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Appleが「UberやLyftのサブスクリプションから手数料を徴収しようとしていた」ことを示す社内メールが話題に


AppleはiOS向けアプリストアであるApp Storeにおいて、アプリ内課金(In App Purchase/IAP)によるゲームアイテムやデジタルサービスの購入に最大30%の手数料を課しています。「Apple税」とも呼ばれて批判されているこのシステムでは、配車サービスやデリバリーサービスなど「物理的な商品やサービス」の購入は手数料の対象外となっていますが、Appleが2018年頃に「物理的サービスを提供するUberやLyftの上前をはねる計画」を練っていたことを示す社内メールがTwitterに投稿され、話題になっています。

Apple execs: Let's take a 30% cut of Uber and Lyft's membership programs

June 26, 2018 pic.twitter.com/LKaW476h5Q

— Internal Tech Emails (@TechEmails)


Apple execs: Let's take a 30% cut of Uber and Lyft's membership programs (2018) | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=29913693

公開情報から収集したテクノロジー企業の社内メールを投稿するTwitterアカウントのInternal Tech Emails(@TechEmails)が2022年1月13日に、「Apple幹部が配車サービスやデリバリーサービスから売上手数料を徴収するため、アプリ内課金でサブスクリプションサービスを展開させる計画を練っていた」ことを示す社内メールを投稿しました。今回投稿された一連の社内メールは、アプリ内課金をめぐるApple対Epic Gamesの法廷闘争に関する裁判文書に含まれており、海外メディアのThe VergeがPDFとして公開しているものです。

The best emails from the Apple vs. Epic trial
https://www.theverge.com/c/22611236/epic-v-apple-emails-project-liberty-app-store-schiller-sweeney-cook-jobs


メールの内容は、当時App Storeのビジネスリーダーを務めていたシェリー・チャン氏がApple幹部に対し、「メンバーシップのサブスクリプションが新たな収益源になる」と伝えるものです。公開されたメールの日付は2018年6月となっており、送信先にはApple幹部のエディ・キュー氏、App Storeのヴァイス・プレジデントを務めるマット・フィッシャー氏、現Appleフェローのフィル・シラー氏といった名前が並んでいます。

UberやLyftが展開する配車サービスは「物理的な商品やサービス」を提供するため、iOSのアプリを使って配車を依頼したとしても、アプリ内課金を通じてAppleが手数料を徴収することはできません。しかし、「サービスのサブスクリプションサービス」を提供することにより、これらのサービスからも手数料を徴収できるというわけです。チャン氏はメールの中で、UberやLyftが近いうちにサブスクリプションサービスの導入を検討しているとの情報も報告しています。


チャン氏は事前にこのアイデアをシラー氏と共有していたと記しているほか、フィッシャー氏やキュー氏もメールの返信で好意的なコメントを寄せています。その後、チャン氏らは2018年7月にUberの担当者と会議を行い、「サブスクリプションサービスの購入はアプリ内課金を利用する必要があり、その際はAppleに30%の手数料を支払うこと」を伝えたと報告しています。

ところが2018年10月30日、UberはAppleに対する事前の相談なしに、料金変動をなくすサブスクリプションサービス「Ride Pass」を発表。これはサブスクリプションの購入にアプリ内課金を利用しないシステムであり、AppleはまんまとUberに出し抜かれてしまった形です。Uberの発表を報告するAppleの社内メールによると、Uberの担当者は「これは2017年の時点で決まっていた」と主張したとのこと。なお、最初にメールを送ったチャン氏はUberの発表時にはAppleを退職済みで、2018年10月時点ではYouTubeに転職していた模様。

Uber、月額約1700円で低料金乗車を保証する新サービス--米5都市で - CNET Japan
https://japan.cnet.com/article/35127871/

その後はApple社内でどのようなやり取りがあったのか不明ですが、2018年12月には「Lyftに対して『アプリ内課金はオプションである』と伝えました」とのメールが送信され、これに対してフィッシャー氏が「残念ながらアプリ内課金が『オプション』であることは、誰もアプリ内課金を使わないことを意味します」と返答しています。

なお、シラー氏はEpic Gamesとの訴訟において「Appleは配車サービスや宅配サービスといった物理的な商品やサービスから手数料を取っていない」と主張していましたが、The Vergeは一連のメールから、過去には物理的な商品やサービスを提供するアプリからの手数料徴収を試みていたことがわかると指摘しています。


海外掲示板のHacker Newsでは今回のTwitter投稿によって議論が活発化し、「App Storeの手数料30%は高すぎる」「App Storeの利点を考慮すれば、最初のアプリ購入に30%の手数料を課すのは正当化できるが、継続的な課金に30%を課すのは無理」「App Storeに支払い情報を握られ、購入や課金のハードルが下がることが問題」といったコメントが投稿されています。

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in モバイル,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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