メモ

「成人向けの音声作品を作ることで会話文が上手に書けるようになった」という体験談


作家やアーティストとしての創造性を発揮させるためには、歩きながらアイデアを出したり、あえて居心地の悪い環境にしたりと、さまざまな方法論が語られています。また、読書や映画を見るといった「他の創作をインプットする」という行為や、「普段とは違う創作に取り組む」といったチャレンジも新しい発見が得られるため重要ですが、「セクシーな音声コンテンツ(オーディオエロチカ)を作ることで、物語の会話を書く能力が上昇した」という体験談を、カリフォルニア州出身の作家であるセレーネ・ロス氏が語っています。

How Making Audio Erotica Helped Me Write Better Dialogue ‹ Literary Hub
https://lithub.com/how-making-audio-erotica-helped-me-write-better-dialogue/


ロス氏は約4年間にわたって、アダルト向けの音声作品であるオーディオエロチカの作成に協力していたと話しています。オーディオエロチカとは、出演する俳優が性行為時の声を含むセリフをマイクに向けて発し、その音声を物語に落とし込むというもの。俳優の音声の他、ベッドシーツが揺れる音や、服を脱いで床に落ちる音などの音響効果も必要で、時にはドアの音をそれと分かるように工夫するために作業時間の大部分を使うこともあったそうです。


音声作品には、効果音を録音するフォーリーサウンドという技術が重要で、実際に必要な効果音をそのまま録音する場合も、より分かりやすい音にするために他の方法で鳴らした音を別の効果音として用いる場合もあります。オーディオエロチカでは、そのような効果音と俳優の音声を10以上のテイクから最適なバージョンを選択し、正しい順序で整理してつなぎ合わせていく、という作業が必要になります。ロス氏はこのプロセスに何年も取り組んでいくことで、俳優が読み上げるセリフを説得力のあるものにするために、単語単位で調整する方法を取得していったとのこと。ロス氏はそれまで作家として会話を書く際に「自然主義を意識して、実際に読んだ時の言葉の詰まりや迷いを反映するようにしていました」と語っていますが、オーディオエロチカへの取り組みを通して、現実に即した文章が自然な会話文とはならないと気づいたそうです。

音声作品は音声のみで作品のすべてを届けるものであり、文字だけで物語を伝える小説と同様に絵や他の要素がなく、受け手の想像力に大きく依存します。そのため、会話が場違いで不自然に感じられると読者は違和感を覚えてしまい、また理解するのが面倒だったり不要だったりする会話が続くと、気が紛れることがないため退屈に感じてしまいます。そこで重要になるのは、人間の言葉を一言一句再現することではなく、キャラクターの考えをピックアップして提示することになります。

ロス氏は「本当の会話はごちゃごちゃしていて、秩序がなく、退屈なことがよくあります。そして、これらは真実で、避けられない性質かもしれませんが、ページ上では何もしません。私はこのリアリティを追求するあまりに、筋書きを進めてキャラクターの性質を明らかにし、物語上の対立を生み出していく、といったフィクションにおけるセリフの真の目的を無視していました」と述べ、重要なテクニックとして「会話を要約して実生活にあるやりとりを一部スキップする」「間接的な会話形式にして、キャラクターを関与させつつ会話を圧縮させる」ことを提案しています。


ロス氏は上手な会話の書き方として、以下のような例を示しています。まずは、会話の要約や間接的な会話というテクニックを用いない場合。

「今日は充実してましたか?」彼はギターを選びながら、壁に向かって言う。
「仕事だったから、まぁ、良かった」彼女は何かおかしなことを言ったかのように笑って答えた。
「いや、そうですね、ちょっと。基本的に、私は助けが必要な顧客や、アプリで問題を抱えている顧客を支援しています」彼が振り向くと、彼女はコートを着たままスツールにしっかりと腰掛けていました。


同じ内容の会話に、リアリティを重視して入れた表現を省略したり、カギ括弧を用いた直接の会話文ではなく間接的な会話文にしたりといった、テクニックを適用したものが以下になります。

彼はギターを選びながら、壁に向かって彼女の一日がどうだったか尋ねた。彼女は大丈夫だったと応え、自分の仕事についてアプリや顧客の説明をし始める。彼が振り返ると、コートを着たまま椅子にしっかりと腰掛けている彼女を見つけた。
「アプリ?」


このようなテクニックを用いると、時間を無駄にすることなくキャラクターが会話を続けているという印象を与えつつ、退屈な会話の往復を効果的に減らすことができるとロス氏は述べています。ロス氏はこれの重要性を、現実を表現しつつも物語であることを裏切らないように音声を収録する「フォーリーサウンド」を通して、強く認識したとのこと。ロス氏は「フォーリーサウンドでは、重要な効果音を実際よりも大きくしますが、人工的に感じられるほど大きくはしてはいけません。会話も同様に、キャラクターが実際に会話しているところを頭に浮かべてそのまま反映するのではなく、音声作品の効果音を撮影する時のように、直接入力するよりも適した方法があります」と述べています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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