気候変動が続くと海の色が将来的に変わってしまうかもしれない
「海が青色に見える」ことは科学的に説明が可能であり、一般常識の1つとして認識されています。しかし「地球温暖化などの気候変動によって、今後100年で海の色が少しずつ変化していくかもしれない」という驚きの報告がされています。研究チームによると、海の色の変化には植物プランクトンの増減が関わっていて、生態系の変化の予兆と捉えることもできるそうです。
Ocean colour signature of climate change | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-019-08457-x
Climate change will change the color of the oceans - CNN
https://edition.cnn.com/2019/02/04/world/climate-change-ocean-color-study/index.html
太陽から降り注ぐ光が物体に当たると、一部は吸収あるいは透過され、一部は反射されます。この反射した光が目に入射することで、私たちはその波長に対応した色を認識します。
by el_silver
海洋には、光合成を行ってエネルギーを得る植物プランクトンが大量に漂流しています。水と二酸化炭素から炭水化物や酸素を生合成します。海中の酸素濃度が維持されるのは植物プランクトンや海藻による光合成のおかげです。
その光合成に用いられる色素のクロロフィルは、太陽から注がれる光のうち、波長が400~500ナノメートルの青色光と波長が600~700ナノメートルの赤色光を吸収するといわれています。そして、波長が500~580ナノメートルの緑色光は透過あるいは反射されるため、多くの植物は緑色に見えるといわれています。
植物プランクトンの量は、海温・日照量・二酸化炭素量・海中に含まれる無機栄養量によって変化します。漂流する植物プランクトンが多ければ多いほど海の水は青から緑に近づくことから、海の色から植物プランクトンの量を知ることができ、そこからさらに海の状態や気候変動による環境の変化を知ることができます。海の色の変化は、衛星からのリモートセンシングによる測定が1990年代から定期的に行われてきたそうです。
マサチューセッツ工科大学とサウサンプトン国立海洋センターの研究者は過去20年のリモートセンシング測定のデータを分析し、気候変動によって植物プランクトンの量をシミュレートするモデルを作成しました。
研究チームは、貧栄養性である亜熱帯地域の海は、植物プランクトンが減少していくため、青色が強くなっていくだろうと予測しています。実際、バミューダやバハマのような赤道近くの地域では既に植物プランクトンはかなり減少しているとのこと。
逆に、北極海や南極海には栄養分が多く、気候変動による海温上昇によって植物プランクトンの量が急速に増えているとのこと。そのため、北大西洋や南極海は比較的緑に近い色に変化していくと予想されています。2100年までに、気候変動によって世界の海の半分が変色するだろうと研究チームは主張しています。
植物プランクトン自体は決して悪い存在ではありません。植物プランクトンが光合成を行うということは、大気中や海中の二酸化炭素を酸素に変換し、気候の調整に役立つといえるからです。しかし、植物プランクトンは海洋の食物連鎖の中でも生産者に当たり、生態系ピラミッドの基部となるため、プランクトンの量の変化は生態系の変化につながります。
MITの研究員であるStephanie Dutkiewicz氏は「植物プランクトンは生態系の基礎であり、その基礎が変化してしまうと食物連鎖のすべてが脅かされる可能性があります。ホッキョクグマやマグロなど、みんなが食べたいものや写真で見たいものすべてに危険が及ぶのです」と述べていました。
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