「インターネット検閲」は自由なはずの国にまで広がっているとの指摘、日本ではどうなのか?
人気の検閲回避アプリが突如削除されたり、政府が国内ネットワークをインターネットから切り離すテストを敢行したりと、中国やロシアではインターネットの自由が厳しく制限されているのは有名です。しかし、アメリカ・ミシガン大学が開発した独自ツールによる調査結果から、これまで「自由」だとされてきた国々にも、検閲が広がっていることが判明しました。
Censored Planet: An Internet-wide, Longitudinal Censorship Observatory - 3372297.3417883
(PDFファイル)https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3372297.3417883
‘Extremely aggressive’ internet censorship spreads in the world’s democracies | University of Michigan News
https://news.umich.edu/extremely-aggressive-internet-censorship-spreads-in-the-worlds-democracies/
民主主義と人権に関する国際NGOのフリーダム・ハウスが、2020年10月に発表したレポートにより、「インターネットの自由度」が世界的に低下しつつあることが明らかとなりました。検閲が世界的に強まっている原因として、フリーダム・ハウスは「パンデミックに乗じた規制強化」を挙げています。
「インターネットの自由度」が世界的に低下、パンデミックに乗じてインターネットの監視を強化する政府も - GIGAZINE
こうした研究に続き、ミシガン大学でエンジニアリングを研究しているRamakrishnan Sundara Raman氏らの研究チームは、独自開発の検閲追跡システムである「Censored Planet」で、2018年~2020年における検閲の増減を分析する研究を実施しました。
その結果、Censored Planetが対象としてきた221カ国のうち103カ国で検閲が増加傾向にあることが判明。検閲が増えた国々の中には、ノルウェー、日本、イタリア、インド、イスラエル、ポーランドをはじめとする、フリーダム・ハウスの調査で「自由度が最も高い国々」とされた地域が含まれていたとのことです。
以下は、Censored Planetによる調査結果をインタラクティブな地図にまとめたものです。右下のFullscreenボタンで全画面表示にできるほか、このリンクから直接Sketchfabでの公開ページにアクセスして閲覧することも可能です。
Censored Planetの調査で検閲の増加率が断トツの1位だったのはポルトガルでした。一方、ポルトガルはフリーダム・ハウスの評価は100ポイント中96ポイントと、極めて自由度が高いグループとして位置づけられています。
2位は、カリブ諸島にあるセントクリストファー・ネービスで、フリーダム・ハウスの評価は89ポイントです。
3位のデンマークは、フリーダム・ハウスの評価は97ポイントで、世界ランキングでも第8位と世界有数の「インターネットの自由度が高い国」でした。
なお、フリーダム・ハウスからはポルトガルと並ぶ96ポイントの評価を受けた日本は、Censored Planetのランキングでは選外でした。しかし、研究チームはレポートの中で「2019年6月に大阪でG20大阪サミットが開催された際に、日本ではワシントン・ポストやウォールストリート・ジャーナルのようなニュースサイトが積極的にブロックされました」と報告しています。
Censored Planetの調査結果についてRaman氏は、「我々の研究から見えてきたのは、どんな国でも完全に自由というわけではないということです。多くの国では、児童ポルノや海賊版コンテンツなど、明らかに悪いものをインターネットサービスプロバイダ(ISP)にブロックさせる法律が制定されています。しかし、いったん何かをブロックする下地が整ってしまうと、政府はどんなウェブサイトでもブロックできるようになり、そのプロセスは非常に不透明です」とコメントしました。
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