画像生成AI「Stable Diffusion」の開発元・Stability AIで幹部やエンジニアが相次いで辞任、CEOのリーダーシップが問われる
画像生成AI「Stable Diffusion」などの開発で知られるAIスタートアップ「Stability AI」が、競合他社の発展や主要幹部やエンジニアの相次ぐ辞任によって、開発資金の調達に苦しんでいることが報じられています。
Stability AI’s Lead Threatened by Departures, Concerns Over CEO - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-08-08/stability-ai-s-lead-threatened-by-departures-concerns-over-ceo
Turmoil Threatens Stability AI’s Leadership Amid CEO Concerns – Cryptopolitan
https://www.cryptopolitan.com/turmoil-threatens-stability-ais-leadership/
イギリスのロンドンとアメリカのロスアルトスを拠点とするAIスタートアップであるStability AIは、入力されたプロンプトに基づいて画像を生成できるAIモデル「Stable Diffusion」を一般公開し、注目を集めました。Stable Diffusionのリリース後、Stability AIには1億ドル(約140億円)以上の投資が集まり、GoogleやAmazon、Adobeなどのテクノロジー企業からエンジニアや科学者を引き抜いてさらなるAI関連製品の開発が進められました。
しかし、「Midjourney」や「Adobe Firefly」などの画像生成AIを展開する競合他社との激しい開発競争に直面する中で、Stability AIではさまざまな問題が浮上し、画像生成AI分野における優位性は失われていきました。
2023年3月以降、Stability AIでは最高執行責任者の伊藤錬氏や研究責任者のデビッド・ハ氏を含む、少なくとも6人の上級幹部が相次いで辞任しています。複数の上級幹部の辞任について、Stability AIの共同創設者であるエマド・モスタク氏は「どのような企業においても社員の辞職はつきものです」と述べ「従業員と企業の間に、文化的なフィット感がない場合、離職は起こり得ます」と語っていました。
モスタク氏の楽観的な反応に対してStability AIの社員や元従業員からは冷ややかな目線が向けられており、ハ氏は「モスタク氏は他の従業員が理解していないアイデアを執念深く追及することがあり、Stability AIが何を目指しているのか、そのアイデアをどのように達成しようとしているのかを正確に把握することが困難でした」と批判しています。匿名の元従業員は「Stability AIの企業文化は非常に秘密主義的で、その結果企業構造が混乱しており、どのチームがどの作業を行うかについてのコミュニケーションがほとんど行われていませんでした」と語っています。
モスタク氏に対しては、共同創設者のサイデラ・ホデス氏が「680億円以上の価値に相当するStability AIの株式をわずか2万円以下でだまし取られた」と主張し、モスタク氏を訴えたことが報じられています。
680億円分以上になる株式を2万円以下でだまし取られたとしてStable Diffusion開発元のStability AIを共同創業者が訴える - GIGAZINE
また、海外メディアのForbesがモスタク氏について「誇張の歴史がある」と批判する記事を公開。一方でモスタク氏は自身のブログ上で批判報道に対する反論を公開しています。
画像生成AI「Stable Diffusion」開発元のCEOは大嘘つきと批判する報道に本人が猛反論するブログを公開 - GIGAZINE
モスタク氏に対する批判が相次ぐ一方で、Stability AIの元副社長であるクリスチャン・カントレル氏は「多くの人がモスタク氏に対して疑念を抱いていることは理解しています。しかし、彼は信じられないほど知的で温かい人柄です」と述べ、モスタク氏のスタイルや経営手腕について擁護しています。
しかし、Stability AIでは希望する40億ドル(約5700億円)の評価額での資金調達に失敗したことが報じられたほか、別の生成AI企業に対して7万ドル(約1000万円)を期限内に全額支払っていないことが報じられるなど、資金調達に苦労していることが伝えられています。
そんな中、Stable Diffusionという革新的な画像生成AIをリリースしたStability AIは、収益性の高いベンチャー起業へと転換しようとしています。ハ氏は「競合他社が発展する中で、画像生成AI分野でさらなる成功を遂げるためには、独自のニッチを見つけることが重要です」と提言しています。
Stability AIのピーター・オドノヒューCFOは「スタートアップの環境は誰にでも合うわけではありません」と述べつつも、「我々はこれまでに多くの素晴らしい才能の持ち主を迎え入れてきました。彼らは懸命に働き、混迷を極めるStability AIに秩序をもたらそうとしてくれています」と述べています。
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