Facebookのエンジニア2名がソーシャルメディア検閲問題をめぐり退職、マーク・ザッカーバーグCEOが弁明
暴動や抗議デモに対し軍の力で抑圧することを示唆したトランプ大統領のSNS投稿に対し、Twitterは「暴力を賛美している」と警告した一方で、Facebookは何の警告を行わなかったとして、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOの決断に対して非難が起こっています。ザッカーバーグCEOの姿勢は役員を始め多くのFacebook従業員から批判され、仮想ストライキが起こったほか、エンジニア2名が退職することになりました。これに対し、ザッカーバーグCEOは自身の決断が正しいものだったと弁明を行いました。
Mark Zuckerberg defends hands-off Trump policy to employees after walkout - The Verge
https://www.theverge.com/2020/6/2/21278601/mark-zuckerberg-facebook-trump-posts-employee-call-fact-checking-voter-misinformation
Mark Zuckerberg criticised by civil rights leaders over Donald Trump Facebook post | Technology | The Guardianhttps://www.theguardian.com/technology/2020/jun/02/mark-zuckerberg-criticised-by-civil-rights-leaders-over-donald-trump-facebook-post
Mark Zuckerberg criticised by civil rights leaders over Donald Trump Facebook post | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2020/jun/02/mark-zuckerberg-criticised-by-civil-rights-leaders-over-donald-trump-facebook-post
Facebook employees resign over Zuckerberg's treatment of Trump post
https://mashable.com/article/facebook-engineer-resigns-protest-mark-zuckerberg/
Twitterがトランプ大統領のツイートに「誤解を招く可能性がある」とラベル付けし、トランプ大統領に非難された後も「今後もファクトチェックや警告を行う」という意思を示した一方で、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは「民間企業は政治的発言のファクトチェックをすべきでない」という姿勢を明らかにしました。
この姿勢の違いは、以下のような形で現れています。2020年5月25日にアメリカ・ミネソタ州のミネアポリス市で黒人のジョージ・フロイドさんが白人の警察官に取り押さえられて窒息死した「ジョージ・フロイドの死」事件が起こったのをきっかけにミネアポリス市では大規模な暴動が発生。事件に対する抗議デモや暴動は全米に波及していますが、これを受けてトランプ大統領は「when the looting starts, the shooting starts(略奪が起きた場合、銃撃で対抗する)」と軍隊による鎮圧を示唆しました。Twitter上でのこの発言には「暴力を賛美している」と警告が表示されており、タイムライン上ではツイート内容が非表示となり、リツイート・いいね・リプライができなくなっています。
一方で同じ発言を行ったFacebookの投稿には一切警告が表示されていません。
これに対して、ザッカーバーグCEOはFacebookのポリシーについて直々に説明する声明を出しています。ザッカーバーグCEOは「私は個人的な能力だけでなく、自由な表現にコミットした機関のリーダーとして反応する責任があります。Facebookがトランプ大統領の投稿を残したことについて多くの人々が怒りを示していることは知っていますが、我々の立場は『特定の害や危険が明確な政策でつづられない限り、できるだけ多くの表現を有効にするべき』というものです」と説明しており、改めてソーシャルメディアが政治的発言などを検閲すべきではないという考えを示しています。
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ザッカーバーグCEOのこの姿勢に対しては、Facebook内外から「暴力を扇動して誤情報を広めるプラットフォームを提供することは容認できない」と批判が噴出。役員を含めた多くの従業員がTwitterでザッカーバーグCEOの決定に失望したと表明し、約400人の社員が仮想ストライキを実行したとのこと。また、ザッカーバーグCEOの決定を受けて少なくとも2人のエンジニアがFacebookを辞任しました。
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社内での反対表明や従業員の退職を受け、ザッカーバーグCEOは「もっと従業員に対して透明性を提供すべきだった」と述べた一方で、「ラベル付けや投稿削除を避けるというFacebookの選択は、難しいものだが正しい」という弁明しました。
ニュースメディアのThe Vergeが入手した会議の音声には、ザッカーバーグCEOの「大統領が行ったこの投稿の扱いは非常に難しいものでした」「目覚めてから1日中、この問題について考えていました。私個人にとって苦痛でした」という発言が収録されていたとのこと。また、ザッカーバーグCEOは会議でトランプ大統領の発言に対し、「私の最初の反応は嫌悪感でした」「私は、この瞬間にリーダーが現れてほしいとは考えていません。これは、連帯と落ち着き、そして苦しむ人々に対する共感を求める瞬間です」とも述べています。
その上で、ザッカーバーグCEOは「私たちの決断は社内の人々を苦しめ、メディアの批判を呼びましたが、個人的な見解と私たちのポリシーやプラットフォームの規則を切り離して考える必要があります」「私たちが正しいと考えていることを行うために、おそらく、この決断は会社に膨大なコストを発生させたでしょう」と自身の決断について語りました。
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ザッカーバーグCEOの見解では、トランプ大統領の暴力的な発言を許可するポリシーは、同時にジョージ・フロイドさんが警察によって殺される映像のように「つらいが価値あるコンテンツ」の投稿を許可するものです。一方で、これに対しては従業員から「なぜ世界で最も賢い人々が、社会問題を進展させるのではなく、トランプ大統領を敵に回したくないがために私たちのポリシーをゆがめているのでしょうか」という反論も上がっています。また、役員からは「マークは、同じくFacebook上で有害な発言を行う可能性のある人のための先例を作っている」という非難もあがっています。
ザッカーバーグCEOは、今後アメリカは長い不安の時期を迎えると予測しており、暴力を推進するコンテンツを制限したりラベル付けしたりするポリシーを再検討する可能性があることも示唆。またFacebookはすでにいくつかの国で暴力や紛争についてのコンテンツの扱いについて経験があることを述べています。それでも、ザッカーバーグCEOは今回の決断が、Facebookが世界に与える影響としては「プラスだった」と見ており、「私は、私たちが他では得られない『声』を多くの人々に届けていると信じています。この能力を守ることは、しばし議論になると思います」と見解を述べました。
なお、The VergeはこのようなザッカーバーグCEOの意向に対し、「Facebookは道徳的な問題を法的な問題として扱っている」と指摘しています。
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