食器や時計には放射性物質が含まれている可能性がある、どのように扱えばいいのか?
by Thomas Hart
ウランやラジウムが危険な物質だと認識される前、これらの物質は塗料や染料として広く使われていました。このため、アンティークの食器や時計には、放射性物質を含むものが存在します。どのようなアンティークに放射性物質が含まれ、どのように扱えばいいのか、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)が解説しています。
Radioactivity in Antiques | RadTown | US EPA
https://www.epa.gov/radtown/radioactivity-antiques
1898年にピエール・キュリー、マリ・キュリー夫妻によって発見されたラジウムは放射線を発する発がん性物質として知られていますが、発見当初は「蛍光色に美しく光る」という特色から、衣料・宝石・食器・時計などにしばしば使用されました。現代ではラジウムを含む製品はほとんどありませんが、アンティークの中には、ラジウムを含む品がまだ散見されます。
例として挙げられるのは、電池を使わずに暗闇で光る時計。このような時計の文字盤にはラジウムや、同様に放射能を持つトリチウムを含むことがあるとのこと。
また、1970年代までウラン酸化物を加えた釉薬(ゆうやく)を使って陶器を加工する方法は一般的だったことから、陶器や、七宝ジュエリーにもウランが含まれている場合があります。そしてウランガラス(カナリアガラス)という、蛍光色に光るガラスがあったことも、アンティークを扱う際には覚えておくべきとされています。
上記のようなアンティークは、数千年とまではいかなくとも、何年にもわたって非常に低いレベルの放射線を発し続ける可能性があるとのこと。
◆時計・文字盤
by Darron Birgenheier
ラジウムが使用された製品とした代表的なのは時計の文字盤。ラジウムは暗闇で光るという性質を持っていたため、時計だけなく、飛行機のダイヤルや計器にも使用されました。第二次大戦期には飛行機のパイロットはラジウムによって光る計器を使用して、コックピットに明かりをともさず、敵に気づかれないようにフライトが可能になったとのこと。なお、2020年時点では、放射性物質を含まないものが利用されています。
ラジウムはアルファ線・ベータ線・ガンマ線を放出し、人体に吸収されたり飲み込まれたりすると、放射性核種が細胞に損傷を与えます。当時、時計の文字盤は作業員によって手書きされており、書く作業の途中に作業員は筆をなめました。ラジウムは体に対してカルシウムのように作用するため、作業員の骨にはラジウムが蓄積されていき、多くの人が骨肉腫となりました。特に、顎の骨肉腫が多かったそうです。その後、科学者が作業員の病気の原因が、筆を舐めることで摂取したラジウムによるものだと気づいたため、1970年代までには文字盤でのラジウムの使用は禁止されました。
◆陶器
文字盤と同様に、1970年代まではウラン・トリウム・カリウムといった物質を陶器の釉薬として使用することは一般的でした。これらの物質はアルファ線・ベータ線・ガンマ線を放出すると知られています。放射性物質を含んだ釉薬は床や壁に使われるタイルのほか、七宝ジュエリーをオレンジ・黄色・緑色に色づける際にも使われました。アメリカの有名食器ブランド「Fiesta」も、1973年までウランを使った食器を製造していたことで知られています。
以下の写真では放射線を図るガイガーカウンターが反応しているのが見てとれます。
by Rui Costa
◆ガラス
ウランガラス、あるいはカナリアガラスという名前のガラスも、かつて職人たちの手によって作られていました。これはウランを少量混ぜたガラスを使用した食器で、鮮やかな黄色や黄緑色をしているのが特徴です。これらのガラスは紫外線ライトを当てられると明るく輝きます。
ウランガラスも1970年代ごろに、アメリカのガラス職人たちが製造をやめたもの。しかし、世界の中にはウランガラスをまだ製造しているところもあり、アメリカにそれらの国のウランガラスが輸入されることもあるそうです。日本でもウランガラスの専門店が存在するほか、インターネットでアンティークが販売されています。
以下はウランガラスでできたビーズ。一見すると何の変哲もないビーズですが……
これも紫外線ライトを当てると明るく光ります。
基本的には上記のようなアンティークは危険なものではなく、棚の中で飾るだけなら問題ありません。しかし、ラジウムが使用されたアンティークの時計を分解しないこと、ウランの釉薬が使われた陶器やウランガラスを食品の提供に使用しないこと、壊れたアンティークは速やかに捨てることが呼びかけられています。ウランガラスなどの食器を使用すると、そのかけらが食品に混じった時に、ラジウムを体内に取り込む危険性があるとのこと。また、放射能を持つアンティークを廃棄する際には地元の放射性物質を取り締まる団体や組織に連絡し、適切な廃棄方法を取ることも推奨されています。なお、日本では原子力規制委員会のページに詳細情報が記載されています。
管理下にない放射性物質を見つけた場合 | 原子力規制委員会
https://www.nsr.go.jp/nra/gaiyou/panflet/houshasen.html
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