAmazonのiRobot買収が承認される可能性も残されています。買収を承認するか阻止するかは、2023年11月15日までに決定されるとのことです。
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