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観測史上最高の42度を記録したヨーロッパはなぜ猛暑に弱いのか?

by bark

2019年7月25日(木)の午後、フランス・パリで気温が42.6度に達して、1947年7月に記録された40.4度を72年ぶりに上回り、観測史上最高の気温を記録したと報じられました。フランスだけではなくベルギーやドイツなど、ヨーロッパ各地で軒並み最高気温の記録が更新されています。過去には熱波によって1万5000人以上の死者が出たこともあるヨーロッパに、2019年の猛暑が与える影響について、ワシントン・ポストがまとめています。

Air conditioning in Europe: heatwave forces many to reconsider their need for air conditioning - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/world/2019/06/28/europes-record-heatwave-is-changing-stubborn-minds-about-value-air-conditioning/


2019年6月には、ヨーロッパは既に観測史上最も暑い6月を迎えていたことがわかっていました。ヨーロッパが40度を超えるような猛暑を記録するのは、アフリカのサハラ砂漠から大量の熱気が流れてきたり、海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象の影響を受けたりするためといわれています。

2019年6月は「観測史上最も暑い6月」だったことが判明 - GIGAZINE


そもそもヨーロッパのほとんどの都市が、40度を超えるような猛暑を想定していません。IEAの調査によると、ヨーロッパの全世帯のうちで自宅にエアコンがあるのは5%未満とのことで、冷房で完全に空調が効いているバスや列車といった公共交通機関はヨーロッパではかなり珍しい存在です。

日本はヨーロッパよりもずっと湿度が高い気候で不快指数が上がりやすいことから、エアコンの世帯普及率は90%を超えますが、ヨーロッパにおけるエアコンの世帯普及率は5%を切るとのこと。2016年に算出されたIEAのデータによると、空調システムは全世界でおよそ16億基存在していて、イギリス・フランス・ドイツ・オランダなどヨーロッパ全域に設置されているのはそのうち6%。この設置数は、ヨーロッパよりも国土が狭く人口も少ない日本のおよそ3分の2となります。

by Matthew Paul Argall

ヨーロッパにおけるエアコンの普及が遅々として進まないのは、ヨーロッパでは健康や環境への影響を理由としてエアコンの設置に反対する人が多く存在しているからだとワシントン・ポストは論じています。例えば、ドイツの健康保険会社や医師は「エアコンをつけると風邪をひきやすくなる」「アレルギーを患う人がカビの危険にさらされることになる」と警告していて、ドイツ最大の健康保険会社であるBarmerは、「睡眠障害や頭痛、循環器系の病気がエアコンによって悪化する」という声明を発表しています。また、衛生管理士は「午前中に窓を開け、気温に応じた服を着て、十分に飲み物を飲むことを検討すべきだ」と主張しています。

また、ドイツでは学校のほとんどにエアコンが設置されていないため、熱中症が危惧されるほどの異常な猛暑日は学校を休みにして学生を早く家に帰すこともあるそうです。実際にドイツのデュッセルドルフでは「学校にエアコンを設置するべき」と市議会で提案されましたが、却下されてしまったとのこと。ドイツの応用エコロジー研究所のエネルギーおよび気候担当副部長であるVeit Bürger氏は「ドイツでは、エアコンの採用をためらうことが正当化されてしまいます」と苦言を呈しています。

しかし、2003年8月にフランスを襲った熱波によって1万5000人の死者が出たという事件により、ヨーロッパでは少しずつエアコンを導入するべきだという意見が強まっているとのこと。ドイツのエアコンメーカーであるSchichtl Elektroは「エアコンを使う方が、エアコンなしで猛暑と戦うよりもよっぽど健康的だと結論付ける消費者がどんどん増えています」と語りました。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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