生き物

「ペンギンのうんち」を人工衛星の写真から探して未確認だったペンギンのコロニーを発見

by Christopher Michel

現在生きているペンギンの中で最も大きなコウテイペンギンは、南極大陸周辺の氷上にコロニーを築き、氷点下数十度という厳しい環境で繁殖します。そのため、人間が直接コロニーを確認して正確な個体数を測定することは困難ですが、「コウテイペンギンのうんち」を人工衛星の写真から探し、これまで未確認だったコウテイペンギンのコロニーを発見することに成功したと報告されています。

Discovery of new colonies by Sentinel2 reveals good and bad news for emperor penguins - Fretwell - - Remote Sensing in Ecology and Conservation - Wiley Online Library
https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/rse2.176

Scientists discover new penguin colonies from space - British Antarctic Survey
https://www.bas.ac.uk/media-post/scientists-discover-new-penguin-colonies-from-space/

Poop stains visible from space reveal hidden colonies of Antarctic penguins | Live Science
https://www.livescience.com/new-emperor-penguin-colonies-satellite-poop-climate-change.html

Satellites Reveal Hidden Colonies of Emperor Penguins We Never Knew Existed
https://www.sciencealert.com/satellite-images-reveal-more-emperor-penguin-colonies-on-the-brink-of-extinction


コウテイペンギンが住む南極大陸は人の居住地から遠く離れている上に、時には氷点下数十度まで気温が低下する過酷な環境です。そのため、コウテイペンギンの個体数の計測は困難ですが、イギリス南極観測局の研究チームは過去10年間にわたり、衛星画像から「ペンギンのうんち」を探すことでコウテイペンギンのコロニーを探してきたとのこと。

研究チームは2016年、2018年、2019年に欧州宇宙機関(ESA)センチネル-2が撮影した南極の画像を分析し、ペンギンのうんちを示す茶色のシミを探しました。その結果、かつて報告されていたものの確認されていなかった3個のコロニーに加え、これまで未確認だった8個のコロニーが新たに発見されたそうです。

以下の画像が、衛星写真から見つかったペンギンのうんちです。ペンギンはコロニーを形成して長期間そこにとどまるため、長年にわたり排せつされたうんちが集まって、衛星写真でも確認できるほど茶色っぽくなります。


比較的広い範囲にうんちが広がっているケースもあれば……


ほんの小さな点にしか見えないケースもあります。発見されたコロニーのほとんどは非常に小さかったため、複数の画像を組み合わせてコロニーの存在を確定させていったとのこと。


これまで確認されていた南極大陸にあるコウテイペンギンのコロニーは50個だったそうで、今回新しく発見または再発見された11個のコロニーを加え、南極大陸に存在するコウテイペンギンのコロニーは合計61個となりました。今回発見されたコロニーには小さいものが多かったため、個体数の増加は最大で5万5000羽ほど、割合にして5%~10%ほどの増加だそうです。

コウテイペンギンの多くは陸地に固定された氷の上で繁殖を行い、子作りからヒナの巣立ちまで9カ月間ほどコロニーが安定している必要があります。今回発見されたコロニーのうちいくつかは岸から180kmほど離れた氷上にあったそうで、これまで発見されていたコロニーよりはるか沖合にも、未発見のコロニーがある可能性が示唆されているとのこと。


しかし、岸から遠く離れた場所は暖かいため、地球温暖化により海氷の消失による影響を受けやすいと研究チームは指摘。2019年の研究では、「気温が1.5度上がっただけで、コウテイペンギンの個体数は次の3世代で31%減少する」と予測されており、地球温暖化がコウテイペンギンに与える影響は深刻です。

イギリス南極観測局のPhil Trathan氏は、「新しいコロニーが見つかったことは朗報です。しかし、新たに発見された全てのコロニーは、最近のモデルによって『コウテイペンギンの個体数が減少する』と示唆されている地域にあります」とコメント。新たに発見されたコロニーは「炭鉱のカナリア」であり、気候変動が南極のコロニーに与える影響を知るため、注意深く監視する必要があると述べました。

by StormPetrel1

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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