「零戦を日本の空で飛ばしたい」とオーナーの熱意で里帰りした零戦二二型を見てきた
現在、世界で飛行可能な零戦は4機だけで、そのうち3機は海外の個人や博物館が所有しています。そんな中で「零戦を日本の空で飛ばしたい」という、唯一の日本人オーナーの情熱でようやく里帰りが実現した零戦二二型が現在さいたまスーパーアリーナに展示されているということなので、見に行ってきました。
零戦里帰りプロジェクト
https://www.zero-sen.jp/
零戦里帰り記念展示会!|零戦里帰りプロジェクト
https://www.zero-sen.jp/event/
展示会場はさいたまスーパーアリーナ
到着するとメインアリーナの前にすごい行列ができていました。これは「ミュージカル『テニスの王子様』コンサート Dream Live 2014」のお客さん。
「零戦里帰り記念展示会」は1階の展示ホールで行われています。
これが会場入口。
通路を通って写真右側の蛇腹カーテンのところから会場内に入ってきます。
そこにはいきなり零戦(零式艦上戦闘機)の胴体が……。展示されているのは零戦二二型で、展示はエンジン・機体前部(胴体部)・機体後部の3分割。
機体側面にはオーナーである「石塚政秀」の名前入り。
コックピット前部に突き出た7.7mm機銃2門はレプリカです。
左の翼についているピトー管。
このように潜り込むように翼の下面を撮影することもできます。
機体を支えるための車輪が見当たりませんが、これは主脚が引き込み式になっているため。
今回は機体が3分割展示となっていて、機体としての姿を楽しみにしている「んっ?」と思うかもしれませんが、分割&座席を取り外しているおかげで、後ろからコックピット内がどうなっているのかを見ることが可能。ちなみに、分割しているのはもともとバラせるようになっている部分で、輸送用に無理矢理切断したわけではないので、組み立てれば再び飛行可能。
並んでいる計器や操縦桿、フットペダルまで見られます。通常、こういった機体をそのまま展示すると、コックピット内を見るためには脚立などを用いて高いところから見る必要がありますが、分割しているからこそ見られる絵もあったというわけ。
翼端50cmほどは上に折りたためるようになっています。これは空母のエレベーターに載せるときに翼端が当たらないようにするため。
こちらは機体後部。
胴体部分と同じように、中をのぞき込むことができます。石塚さんが零戦を里帰りさせることの目的の1つに、最速・最軽量を目指して当時の技術の粋を集めた機体を見ることで、先人の技を知りそこから何かを受け取って欲しい、ということもあるので、内側を見られるというのはとても重要。
尾翼番号はAI-112。水平尾翼は取り外されています。
機体を一番後ろから見たところ。垂直尾翼の下にあるピラミッド型の積み重なったものはウェイト、その下にあるのが後部車輪。この車輪も引き込み式なので、飛行中は機体内部に収納されます。
そして、これが零戦に搭載されていた栄エンジン。
ただし、展示されている零戦二二型であれば栄二一型を積んでいたはずなのですが、回収されたエンジンは零戦二一型が積んでいた栄一二型。実戦運用の中でエンジンを換装したのか、不時着機を回収したときに別の機体のエンジンを持ってきたのか……。
栄は修理できる状態ではなかったということで、保管されている状態。
プロペラもかなりさびています。
横や……
裏側まで回って見ることが可能。
栄と並んで、航空ショーで飛ばすときに使われていたプラット・アンド・ホイットニー社製のエンジン(R1830)も展示されています。
栄はこのエンジンの影響を受けているとのことで、2つのエンジンの部品規格は同じ。
機体に搭載するとこうなります。
分割状態からこの元の姿へ戻すためには、プロのエンジニアが数人がかりで約1週間かかるとのこと。
この展示されているパネルは1枚7000円で購入可能。
会場にいたオーナーの石塚さんに、いろいろとお話を伺ってきました。
展示されている機体は、1970年代にパプアニューギニアで発見・回収されたもの。1980年代にモトクロスライダーで飛行機好きでもあるボブ・ハンナー氏が入手し、サンタモニカの博物館に収蔵されていました。しかし、1990年代に入って当時の設計図の提供を得られたことから、ハンナー氏のマネージャーのブルース・ロックウッド氏が設計図をもとにリバースエンジニアリングを実施。旧ソ連の戦闘機Yakシリーズを製造・整備している工場の協力もあって、10年間・38万時間かけて、現役時代の仕様や性能を限りなく再現してのレストアが完了しました。
一方、現在のオーナーである石塚政秀さんはフライトジャケットメーカー「The few」のCEO。航空雑誌のライターでもある石塚さんは、2004年に今回の機体とは別の零戦二一式と出会い、「飛行可能にして里帰りさせることができれば」という記事を書きました。
このころ、石塚さんは日本のある建設予定の博物館から「メイン展示として零戦を置きたいので探して欲しい」という話を受けていました。残念ながら前述の機体は現在の所有者であるハワイのPacific Aviation Museumの手に渡った後だったので、いろいろと探したところ、ハンナー氏が所有する零戦を発見。交渉の結果、購入契約はまとまって2008年に機体を購入することができたのですが、リーマンショックの影響で日本での展示の話がなくなってしまってスポンサーもいなくなり、機体は石塚さんが所有することになって、整備と航空ショー参加のためアラスカの会社へリースに出されることに。
この後、本機を使用する予定の案件はいくつかあったのですが、東日本大震災の発生などもあってうまくいかず、個人で維持し続けるのにも限界があることから協力を募り、ようやくアラスカから輸送して、里帰りが実現しました。
前述の通り、機体は分割されていますが、もともと分割可能なところでばらしているだけなので、元の姿に戻せば飛行は可能。終戦70年という節目を迎える2015年に「日本の空を飛ばす」ということを目指して、今後の国内飛行のための準備資金として、現在クラウドファンディングサイトの「READYFOR?」で支援を求めています。
第1弾!唯一日本人所有の飛行可能な零戦を日本の空で飛ばしたい(零戦オーナー 石塚 政秀) - READYFOR?
https://readyfor.jp/projects/zerosatogaeri
支援額によって引換アイテムの内容が変わってきます。
3000円:里帰り記念クリアファイル
1万円:里帰り記念グッズ2点(マグカップ、クリアファイル)
5万円:プロジェクトメンバーとして公式に記録(拒否も可)、里帰り記念グッズ3点(ピンバッジ、マグカップ、クリアファイル)
10万円:5万円の内容+サポートクラブ入会権(1年更新)、年次イベントへの特別優待、サポートクラブフライトジャケット(The FEW製L-B2ジャケット)
30万円:5万円の内容+サポートクラブ入会権(1年更新)、年次イベントへの特別優待、サポートクラブフライトジャケット(The FEW製L-B2ジャケット)、里帰り記念グッズ4点(カレンダー、バッジ、マグカップ、クリアファイル)
50万円:5万円の内容+サポートクラブ入会権(1年更新)、年次イベントへの特別優待、サポートクラブプレミアムジャケット(The FEW製 革製A2ジャケット)、里帰り記念グッズ5点(Tシャツ、カレンダー、バッジ、マグカップ、クリアファイル)
100万円:スポンサー契約権(企業向け)、本機著作権の利用(画像の広告等印刷物・ウェブサイト・非売品グッズの作成権)、サポートクラブプレミアムジャケット(The FEW製 革製A2ジャケット)
プロジェクトの締切は2015年2月4日(水)23時で、2000万円集まっていれば決済されます。
石塚さんは零戦に私財を投げ打っており、家・牧場・ボートなどがすべて零戦のためになくなっていて、個人で維持していくのは限界が来ているとのこと。戦後日本のモノ作りの原点であり、当時の技術を集めた零戦を見てもらいたいという気持ちと同時に、何とか日本の空を飛ばせたいとも語りました。
ちなみに、さいたまスーパーアリーナでの零戦展示は11月24日まで。時間は9時15分~19時45分(最終日は18時45分)で、チケットは当日料金が大人2500円、6~15歳1000円、70歳以上1200円(5歳までは無料)で、チラシを持参すると300円引き。基本的に1時間入れ替え制です。
撮影は自由ですが、機材持ち込みはNG。脚立などの撮影機材が使いたい場合は一般入場とは別のフォト枠での入場となります。これは9時15分から45分と、19時(最終日は18時)から45分、それぞれフォトセッション用のチケット(当日1万円)で入場するもので、「チケットが高い」という意見があるものの、参加した人からは「この内容なのであれば、この価格になるのは納得」と好評だとのこと。
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