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スティーブ・ジョブズが「iPhone nano」に取り組んでいたことを示すメールが裁判で公開される


ゲーム「フォートナイト」の開発元であるEpic Gamesが、Apple端末向けの公式アプリ配信ストアであるApp Storeが反トラスト法(独占禁止法)に抵触するとして、Appleに対して訴訟を起こしています。その裁判に提出された資料により、Apple設立者のスティーブ・ジョブズ氏が、かつて小型iPhone「iPhone nano」の構想を練っていたことが明らかになりました。

The best emails from the Apple vs. Epic trial
https://www.theverge.com/22611236/epic-v-apple-emails-project-liberty-app-store-schiller-sweeney-cook-jobs

Steve Jobs email confirms Apple was working on an ‘iPhone nano’ - The Verge
https://www.theverge.com/2021/8/19/22631541/steve-jobs-email-apple-iphone-nano-epic-lawsuit

2010年10月にジョブズ氏によって発信された電子メールが以下。2011年の販売戦略や当時の最新モデル「iPhone 4」の構想についての記述の終わりに、「iPhone nano plan」という記述が確認できます。コスト目標と、ショーモデルという記述、最後に「Jony」という署名もありますが、海外メディアのThe Vergeはこの署名はAppleの元最高デザイン責任者であるジョナサン・アイブ氏のものだと推測しています。


3.5インチのiPhone 4より小型のモデルが登場するかもしれないという情報は当時業界をにぎわせましたが、結局リリースされることはありませんでした。Appleは「nano」の名を冠し、2005年に初めて発売したオーディオプレイヤー「iPod nano」の販売を2017年に終了したことで、「nano」ブランドからは完全に手を引いたようだとThe Vergeは述べています。

The Vergeは、この他にも今回の裁判で明らかになった特筆すべき情報をまとめています。

◆01.NetflixはAppleと独自の取り決めを結んでいた
Appleが動画配信サービスのNetflixと特別な契約を結び、NetflixのiOSアプリ内で提供されるサブスクリプションに手数料を通常の半額、15%しか課していなかったことが今回初めて明らかになりました。

以前にも、Appleのティム・クックCEOは「すべてのアプリ開発者に対して平等にルールを適用している」と発言したにもかかわらずAmazonの手数料を半額にする密約を結んでいたことで問題視されていました。

AppleはAmazonとだけ「手数料を半額にする密約」を交わしていたことが判明 - GIGAZINE


◆02.手数料を減額する取り決めを行っているのはAppleだけではない
Microsoft Storeは上位18社のアプリパートナーのうち、13社と手数料減額の取引を行いました。

◆03.Microsoftが手数料減額計画を破棄した可能性
The Vergeによると、Microsoft Storeが「PCゲームの販売手数料を30%から12%に引き下げる」とする計画を破棄した可能性があるとのこと。

◆04.Appleの幹部がApp Storeの手数料を下げることを計画していた
Appleのマーケティング担当上級ヴァイスプレジデントであるフィリップ・シラー氏は、2011年7月に「30%の手数料は永遠に続くだろうか?」と述べ、年間10億ドル(約1100億円)の収益を維持できるならば手数料を25%、あるいは20%に減額する方針を提案していました。ちなみに、The Vergeによると、Appleは2020年に推定640億ドル(約7兆円)の収益を上げたとのこと。

◆05.アプリのサイドローディングについて早い段階で議論されていた
2011年、シラー氏はジョブズ氏に対し、App Store以外からのアプリのダウンロードを疑問視するメールを送信してます。


◆06.アプリのサイドロード時の例文
ジョブズ氏が「App StoreがiPhoneのアプリを配布する唯一の方法である」と発表してから2カ月後の2008年5月、Appleの前iOS担当上級ヴァイスプレジデントであるスコット・フォーストール氏がジョブズ氏に対し、アプリをサイドロードする際の警告文をどうすべきか尋ねていました。フォーストール氏が提示した例文は「セガのアプリ『モンキーボール』はApp Storeからのものではありません。開きますか?」と「セガのアプリ『モンキーボール』を開いてもよろしいですか?」というもの。ジョブズ氏はよりシンプルな後者を選びました。


◆07.iPhone SDKの機密保持契約
2008年8月、開発者に不評だったiPhone SDKの秘密保持契約を正当化するよう、ジョブズ氏はシラー氏に呼びかけていました。しかし、この2カ月後、Appleは秘密保持契約を撤廃しました。

◆08.シラー氏はAmazonアプリストアを大きな脅威だと見なしていた
2011年3月、シラー氏は社内向けメールで、Amazonアプリストアの脅威度を「中」から「非常に高い」に修正するよう指示しました。

◆09.2016年はApp StoreがiPadやMacよりも成長した年だった
内部プレゼンテーション資料から、2016年のApp Storeの売上がiPadやMacを上回っていたことが分かりました。


◆10. App Store Small Business Programの当初の計画
年間アプリ収益が100万ドル(約1億1000万円)を下回る開発者へのアプリ手数料を半額にするプログラム「App Store Small Business Program」は、2008年6月に計画がスタートした当初は「減額」ではなく、「半額を検索広告費に充てる」というものでした。

◆11.AppleはGoogle Latitudeを脅威と見なしていた
最初のAndroid端末が発売する前の段階で、Appleは友だち・家族間で位置情報を共有できるGoogleマップの機能「Google Latitude」をiPhoneに取り入れようとしていました。しかし、ジョブズ氏は2008年6月、連絡先のGoogleとの共有についてメールで懸念を表明していました。

◆12.AppleはPayPalを脅威と見なしていた
決済サービス「PayPal」がiOSアプリの開発者に食指を動かしていた件に対し、2009年11月、シラー氏は「App Storeが唯一の決済方法であり、PayPalを使用した開発者はAppleとの契約に違反したことになるだろう」と述べていました。

◆13.2010年、ジョブズ氏は顧客の囲い込みが正式な企業戦略になると宣言
2010年10月、次年度の企業戦略プレゼンテーションにおいて、ジョブズ氏は2011年を「クラウドの年」と呼び、「全ての製品を結び付けることで、顧客を我々のエコシステムにさらに囲い込む」という信条を作成していました。

◆14.App Storeのアンチステアリングルールの成文化
App Storeが「App Storeで提供されるサブスクリプションサービスは料金が30%減額される」という取り決めを発表する4日前の2011年2月10日、Appleはこのような「他のサービスにユーザーを流れさせないため、企業が他のサービスでインセンティブを提供することを禁止する」という「アンチステアリングルール」を成文化していました。

◆15.AppleはMicrosoftからの提案を拒否
Microsoftが「Microsoft Office」をiPhoneに導入しようとした際、「アプリ内購入を許可する代わりに収益をAppleとMicrosoftで共有する」というアイデアを提案しましたが、シラー氏は2012年4月、このアイデアについて社内向けに「そのビジネスモデルに同意する可能性はないと思う」と発言。2013年6月、Microsoft Officeは「アプリ内購入はApp Storeを介した場合のみ可」として登場しました。

この他にもThe Vergeはいくつかの情報をピックアップしています。

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in モバイル,   ネットサービス, Posted by log1p_kr

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