メモ

680億円分以上になる株式を2万円以下でだまし取られたとしてStable Diffusion開発元のStability AIを共同創業者が訴える


画像生成AI「Stable Diffusion」の開発元であるStability AIの共同創業者が、Stability AIおよびその共同創業者兼CEOを訴えました。原告はStability AIがさほど有名ではなかった時期に同社の株式をすべて売却しましたが、この判断はStability AIのCEOから受けた虚偽の説明によるものだったと主張しました。

Case 3:23-cv-03481 Document 1 Filed 07/13/23
(PDFファイル)https://assets.bwbx.io/documents/users/iqjWHBFdfxIU/rDlbbQW5zCKk/v0


Stability AI co-founder says he was tricked into selling stake for $100 | Semafor
https://www.semafor.com/article/07/13/2023/stability-ai-co-founder-says-he-was-tricked-into-selling-stake-for-100

原告のサイデラ・ホデス氏は、2021年10月と2022年5月の2回の取引で、Stability AIの株式15%を別の共同創業者兼CEOであるエマド・モスタク氏にわずか100ドル(約1万3700円)で売却しました。

しかし、その後2022年8月にStability AIは大規模な資金調達を行ってベンチャーキャピタルから1億100万ドル(約138億8000万円)を獲得し、画像生成AIの分野で一世を風靡(ふうび)する新進気鋭の企業として躍進することに成功。記事作成時点でStability AIは40億ドル(約5500億円)の評価額で資金調達を行おうとしており、この額で換算すると、ホデス氏が売却した株式の市場価値は5億ドル(約687億2000万円)を超えていたはずでした。


ホデス氏が株式を売却した当時、Stability AIは資金難で倒産寸前の状態にあり、ホデス氏が取り組んでいたプロジェクトが破綻した直後でもあったことから、ホデス氏はStability AIに対して不信感を抱いていたそうです。しかし、その裏ではモスタク氏の手でベンチャーキャピタルとの話し合いが行われ、「テキストから画像を生成する」という新しいビジネス計画が立てられるなど、同社の経営回復を図る取り組みが着々と進められていました。

ただ、モスタク氏は上記の計画をホデス氏に伝えることはせず、代わりに「当社は気候変動に取り組んでおり、この新しいビジネスモデルから利益を得ることはなく、主に非営利の研究機関と協力して行う」と述べていたとのこと。モスタク氏の言葉を信じたホデス氏はそこでStability AIを見限り、株式の売却を決定しました。


Stability AIは設立当初から「テキストから画像を生成する」というプロジェクトに取り組んでいたわけではありませんでした。元ヘッジファンドの従業員であるモスタク氏により2019年に設立されたStability AIは、アラブ首長国連邦人工知能担当大臣の元顧問でハーバード大学のAIプログラム・ディレクターだったホデス氏とともに、生成AIを複数のユースケースに活用するための計画をいくつか立案します。

計画は、世界の石油市場を安定させるためにAIの力を活用するものであったり、AIの力を利用して宗教的寛容を促進し、宗教間の憎しみを和らげて中東の政治を安定させるというものだったりとさまざまでした。このうちいくつかのプロジェクトは、ホデス氏の助力によってサウジアラビアの政治ファンドとの会談が成功したり、AIに関心を持つ政府・金融界のリーダーたちから信頼を得たりするなど、ビジネスとしてはうまくいっていたとのこと。

最終的に結実したのは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関する有用なデータを公的機関に提供することを目的とした「Collective and Augmented Intelligence Against Covid-19(CAIAC)」というプロジェクトでした。このプロジェクトは2020年3月に発足し、モスタク氏監督の下、ホデス氏が開発の中心となって進められました。


訴状では、ホデス氏は約18カ月間フルタイムで働いてCAIACに取り組み、会社の経費を賄うために1万5000ドル(約200万円)以上の私費を費やしたとつづられています。しかし、ホデス氏の努力が実ることはなく、CAIACは大幅に遅れてほとんど失敗に終わってしまったとのこと。ホデス氏はこの点について「モスタク氏の職務怠慢、無能、および主要な従業員に対する透明性の欠如」が原因とし、ホデス氏を含む従業員は最低限の報酬しか受け取ることができなかったと主張。プロジェクトに関わったさまざまな利害関係者がモスタク氏とStability AIに対する信頼を失うことになったと述べています。

さらにホデス氏はモスタク氏について「家賃を支払うために会社の資金を横領していた」「以前関わっていたベンチャー企業で長い間投資家を騙していた」とも主張。加えて、CAIACプロジェクトがうまくいかなかったのはモスタク氏が資金とリソースを別のプロジェクト、すなわちStable Diffusionに割いていたからだと訴え、モスタク氏の不正行為に起因する損害賠償請求を認めることを求めて、カリフォルニア州北部地区連邦裁判所に訴状を提出しました。


ホデス氏の弁護を担当するアヴィ・ワイツマン弁護士は「モスタク氏がわずか100ドルで株式を購入したことは、貪欲企業の最たるものであり、良心を揺さぶるものである。これらの取引は取り消されるべきであり、ホデス氏のStability AIに対する株式所有権は回復されるべきである」と指摘。モスタク氏がメッセージの履歴を削除して証拠隠滅を図ったとの疑惑を突き、今後の裁判を進める方針を示しています。

なお、Stability AIの広報担当者は書面により「我々は、積極的に我々の立場を守る」と述べたとのことです。

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in Posted by log1p_kr

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