読者を興奮させ興味をかき立てる「小説的な物語」を書くための重要な要素とは?
物語を創作する際には、キレイで練られた文章や構造だけではなく、読者を驚かせたりワクワクさせたりする要素も重要です。編集者から小説家に転身した作家のマルティン・ソラレス氏は「How to Draw a Novel(小説の描き方)」という著書の中で、読者の興味を引くような「小説的な物語」の特徴について、芸術的な文学と対比しながら解説しています。
Martín Solares on Creating Novelesque Excitement ‹ Literary Hub
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英語には「novel(小説)」という単語に「esque(~っぽい)」という接尾語を付けた「novelesque(ノベレスク)」という形容詞があります。ノベレスクは、「小説をほうふつとさせる文体」という意味があり、多くの場合は小説以外の伝記や学術書などが、小説のような読みやすさや面白みに満ちた書き方をされている場合や、物語的な小説を芸術的な文学作品と対比的に表現する際に用いられます。
20世紀後半にはマルセル・プルーストやフランツ・カフカ、ウィリアム・フォークナーといった、より詩に近い美しい文章で小説をつづる作家が登場しました。シカゴ大学の名誉教授で文学理論家のトーマス・パヴェル氏によると、20世紀後半の偉大な前任者をマネしようとして、「途方もなく退屈な本」が大量に生まれたそうです。一方で、当時にある程度流行していた冒険小説だけが文学的ではないノベレスクな小説と言えたため、人々は「ノベレスクは、地に足が着いていないフィクション作品」と認識するようになったとソラレス氏は述べています。
ソラレス氏はノベレスクについて、驚きや冒険、興味深い逸話に満ちたような、退屈や気晴らしとは遠い表現として強調しています。ソラレス氏によると、21世紀初頭のアメリカのテレビ番組は、本来の意味でのノベレスク、すなわち絶え間ない驚きや読者の興味を引きつける戦略を積極的に取り入れていたそうです。それにより、文学的あるいは美的な高尚さに傾倒していた小説についても、19世紀の冒険小説的なノベレスクに立ち返り、物語的に魅力的な小説が生まれていきました。
ソラレス氏が語るノベレスクの重要なポイントとは、文学的であるかどうかではなく、読者に「次に何が起こるのか?」という「燃えるような疑問」を定期的に引き起こす点にあります。
フィクション作品によって引き起こされる興味や感情について研究するラファエル・バローニ氏によると、ノベレスクな物語を読んでいる時に感じる緊張感も、巧妙に作られた狙いに従っており、その意味で「詩的な効果」と言えます。バローニ氏はノベレスクの特徴を、「ある陰謀がどのように解決されるのかを読者が待たなければならない時に緊張が高まり、この待ち時間こそが、大団円を読んだ時に激しい反応を引き起こす不確実性を持っています」と表現しました。
ただし、驚きや疑問を持たせる待ち時間などの重要な要素について、過去の魅力的な作品の体系を分析して機械的に模倣しても、うまくいくというわけではありません。あくまで自分の作品を表現した上で、その中でノベレスクの特徴を巧みに用いられるよう工夫することが重要だとソラレス氏は述べています。
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