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40年大学教授を務めた学者が辞職して小説を書き始めた理由とは?


大学教授からミステリー作家に転身したH・N・ハーシュ氏が、「40年務めた大学教授を辞職して小説を書き始めた理由」として、創作の意義や魅力について語っています。

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ハーシュ氏は憲法と法学、現代政治理論、ジェンダーとセクシュアリティを専門分野として研究および講義を実施していました。オーバリン大学の名誉教授であるハーシュ氏は、ハーバード大学では法学研究プログラムの代表を務めたり、マカレスター・カレッジやカリフォルニア大学サンディエゴ校では政治学部の学部長を務めたりと、大学教授および研究者として40年以上のキャリアを積んでいました。しかしハーシュ氏は2020年に、ミステリー作家になるために大学教授のキャリアを退職。その際に、学者の同僚や友人は「本気で言っているの?」と疑いの視線をハーシュ氏に向けたとのこと。

ハーシュ氏は大学教授からミステリー作家に転身した理由として、大きく分けて2つの理由を挙げています。1つ目は、研究や大学の講義で伝えていたLGBTについて、創作の中で長い時間をじっくり描写したいという願望があった点。ハーシュ氏はジェンダーとセクシュアリティを専門に研究をしており、ハーシュ氏がリリースしたミステリー作品も、「ゲイの探偵コンビ」がメインになっています。


2022年に出版された1作目の「Shade」は1985年を舞台としており、2作目の「Fault Line」は1989年、出版準備中の「Rain」は1994年、制作中の4作目は2004年が舞台になっています。この期間、ゲイのコミュニティはエイズ危機の真っ最中だったり、米軍の中でセクシュアリティについて発見または暴露することを禁止する取り組みがあったり、地域によっては同性婚が認められたりと、さまざまな変化がありました。「この期間におけるゲイ男性の主観を本質的にとらえるには、フィクションが最良の方法だと私は感じていました。フィクションは、従来の学問では一般的に表現されていない方法で、感情や憧れ、後悔、野心や展望を表現することができます」とハーシュ氏は述べています。


ハーシュ氏は創作を始めた2つ目の理由として、「アメリカの学問生活の硬直性に挑戦すること」を目的として挙げました。ハーシュ氏によると、アメリカの大学では「新しい」知識を発見し、その知識を書籍や記事にして出版・共有することが前提となっているとのこと。しかし、分野によっては発見ではなく解釈と批判が課題となる学問もあり、その場合は真に新しいことを言うのは難しく、ハーシュ氏の分野においても学術論文を1本書くのに10年かかってしまったそうです。一部の学者はオリジナリティを出すために解読が不可能なほど難解な言葉や文章で書くこともあり、その結果として多くの場合、少数の専門家だけが読む記事や、ほとんど読まれずホコリをかぶっていく本が生まれるとハーシュ氏は指摘しています。

ハーシュ氏は学問を重んじる意思があったからこそ、異なる種類の創造性を求めて、創作を選択しました。また、ハーシュ氏の専門分野には政治や法制度、刑事手続きなどの知識が含まれていたため、それがミステリーに活かせたら面白そうという思いもあったそうです。

学術的な本や論文にはついていけなかったり興味を持てなかったりする読者でも、フィクション作品はほぼ問題なく楽しむことができます。また、フィクションには学術的な真実とは異なる形で真実があり、読者に一生残るほどの影響を与えることもあるはず。「どれほどの学術研究が、人気な小説ほどに見事な議論を伝えることができるでしょうか。研究や論文はすべて有効で有用ですが、多くの人には小説の方がより伝わります。私の学術論文がもはや意味をなさないようになったとしても、キャラクターたちは作品の中で生き続けていく。だから私は、フィクションに取り組みつづけます」とハーシュ氏は語っています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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