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Apple製品の修理代が高すぎる問題を解決するべく求められる「修理する権利」とは?


電子機器メーカーは「はがすと保証が無効となるシール」などを自社製品にはることで自社製品の修理に独自の制限をかけるケースがありますが、公式の修理サービスしか使用できなくなると修理代が不当に高額になるケースがあるため、近年はユーザーや修理業者から「修理する権利」を求める声が世界中広がっています。そんな中、ガジェット関連ジャーナリストのジョアンナ・スターン氏がMacBookを修理する場合を例に、修理する権利の必要性を解説しています。

How the ‘Right to Repair’ Might Save Your Gadgets—and Save You Money - WSJ
https://www.wsj.com/articles/how-the-right-to-repair-might-save-your-gadgetsand-save-you-money-11630324800

Apple Store vs. Repair Shop: What the Right to Repair Is All About | WSJ - YouTube


Appleが公開している2021年の(PDFファイル)カーボンニュートラル進捗報告書には、「修理が必要になった場合、ユーザーは安全で信頼された修理サービスを利用できます」と記されています。


しかし実際にはAppleがユーザーに対して自由な修理の権利を保障しているとはいえません。そのため、Appleを含む電子機器メーカーがユーザーの修理する機会を奪っているとする報告が発表されたり、メーカーに対して修理に必要な情報の開示を求める法律の制定が進んだりしています。


これらの動きは、簡単にまとめると修理する権利を求めるものです。


スターン氏は実際に2台のMacBookの修理見積もりを行い、修理する権利の必要性を訴えています。修理見積もりに出される機種は、1台目が2017年に1400ドル(約15万5000円)で購入したMacBook Proで……


2台目が2020年に1100ドル(約12万1000円)で購入したMacBook Airです。この2台のMacBookは共に水没によって起動しなくなったとのこと。


まずは、2台のMacBookをApple Storeに持ち込んで、修理代金の見積もりを行います。


見積もりの結果MacBook Airの修理代は799ドル(約8万8000円)で……


MacBook Proの修理代は999ドル(約11万円)でした。また、どちらの機種もApple Storeの店員は修理よりも新品への買い替えを推奨してきたとのこと。


次に、スターン氏はAppleの正規サービスプロバイダであるMike's Tech Shopに2台のMacBookを持ち込みました。


見積もりの結果、MacBook Airの修理代は870ドル(約9万6000円)で……


MacBook Proの修理代は1170ドル(約12万900円)と、両機種ともAppleでの修理代よりも高い価格が提示されました。スターン氏によると、これらの正規サービスプロバイダーでは、ユーザーから修理する機器を受け取った後にAppleの工場へ発送する作業が発生するため、その手数料で修理代が高くなるとのこと。


また、Apple StoreとMike's Tech Shopでは修理に5~7日かかると告げられました。


スターン氏は次に、独自の修理サービスを行うRossmann Repair Groupの店舗へMacBookを持ち込みました。


Rossmann Repair Groupの設立者であるルイ・ロスマン氏は修理する権利の必要性を訴える活動家として知られており、ロスマン氏のYouTubeチャンネルにはApple製品の修理方法の解説ムービーや修理する権利を啓蒙するムービーが投稿されています。


Rossmann Repair GroupでのMacBook Proの修理代見積もり結果は325ドル(約3万6000円)でした。


しかし、MacBook Airは部品の不足によって修理不可とされてしまいました。


続いてスターン氏は同じく独自の修理サービスを提供しているSimpleMacに2台のMacBookを持ち込みました。ここでのMacBook Proの修理代は500ドル(約5万5000円)で……


MacBook AirはRossmann Repair Groupと同じく部品不足によって修理不可と診断されました。


スターン氏は「Appleで999ドル支払って修理するのと、修理屋で325ドル支払って修理するのでは、どちらがいいですか?」と問いかけています。


見積もりの後、スターン氏は実際にRossmann Repair Groupに修理を依頼しました。修理を担当するのはロスマン氏です。


まずは、MacBook Proの修理に取り掛かります。


ロジックボードの中に水没によって腐食した部分を発見しました。


今回スターン氏がMacBook Proを修理できたことには2つの理由があります。1つ目の理由は交換用の部品をRossmann Repair Groupが確保していること。


例えば今回は、交換用のロジックボードを使いました。交換用の部品は廃棄されるMacBookから回収されるとのこと。


そして2つ目の理由は、Rossmann Repair Groupが回路図やボードの詳細情報を持っていることです。


この回路図やボードの詳細情報はAppleから公式に開示されたものではなく、Appleの内部で働く人物やサプライチェーンから流出したものとのこと。


実際にMacBook Proの修理に用いられた回路図では、回路図の情報がAppleに属することが明言されています。


Appleはこのような部品や情報の開示先を正規サービスプロバイダーに限定しています。


そのため部品や設計図の確保に成功したMacBook Proは起動できる状態に修理できましたが……


同じく水没によってロジックボードの交換が必要になったMacBook Airは部品・回路図共に確保できていないため、修理できませんでした。


結局、スターン氏はMacBook AirをApple Storeに再度持ち込んで修理を依頼したとのこと。


ムービーの中で、ロスマン氏は「Appleには、修理に必要な回路図や部品を修理業者に提供することを求めます」と語り、修理する権利の確立を求めています。


上述の通りに、Apple製品などの電子機器を公式修理サービスで修理すると修理代金が高額になるケースがよくありますが、iPhoneの分解報告で知られるiFixitの工具などを使えば、さまざまな電子機器を分解して自己責任で修理することができます。実際にGIGAZINE編集部でもiFixitの工具を使ってiPadを修理したり、PlayStation 5を分解したりXbox Series Xを分解したりしています。

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in ハードウェア,   動画, Posted by log1o_hf

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