グリーンランド氷床の融解が熱波の影響で加速している
2019年7月25日(木)の午後、フランス・パリで気温が42.6度に達し、観測史上最高の気温を記録しました。この熱波が北上し、今度はグリーンランドの氷床を急激に溶かしだしていると報告されています。これは、気候科学者の「最悪の予想」を越えて気候変動が加速している証だとして、注視されています。
European heat wave is turning Greenland’s ice sheet to slush
https://www.nationalgeographic.com/environment/2019/07/greenland-melting-second-time-this-summer-bad/
European heat wave is turning Greenland’s ice sheet to slush
https://www.nationalgeographic.com/environment/2019/07/greenland-melting-second-time-this-summer-bad/
Greenland Melts at Never-Before Seen Rates as Heat Wave That Baked Europe Moves North - EcoWatch
https://www.ecowatch.com/greenland-record-breaking-melt-heat-wave-2639610009.html?rebelltitem=1#rebelltitem1
Greenland melting hits overdrive
https://mashable.com/article/greenland-melting-spike-climate-change/
北極海と北大西洋の間にある世界最大の島・グリーンランドはおよそ220万平方キロメートルの面積を持ち、その8割以上は氷床と万年雪に覆われています。グリーンランドの氷床が過去350年の記録には前例がないほどの勢いで溶けていることは、これまでにも指摘されてきました。
この氷床の融解がヨーロッパを襲った熱波の影響を受けて加速していることが報じられています。2019年夏のグリーンランドの気温は例年に比べて10~15度高く、2019年7月30日には場所によっては23度を越えるところもあったそうです。
グリーンランドの氷の融解に関して、これまで「史上最悪の年」といわれたのは2012年の7月でした。当時はグリーンランド氷床の氷のうち97%がある種の融解を経験し、7月末までに2500億トンの氷床が溶けたとみられています。これは海面を0.8mm上昇させるに足る量だったとのこと。
一方、2019年は7月30日だけでも約70億トンの氷が融解しており、これは平均の1.75倍という量。オリンピックサイズ・プール30億個に相当するといわれています。8月1日には1日あたり120億トンを越える氷が溶けて海に流れ落ちたと考えられており、場所によっては2012年よりも融解が激しいところもあります。8月第1週中には海面レベルを0.1mm上昇させるに足る約500トンの氷が失われるとみられており、2019年は2012年に匹敵する「最悪な年」として記録されるとのこと。
気候学者のイリーナ・オベリーム氏は巨大な滝のように融解した水が流れている様子を撮影しました。
The Naujatkuat River in West Greenland running high in end of July, my gauging station is perched on the bedrock. With the exceptional heat wave coming I have my fingers crossed for it not being washed away. pic.twitter.com/JPofxDIELN
— Irina Overeem (@IrinaOvereem) 2019年7月30日
グリーンランドの氷の一部は、太陽の光を浴びることで毎夏ある程度は溶けます。しかし通常であれば氷床が融解しても、その前後の積雪によってバランスがとれているとのこと。積もったばかりの新鮮な雪は輝き、太陽光を反射し、一方で古い雪は凝固し太陽の熱を吸収するようになるためです。しかし、前冬の間の降雪が少なかったため、夏になった時に太陽光を反射する新雪が少なくなり、熱に弱くなっていたとのこと。
2019年6月に最初の熱波がグリーンランドを襲った時、氷床の45%が融解点を迎えました。これによって既に熱に対して弱くなっていた氷が、7月末の2度目の熱波に大きな影響を受けたわけです。
氷床コアの記録によると、過去1000年の間に今回のような融解イベントが起こったことは数回しかないことを示しています。しかし、気候変動が今後も続くようであれば、このようなイベントは今後も増加するとみられています。
On the northwestern Greenland ice sheet, 2019 melt to-date is 1.2x that of the previous record melt in 2012.@PromiceGL
— Prof. Jason Box (@climate_ice) 2019年7月31日
UPE_L site 72.9 N, 54.3 W, 209 m (686 ft) elevation pic.twitter.com/SU4KGyYQPf
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