2007年11月16日 11時41分動画

65年間砂の中に埋もれていた第二次世界大戦時の戦闘機が発見される

第二次世界大戦時に不時着した戦闘機、P-38 ライトニングがイギリス・北ウェールズの海岸で見つかりました。ずっと砂の中に埋もれていたようなのですが、異常な天候が続いて砂が洗い流されたり取り払われたりしたために明らかになったそうです。どうやらこの機体、現存するP-38の中では最古のものだとか。

詳細は以下の通り。
Shifting sands reveal World War Two fighter plane lost for 65 years | the Daily Mail

機体が発見されたのは北ウェールズの海岸、詳細な場所は明らかにはされていません。今年の7月ごろに海水浴に訪れた一家が発見しましたが、そのときは1950年代に空中射撃訓練で使われた無人機だと思われていたそうです。しかし、地元の飛行機好きの人が新聞写真を見てピンと来たのか、アメリカの航空歴史家に連絡を取り、製造番号やその他の記録から機体が確認されました。

飛行中のP-38を正面から

発見されたP-38は1941年製造の機体で、オランダやベルギーあたりで空戦任務に就くため1942年にイギリスに移動。パイロットは当時24歳のロバート・F・エリオット少尉でした。1942年9月27日、練習任務中に燃料不足に陥ったため、ウェールズの浜辺に不時着せざるを得なくなりました。浅瀬に胴体着陸を敢行し、翼端のウイングチップ(ウイングレット)を失ったものの、機体の大部分とエリオット少尉は無傷だったようです。しかし、10回以上の空戦をこなしたベテランパイロットのエリオット少尉は約3ヶ月後、チュニジア上空で撃墜され帰らぬ人となりました。遺体と搭乗機は見つかっていません。

エリオット少尉のおいで、30年近く叔父の生涯について調べているロバート・エリオットさん(64)は機体が見つかったという知らせに「これは歴史的発見で、とても感動的なことです」と語っています。

航空ショーでのP-38

by MHphotoworks

The International Group for Historic Aircraft Recovery(TIGHAR：歴史的航空機の発見・復元のための国際グループ)のリック・ギレスピー氏はP-38の回収ミッションを進行中。「アメリカ軍は機銃を撤去して、記録によれば機体を引き揚げたことになっているんですが、実際はできていないんです」とはギレスピー氏。「機体はじわじわ砂に覆われていって、65年間そこに静かに眠っていたのでしょう。戦時中は海岸は閉鎖されていたので、誰も飛行機があることを知らなかったようです。まるでスコットランドの話にあるブリガドーン(百年にたった一度だけ現れる不思議な村)みたいですね」とも語っています。

TIGHARはイギリスの専門家とも協力し、ほぼ無傷ながらももろい機体を翌春には回収する予定。ダックスフォード帝国戦争博物館や英国空軍博物館などが興味を示しているそうです。

P-38のシルエット

by Roger Smith Creative Commons

P-38 ライトニングはロッキード社が開発した戦闘機で、1941年から運用が開始され最終的に9942機が生産されました。速度性能を追求し、発動機を2基搭載した双発・双胴のスタイルを採用。ヨーロッパ戦線ではドイツ軍の傑作戦闘機フォッケウルフ Fw190と互角以上に戦い「双胴の悪魔」と呼ばれて恐れられました。太平洋戦線では、低空では零戦や隼に不覚をとることもあったものの、有利な戦法を確立することで終戦まで第一線で活躍、エースパイロットとしてリチャード・ボングが名を残しています。また、当時の連合艦隊司令長官山本五十六を撃墜死させた機体としても有名。

これがライバル機、フォッケウルフ Fw190。