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「インターネットの自由度」が世界的に低下、パンデミックに乗じてインターネットの監視を強化する政府も


新型コロナウイルスのパンデミックにより、各国ではロックダウンや感染者と接触した人の追跡など、さまざまな対策が取られました。そんな中、民主主義と人権に関する国際NGO団体のフリーダム・ハウスが、「世界65カ国を対象にした調査によって世界的にインターネットの自由度が低下していることが判明しただけでなく、パンデミックに乗じてインターネットの監視が強化される危険がある」とのレポートを発表しました。

The Pandemic's Digital Shadow | Freedom House
https://freedomhouse.org/report/freedom-net/2020/pandemics-digital-shadow


Report Tracks How Governments Fighting COVID Are Increasing Surveillance | Voice of America - English
https://www.voanews.com/covid-19-pandemic/report-tracks-how-governments-fighting-covid-are-increasing-surveillance

フリーダム・ハウスは2019年6月から2020年5月にかけて、世界のインターネットユーザーのうち87%を占める65カ国で、インターネットの自由度についての調査を実施しました。インターネットの自由度は、「アクセスの妨害」「コンテンツの制限」「ユーザー権利の侵害」などの項目を基に100点満点で評価され、70人以上のアナリストが分析に携わったとのこと。


調査の結果、世界中の「インターネットの自由度」は10年連続で低下しており、調査期間中にインターネットの自由度が低下した国は26カ国に上ったと報告しています。特にインターネットの自由度が大幅に低下した国としてはミャンマーとキルギスタンが挙げられており、いずれも前回の調査から5ポイント低下しました。

ミャンマーでは2019年6月以降、政府の命令によってラカイン州チン州に住む人々がインターネットに接続できない状態が続いており、少数民族にサービスを提供するいくつかの報道機関へのアクセスもブロックされているとのこと。また、キルギスタンでは政府がアルマズベク・アタンバエフ前大統領の支持者と特殊部隊が衝突した地域でインターネットアクセスを遮断し、政治家の汚職について調査したジャーナリストのウェブサイトが攻撃を受けたとも報告されています。

また、インド・エクアドル・ナイジェリアなどの国々も、前回の調査からインターネットの自由度が4ポイント低下したと報告されています。インドやエクアドルでも、政府への抗議活動に関連してインターネットの遮断が実施されているほか、インドはTwitterなどのSNSやNetflixなどの配信プラットフォームに対し、政治的な圧力をかけているとフリーダム・ハウスは述べています。


一方、前回の調査からインターネットの自由度がアップした国として、スーダンとウクライナ、ジンバブエなどが挙げられていますが、これらの結果には注意が必要だとのこと。スーダンとジンバブエは前回の調査で報告されたインターネットの自由度が低く、改善が見られるものの依然として厳しい介入が見られるとフリーダム・ハウスは指摘。また、ウクライナではロシアとの紛争が勃発した東部地域の特殊な状況を受け、東部地域はウクライナ本体の評価と独立して評価されることになったため、今回のスコアに影響が及んだ可能性があるそうです。

「最もインターネットの自由度が高い国」として挙げられているのがアイスランドであり、フリーダム・ハウスは「アイスランドはインターネットの自由を最も強固に保護し続けており、アクセス率が高く、コンテンツの規制が少なく、オンライン上の人権に対する強力な保護手段があります」とコメント。アイスランドに続き、エストニアやカナダもインターネットの自由度が高い国としてランクインしています。

なお、フリーダム・ハウスが拠点を置くアメリカではインターネットの自由度が4年連続で下落しており、オーストラリア・ジョージア・イタリアと並んで7位。日本はアメリカと1ポイント差の11位となっていました。

by Mike Mozart

「最もインターネットの自由度が低い国」として6年連続の最下位に挙げられているのが、香港の抗議運動に関する検閲などで国際的な批判を浴びた中国です。特に中国はパンデミックの最中に「公衆衛生を守る」という名目で、新しいデジタル監視システムを導入していたとレポートは指摘しています。

新たな監視技術には、マスクをしている人の識別を可能にする顔認識機能のアップグレードや、健康アプリを使用して市民の感染を追跡し、ランク付けするシステムなども含まれます。さらにフリーダム・ハウスは、中国全土で「検疫を行う」という名目でウェブカメラを家の内外に設置するように指示されるケースもあると報告しているほか、インターネットユーザーが公式発表に異議を唱えるのを防ぐ言論統制も敷かれたと述べました。

フリーダム・ハウスによると、感染者の接触追跡や隔離を行うためのテクノロジーを利用して国民の監視を強化した国は中国だけではなく、複数の政治指導者が情報へのアクセスを制限したり監視能力を拡大したりする口実として、パンデミックを利用していたとのこと。レポートの共著者であるAdrian Shahbaz氏は、「危機の間に採用された技術と法律が継続する傾向があると歴史は示しています」と述べ、パンデミックに乗じた監視体制がパンデミック後も継続される危険について警告しています。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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