サイエンス

南極の氷3兆トンが猛烈な勢いで失われ、しかもそのスピードは加速していることが衛星データから判明


NASAやESAの研究者を含む研究チームが1992年から2017年まで衛星によって観察を行った結果、25年間で3兆トンの氷が南極大陸から失われたことが判明しました。さらに全体のうち40%は2012年から2017年の5年間に失われたものであり、猛烈な勢いで氷が消えていっているとして科学者らが警告しています。

Mass balance of the Antarctic Ice Sheet from 1992 to 2017 | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0179-y

Antarctic ice loss has tripled in a decade. If that continues, we are in serious trouble. - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/news/energy-environment/wp/2018/06/13/antarctic-ice-loss-has-tripled-in-a-decade-if-that-continues-we-are-in-serious-trouble/

Antarctica’s ice is shrinking at an unprecedented rate that could imperil coastal regions worldwide
http://www.latimes.com/science/sciencenow/la-sci-sn-antarctic-ice-sheet-melting-20180613-story.html

Antarctica has lost trillions of tons of ice, boosting sea levels
https://mashable.com/2018/06/13/antarctica-ice-melt-sea-level-rise/

最も影響を受けているのは南極西側の氷で、「これらの氷は猛烈に溶けていて、大量の氷が、まるで川のように海へと流れていっています」とNASAのJosh Willis氏は語りました。これほどに氷が溶けていっている様子が観察されたことはかつてなく、「次に何が起こるかわからない」とのこと。


1992年から2017年までの変化は以下のムービーからも確認できます。

Video One - YouTube


「われわれ宇宙機関が打ち上げた衛星のおかげで、私たちは氷が溶ける様子や海面レベルの上昇を、確信をもって追跡できます。そして我々の分析によると、過去数十年において南極から溶け出す氷の速度は急激に増しており、過去25年のどのタイミングよりも速く海面レベルの上昇を引き起こしているのです」と気象科学者のAndrew Shepherd氏は語っています。過去25年間で記録された南極大陸を原因とする海面レベルの上昇は7.5mmですが、そのうち40%にあたる約3mmの上昇は過去5年で引き起こされたものだそうです。


実際に、2012年の時点では「南極大陸の氷は毎年840トンほど海に流れ、海面レベルを年0.2mm上昇させる」といわれていましたが、2012年以降は南極のパイン・アイランド氷河とスウェイツ氷河をメインとして年間2400億トンの氷が失われはじめたとのこと。南極西側が大きな影響を受けているのは、この巨大な2つの氷床があるためです。

今回発表された論文の共著者であるSteve Rintoul氏は、大量の氷が失われている場所で海水温が比較的に高いことを指摘。大陸の端に存在する氷の塊は大陸に存在する氷をとどめる「プラグ(栓)」のような役割を果たしており、氷床が薄く、弱くなることで大陸の氷が海へと流れ出す可能性もあるとされています。


研究者は「南極大陸の氷床は、海面レベルを58メートル上昇させるのに十分な氷床を保持している」と述べています。もちろん、これら全ての氷が海洋に流れ出すことを誰も示していませんが、ほんの少し海面が上昇しただけで、沿岸に住む何十億もの住人が水不足や洪水の影響を受けるという点は覚えておくべきところです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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