気候変動でビールの価格が高騰したり味が悪くなったりする可能性がある
by Nicolas Postiglioni
ビールは世界中で愛されているアルコール飲料である上に、実に5000年前の給与明細からビールが給料として支払われていたこともわかっており、非常に古くから飲まれている飲料でもあります。そんな多くの人々に親しまれているビールが、「気候変動によって大幅に値上がりしたり、味が落ちたりしてしまう可能性がある」と報じられています。
Decreases in global beer supply due to extreme drought and heat | Nature Plants
https://www.nature.com/articles/s41477-018-0263-1
Climate change could raise the cost of beer
https://mashable.com/article/beer-production-climate-change-barley/#JY9EuWj9qiqb
ビールにはさまざまな作り方がありますが、主に大麦を発芽させた麦芽をビール酵母で発酵させる方法が使われています。初期文明では広く大麦が栽培され、それに伴ってビールの製造も古くから行われてきました。そんな大麦は現代でも多くの農家によって栽培され、実に年間で数千万トンもの収穫量を誇っているとのこと。
しかし、大麦も植物の一種である以上、地球規模の環境変化の影響を受けることになります。地球温暖化によって人間の生活にさまざまな悪影響があるといわれていますが、その一端として、地球温暖化に伴う熱波や干ばつで大麦の収穫量が低下し、ビール生産に少なからぬ影響があることが予測されています。
モンタナ州小麦大麦委員会の責任者を務めるコリン・ウォッターズ氏は、「極端な環境の変化は多くの穀物にとって有害です。大麦は多くの人にとって非常に親しまれており、特にビール好きの人にとっては身近な穀物でしょう」と述べました。中国やアメリカ、イギリスの研究チームは2018年10月、今世紀に引き起こされる気候変動がどのように大麦の収穫に影響を与えるのかについて、いくつかのシナリオを提出しました。
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シナリオによると、今後もこれまでと同量の温室効果ガスが排出され続けた場合、大麦の収穫量は21世紀末までに17%も減少する予測だとのこと。また、大麦の収穫量が減少する一方で世界の人口は増加を続けており、需要と供給の関係からビールの価格が高騰するとも考えられています。
現在のアメリカではビール6本入りのケースは10ドル(約1100円)もしませんが、将来的には16ドル(約1800円)ほどの価格に値上がりする可能性があるそうです。可能性としては、現行価格の2倍かそれ以上にまで高騰することもあり得ると研究チームは指摘しました。カリフォルニア大学アーバイン校で気候の変化が農業システムに与える影響を研究しているナサニエル・ミューラー氏は、「温室効果ガスの排出量の多い世界では全ての価格がロケットのように上昇します」と述べました。
長年にわたって大麦は安定した気候のもとで栄えてきましたが、過去80万年で最高ともいわれる近年の二酸化炭素量は、大麦にも農家にも大きな打撃を与えるかもしれません。気温が高い気候では水の循環システムが極端なものになるそうで、「強烈な雨が降るか、それとも全くと言っていいほど降らないかの二極化が進むでしょう。洪水も干ばつも農家や作物にとって有益なものではありません」と、アメリカ大気研究センターのアンドレアス・プレイン氏は語っています。
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また、問題は熱波や干ばつによって大麦の収穫量が落ち込むという点だけにとどまりません。ビールに使われる大麦には高品質なものを選ばないと、ビールの質そのものに影響します。ウォッターズ氏が「ビールに使用する大麦は一定の生育条件を満たしている必要があります」と語るように、ビール用の大麦は含まれるタンパク質が少なめである必要があるとのこと。しかし、熱波や干ばつは大麦のタンパク質含有量を増やす傾向にあるため、「地球環境の変化は大麦そのものをビールに適さない品質に変えてしまう可能性があり、問題は収穫量の減少だけではないのです」とウォッターズ氏は述べました。
気候の変化が作物の収穫量や品質に悪影響を与えるというおそれは、すでにコーヒーについても指摘されているとのこと。プレイン氏は、「コーヒーをどこかで栽培できればそれで解決というわけではなく、よい品質のコーヒーを作れるかどうかが重要なのです」と語ります。
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最悪のシナリオが想定される一方で、温室効果ガスの排出量を減らすことができれば、ビールの生産量や品質にはほとんど影響が出ないことも研究チームは主張しています。つまり、再生可能エネルギーへの移行や世界的な協力が功を奏した場合、将来的にも何ら問題なくビールを楽しむことが可能。
また、大麦の品種について考え直すことも、将来のビール生産を助ける結果になるかもしれません。太古の人々は非常に多くの野生種の中から、その土地にあった大麦の品種を見つけ出して栽培を始め、新たに気候の違う場所で大麦を栽培する時も、従来とは別の品種からその土地に適した品種を見つけ出して栽培を行いました。近年では収穫量に焦点が当てられた品種が多く栽培されていますが、多様な気候に対応可能な品種を見つけ出すことも必要です。ウォッターズ氏によれば、すでに干ばつへの耐性を持つ大麦の品種を作り出す試みが行われているとのこと。
一方で、ビール業界も地球環境の変化をただ見守っているわけではありません。大麦が収穫できなくなった場合には大麦以外の穀物からビールを生産するしかないため、バドワイザーのような大手ビールメーカーでは米などの代替穀物を使用してビールを製造する試みがスタートしています。ウォッターズ氏は「農家もビールメーカーも最善の結果を祈っていますが、最悪の場合にも備えて準備をしています」と語りました。
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in 食, Posted by log1h_ik
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