サイエンス

気候変動により南極沖で海底地滑りが起こり巨大な津波が発生して多くの人命が奪われる可能性


南極大陸の地層調査で、300万年前と1500万年前の地層から、南極大陸の地滑りによる巨大津波の痕跡が見つかったことが報告されています。論文によると、ミナミアメリカ・ニュージーランド・東南アジアに巨大津波が押し寄せたそうで、今後の気候変動で海温が上昇すると同様の現象が発生する可能性があると研究者が警告しています。

Climate-controlled submarine landslides on the Antarctic continental margin | Nature Communications
https://doi.org/10.1038/s41467-023-38240-y


Climate change-caused underwater landslides could spawn gigantic tsunamis from the Antarctic | Live Science
https://www.livescience.com/planet-earth/antarctica/climate-change-could-trigger-gigantic-deadly-tsunamis-from-antarctica-new-study-warns


南極大陸で地滑りが起こった記録は2017年に南極大陸沖のロス海で初めて発見されました。地層には植物プランクトンの化石が詰まった「緩い堆積物」の層が見られ、これが地滑りを示しているとみられています。


2018年に研究チームは再びこのロス海で海底深くまで掘削し、地層を細長い円柱状にくり抜いた「堆積物コア」を採取しました。この堆積物コアを分析した結果、緩い堆積物の層は鮮新世に当たる約300万年前と、中新世に当たる約1500万年前に形成されており、同時期に南極大陸周辺の海水温が現在よりも約3℃高かったこともわかりました。この海水温上昇が藻類の大量発生を招き、それらが死滅した後に堆積物となり、さらに温暖化で氷河の氷が融解したことで、南極大陸周辺のプレートにかかる荷重が軽くなり、地滑りが起こったと考えられます。

ビクトリア大学ウェリントン校の南極研究センター所長で、2018年に堆積物コアを抽出した国際海洋発見プログラム第374次探検の共同主任科学者であるロバート・マッケイ氏は「緩い堆積物の層は寒冷な気候や氷河期の間にあり、氷河や氷山によって運ばれた粗い砂利の厚い層で覆われていました」と述べています。

研究チームは、「南極の海底には多くの堆積物が埋まっており、地表の氷河が徐々に解けているため、過去に氷河の融解で地滑りが発生したという説が正しければ、気候変動によって氷河が融解していることが問題視されている現在でも、ふたたび海底地滑りによる津波が発生する可能性が考えられます」と警告しています。


なお、何百年も前にこの海底の地滑りによって発生した巨大津波の規模がどれほどであったのかは不明です。ただし、海底の地滑りで津波が発生した事例は近年にも観測されています。1929年にカナダのニューファンドランド島近くの海底地滑り由来で発生した津波は高さ13メートルにも達し、約28人が犠牲となったそうです。また、1998年にパプアニューギニアで発生した高さ15メートルの津波も海底地滑りが原因で、約2200人が犠牲になりました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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