生き物

「ペンギンは地球温暖化を生き延びることができるのか?」という疑問に答える手がかりはペンギンの歴史にある可能性


鳥でありながら空を飛ぶことができず海を泳いで狩りをするペンギンは、南極からガラパゴス諸島まで南半球の広い範囲に分布しています。「ペンギンは地球温暖化を生き延びられるのか?」という疑問について、ペンギンの進化に関する研究結果が手がかりになると科学系メディアのInverseは報じています。

Genomic insights into the secondary aquatic transition of penguins | Nature Communications
https://doi.org/10.1038/s41467-022-31508-9

Will penguins survive climate change? Their past may reveal the answer
https://www.inverse.com/science/penguins-adapted-to-the-extreme-environments-study

Penguins are slow to evolve, making them vulnerable to climate change
https://www.nationalgeographic.com/animals/article/penguins-are-slow-to-evolve-and-vulnerable-to-climate-change

ペンギンの祖先は約6000万年前、かつてオーストラリアの東側に存在した「ジーランディア」という大陸に生息していたとみられています。記事作成時点では、ジーランディアのほとんどが海底に沈んでしまっていますが、一部はニュージーランドやニューカレドニアとして陸地を保っています。

その後、ジーランディアに生息していた古代のペンギンは南極大陸の周囲を東回りに流れる南極環流に乗り、南米や南極大陸へと到達したと考えられています。しかし、他の鳥類と比較してかなり奇妙な特徴や生態を持つペンギンの進化史については、依然として多くの謎が残っているとのこと。そこで国際的な研究チームは、現在も生きているすべてのペンギンおよび最近絶滅した27の分類群のゲノムや、化石が発見されている47の分類群を含む形態学的・生物地理学的データを分析し、他の鳥とのゲノム比較なども行ってペンギンの進化史を解き明かそうと試みました。


研究の結果、過去の地球で発生した主要な気候変動が、多様な種の登場を含むペンギンの進化に深く影響していることがわかりました。たとえば、約1600万年~530万年前には地球全体が著しく寒冷化し、南極大陸の氷河が拡大しましたが、この時期に現代の寒冷地に住むペンギンの祖先が誕生したとのこと。また、高緯度地域に生息していたペンギンは約200万年前から孤立状態で種の多様化が進み、1万1500年前に最終氷期が終わって地球が再び温暖化すると、複数の種が南極周辺へ移動してお互いに接触するようになったそうです。

また、ペンギンのゲノム解析からは、水中を泳ぐのに適した硬い足ヒレと防水性のある羽毛、潜水に役立つ水中での視力や酸素コントロール能力、体温を保つ厚い皮膚と脂肪など、さまざまなペンギンに固有の遺伝的適応が確認されました。研究チームは、「これらの適応はペンギンが地球上で最も極端な環境に定着することを可能にしました」と記しています。


論文の共同筆頭著者であり、中国の深圳に本拠を置くバイオテクノロジー企業・BGI-Researchでゲノム進化や動物の適応を研究しているChengran Zhou氏は、「地球規模の寒冷化と主要な海流が、ペンギンの多様化と生物地理学的パターンを形作った主な要因のようです」とコメント。論文の共著者で鳥類古生物学者のDaniel Ksepka氏は、「ペンギンは進化の最も興味深い産物です」「彼らは先祖とまったく異なる体形とライフプランに適応しました」と述べました。

今回の研究では、ペンギンが過去に生じた気候変動にうまく適応したことが示されたほか、体重が重いほど進化するスピードが速い傾向も確認されました。コウテイペンギンなど寒い気候に生息する種は体が大きい傾向にあることから、「寒冷地に生息する大型の種は、気候変動による新しい環境に適応する能力がより高いことが示唆されています」と研究チームは指摘。Zhou氏は、「今回の研究はペンギンが過去6000万年の間に絶えず変化する世界に適応してきたことを示しました。私たちはペンギンの未来に楽観的です」と述べています。


しかし、ペンギンは進化の初期段階に急速な進化を遂げて水中に適応したものの、その後は進化速度が大幅に低下しているとのこと。そのため、現代の急速な気候変動にペンギンが適応できない可能性も指摘されており、Ksepka氏はすでにいくつかのペンギンが絶滅の危機に瀕しているとして、「ペンギンの運命は人間に縛られていると思います」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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