サイエンス

いかにしてイグアナは海を渡ったか?「漂流」VS「徒歩」の長年の論争に決着がつきそうです


主として南北アメリカ大陸に分布するイグアナが、いかにして南太平洋のフィジートンガの島々に飛び地のように分布するに至ったか、科学者たちは長年首をひねってきました。

現在フィジーとトンガに生息するイグアナの祖先は南米から漂流物に乗って流されてきたという説が、今までは最も有力だったのですが、最新の研究によりこの通説が覆されるかもしれません。

詳細は以下から。Raft or bridge: How did iguanas reach tiny Pacific islands?

現在フィジーとトンガに生息するフィジーイグアナ属は、1300万年ほど前に南米から太平洋を渡ってきたグリーンイグアナが進化したものだと考えられています。

ミシシッピ大学の生物学者Brice P. Noonan准教授とブリガムヤング大学Jack W. Sites教授は、最新の遺伝学・地質学的データと化石により、イグアナたちは太平洋を漂流したのではなく、フィジーやトンガがまだ超大陸の一部であった時に歩いて渡った可能性が高いと考えるに至りました。論文はThe American Naturalist誌2010年1月号に発表されています。

フィジーイグアナ属のFiji Crested Iguana。かつてはフィジー諸島西部の14の島に分布していたのですが、現在生息が確認されているのは3島のみ。IUCNレッドリストでは「Critically Endangered(絶滅寸前)」と分類されています。


Photo: Michael needs more photo time

Fiji Banded Iguana。こちらも生息地の環境破壊や、島へ持ち込まれ野生化したマングース・ネコなどにより脅かされ、レッドリストでは「Endangered(絶滅危惧)」となっています。


フィジーとトンガに数種のイグアナが分布していることは「島の生物地理学において最も理解しにくい謎の1つです」とNoonan准教授。フィジーとトンガ以外の南太平洋のほかの諸島や、一番近い(約3000km)大陸であるオーストラリアにはイグアナは全く分布せず、太平洋を渡り遠く5000マイル(約8000km)離れた南米まで行かなければほかのイグアナ属を見ることはできません。ではイグアナはどのような経緯で、フィジーとトンガに分布するに至ったのでしょうか?

今までの通説は、南米から太平洋を漂流して流れ着いたのだろうというものでした。イグアナが漂流して分布を広げた例はほかにもあり、カリブ海の諸島やガラパゴス諸島のイグアナは南米本土から流木などに乗り流れ着いたものだと考えられていますが、太平洋を渡るのは、スケールが全く違います。Noonan博士とSites博士は、太平洋を渡るには6ヶ月以上かかるだろうと推算しています。流木や小さな浮島のような植生の上でイグアナが生き延びるには長すぎる期間です。

そこでNoonan博士とSites博士は、イグアナたちは島々がまだゴンドワナ大陸(今日のアフリカ・オーストラリア・南極・アジアの一部を含む超大陸)の一部であった時に、歩いて生息地を移動した可能性を検証しました。その場合、フィジーとトンガのイグアナは非常に古い種であるということになります。現存のイグアナのDNAを分子時計分析した結果、フィジーイグアナ属は6000万年以上前にほかの属から分岐したことが判明しました。6000万年前というのは、まだフィジーやトンガが陸橋によってオーストラリアやアジアとつながっていた時代です。

化石証拠もこの仮説を裏付けます。モンゴルで発掘された化石により、イグアナの先祖が過去にはアジアにも分布していたことが明らかになっています。オーストラリアではこれまでイグアナの化石は発見されていませんが、過去に分布していたという可能性が否定されたわけではありません。Noonan博士らによるとオーストラリア大陸の化石記録は驚くほど乏しく、化石の不在が過去の生物の不在の証明ととることはできないそうです。

イグアナがアジアやオーストラリアから陸橋を歩いて渡ったのだとすれば、その陸橋の一部であった周辺の太平洋の島々にも分布するはずだと考えるのが自然ですが、現在フィジーとトンガ以外の南太平洋の諸島にイグアナが生息しないのはどうしてなのでしょうか?化石証拠により、イグアナがほかの島々にも過去には分布していたが、それらの島に人間が住み始めたころに絶滅したことが示唆されているそうです。フィジーとトンガは周辺の諸島と比べ人間が住み始めてからの歴史が浅く、イグアナが絶滅を免れたのではないかと考えられるとのこと。

分子時計と化石証拠を総合すると、「オーストラレーシアの大陸断片(Continental fragment)を通じてイグアナがフィジーとトンガへ到達した」ことが示唆されるとNoonan博士は語ります。「イグアナが乗った『イカダ』は陸地だったのかもしれません」

今回の研究により「漂流説」が完全に除外されたわけではありませんが、「徒歩説」は以前考えられていたよりはるかに地に足のついた理論であることが示されました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log