サイエンス

2023年を特に暑くしている4つの気象条件まとめ、2024年以降はどうなるのか?

by Graeme

2023年7月4日にはそれまでの観測史上最高気温が観測され、その後も暑い日が続いて「2023年7月はこれまでで最も暑い月」となるなど、2023年の夏はとにかく記録破りの暑さです。気候変動の深刻化により今後も激しい気象が続くと予想されますが、特に2023年は4つの現象が重なったことで例年にない酷暑が世界を襲っていると、セントルイス・ワシントン大学文理科学科のマイケル・ワイセッション氏が指摘しています。

July was Earth's hottest month on record: 4 factors driving 2023's extreme heat and climate disasters
https://theconversation.com/july-was-earths-hottest-month-on-record-4-factors-driving-2023s-extreme-heat-and-climate-disasters-209975

◆1:エルニーニョ現象
エルニーニョ現象とは、熱帯太平洋の海面温度が上昇するのに伴って世界中の気温に影響が出る現象のことで、逆に海水温が低下するラニーニャ現象とともに数年おきに発生します。

例えば、2016年には強いエルニーニョ現象が発生し、これにより2016年は観測史上最も暖かい年となりました。2019年から2020年にも比較的弱いエルニーニョ現象が発生しており、その影響で2020年は2番目に暖かい年となっています。

その後、2020年から3年続いたラニーニャ現象により太平洋の海は平年より低くなっていましたが、2023年3月ごろに終息するのと同時に強いエルニーニョが到来しており、再び記録的に暖かい1年になると予想されています。前述の通り、すでに2023年7月は観測史上最も暑い月となっており、イランでは人体の限界に近い約67度という信じられない熱指数が報告されています。


◆2:太陽のゆらぎ
毎日一定の輝きを放っているように見える太陽ですが、放出するエネルギーは11年周期で1000分の1ほど変動しています。この変化は日常生活レベルでは気づきませんが、地球の気候を左右する要因のひとつとなります。

まず、太陽の活動が活発な太陽極大期の場合、地球の気温上昇は0.05度ほどで、影響の大きさは大規模なエルニーニョの3分の1程度です。一方、太陽極小期には逆に気温が低下するため、2020年の極小期には同年に発生した弱めのエルニーニョ現象の影響を和らげる方向に作用しました。

2020年に極小期を迎えた太陽の活動は、2025年のピークに向けて再び活発化している途中ですが、2023年の時点ですでに2014年の極大期のピークを上回っており、この激しい太陽活動のエネルギーがエルニーニョ現象による気温上昇に拍車をかけています。


◆3:大規模な火山噴火
通常の噴火の場合、大気中に巻き上げられた硫酸塩エアロゾルが太陽光を遮断し、その結果地球の温度が下がりますが、これには例外もあります。

これまでのところ21世紀最大の火山噴火となっている2022年のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の大規模噴火では、放出された硫酸塩エアロゾルが著しく少なかった代わりに膨大な水蒸気が発生しました。これは、海底に吹き出たマグマが水中で爆発し、大量の海水を蒸発させたことが原因です。

水蒸気は非常に強力な温室効果ガスであるため、噴火により地表が0.035度温暖化されると推定されています。しかも、1~2年ほどで降下する硫酸塩エアロゾルの粒子とは異なり、水蒸気は長期にわたって大気中にとどまることが可能であり、トンガの火山噴火による温暖化の影響は少なくとも5年間は継続する見込みです。


2022年に発生したフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火がどれほどすさまじい規模だったのかは、以下の記事を読むと一目でわかります。

トンガの大噴火は広島型原爆の500倍以上の爆発力があったと推定される、噴火前後の比較画像もアリ - GIGAZINE


◆4:地球温暖化
言葉通り、地球温暖化も地球を暑くしている要因のひとつです。人類は1900年以降、大量の温室効果ガスを大気中に放出し、地球の平均気温を1.1度上昇させました。特に、車や発電所での化石燃料の燃焼により、大気中の二酸化炭素は50%増加したとのこと。人類が放出させた温室効果ガスの影響は1.1度に収まりませんが、太陽光を遮る大気汚染などの影響である程度相殺されています。

セントルイス・ワシントン大学のマイケル・ワイセッション氏は、2023年以降の数年間は特に激しい気候変動の影響が続くだろうと考えています。なぜなら、エルニーニョ現象が今後も続く可能性が高いほか、太陽極大期の影響もまだピークに達しておらず、これからさらに強まる見通しだからです。さらに、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の影響も当面続くため、これらの影響が重なれば熱波、大規模な林野火災、洪水などさまざまな異常気象が今後も増加していくことになります。

悪化を続ける人為的な気候変動に加え、さまざまな気象条件が重なることで、今後数年のうちにパリ協定が目指している「産業革命前から1.5度」を超える気温の上昇が少なくとも一時的に発生する可能性は「50%以上」と算定されており、今後人類はますます厳しい暑さに見舞われる見込みとなっています。

2027年までに記録的猛暑で観測史上初の「気温が産業革命前から1.5度上昇」が起きると世界気象機関が警告 - GIGAZINE

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
2023年7月の猛暑について気候学者が「私たちが予想していた通り」と語る - GIGAZINE

2023年7月4日は過去12万5000年間で最も暑い日だった - GIGAZINE

「2023年7月は観測史上最も暑い月」とNASAの気候学者が語る - GIGAZINE

地球は過去12万年の歴史の中で最も暑くなっている - GIGAZINE

2027年までに記録的猛暑で観測史上初の「気温が産業革命前から1.5度上昇」が起きると世界気象機関が警告 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1l_ks

You can read the machine translated English article here.