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「修理する権利」を求めて戦い続ける1人の男性


修理する権利」とはPCやスマートフォン、自動車といった製品の購入者が、メーカーの修理サービスを通さずに自身の手で製品を修理する権利のことです。そんな修理する権利を求める運動の中心人物であるルイス・ロスマン氏について、コロンビア大学ジャーナリズム大学院が発行するメディアの「Columbia News Service」が報じています。

One Man’s Fight for the Right to Repair Broken MacBooks - Columbia News Service
https://columbianewsservice.com/2021/05/21/one-mans-fight-for-the-right-to-repair-broken-macbooks/

電子機器や自動車といった分野では長年にわたり、メーカー側が製品の修理を独占するか、特定の修理業者のみが製品を修理できるという状態が一般的です。これについて修理する権利の擁護者らは、「Appleのような企業は修理から独占を生み出し、デバイスに問題が発生した時に顧客が直接戻ってくるという金銭的なインセンティブを持っています」と述べて非難しています。製品修理をメーカーが独占することにより、非常に高い費用を請求したり新製品の購入を促したりすることも可能となるとのこと。


近年では修理する権利を求める声が高まっており、2020年11月3日にはアメリカのマサチューセッツ州で消費者が自分の自動車を自分で修理する権利を規定した「2020年マサチューセッツ州修理権イニシアチブ」が可決されました。また、2021年3月にはAppleの純正部品を使った製品修理を正規サービスプロバイダ以外でも可能にする「Independent Repair Provider プログラム」が、世界各国で展開され始めました

一方、アメリカ各州で検討された「修理する権利」法案が成立するのを阻止するため、AppleやMicrosoft、Amazon、Googleといったハイテク大手がロビイストを送りこんでいることもBloombergによって報じられています。

Microsoft and Apple Wage War on Gadget Right-to-Repair Laws - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-05-20/microsoft-and-apple-wage-war-on-gadget-right-to-repair-laws


ニューヨーク市・マンハッタンで未認可のApple製品修理サービス「Rossmann Repair Group」を展開するルイス・ロスマン氏は、修理する権利を求める活動の中心人物の1人です。記事作成時点で32歳であるロスマン氏は、まだ学生だった2008年の時に壊れたMacBookをeBayで購入し、修理して販売することを始めたとのこと。それまでは最低賃金のアルバイトで月数万円のお金を稼いでいたロスマン氏にとって、わずかな時間で数万円の稼ぎが得られるApple製品の修理は割がいい仕事だったそうです。

その後、ロスマン氏は中古で買ったApple製品を自分で壊したり直したりすることで修理業者としての腕を磨き、2012年にRossmann Repair Groupをオープンしました。そして同じ頃からYouTubeへの投稿を始め、記事作成時点では150万人もの登録者数を抱えるほどのYouTubeチャンネルに成長させました。

ロスマン氏は修理する権利について訴える動画のほか、雑談や製品修理とは関係ないトピックについての動画も雑多に投稿しています。投稿する動画を修理する権利に関するものだけにしない理由について、ロスマン氏は「私は視聴者に、まるでホームコメディやドラマをフォローしているように感じてもらい、紆余曲折や悩みを経たある時点で、彼ら自身に修理する権利について『自分には何ができるだろうか』と考えてもらいたいのです」と述べています。


修理する権利を推進している消費者団体のThe Repair Associationは、マサチューセッツ州における自動車修理の権利法案に触発され、25以上の州で「修理する権利」の関連法案を提出しています。理想としては「2020年マサチューセッツ州修理権イニシアチブ」のように住民による直接投票を行いたいそうですが、これには多額の選挙費用がかかるとのこと。

The Repair Associationにはこれほどの選挙費用をまかなう資金がありませんが、ロスマン氏はRepair Group Preservation Action Fundという社会福祉団体を設立し、マサチューセッツ州における住民投票へ向けた資金集めを始めました。記事作成時点では、目標である600万ドル(約6億5000万円)のうち70万ドル(約7600万円)ほどしか集められていないとのことで、法案に賛成する億万長者の後援が得られるかどうかがカギになるとみられています。

ロスマン氏は、マサチューセッツ州における住民投票請願書の提出期限である2021年8月までに十分な資金を集められた場合、実際に住民投票を請願して2022年の投票に向けたキャンペーンを行う予定だそうです。もし選挙に負けた場合、ロスマン氏は「家に帰ってサザンカンフォート」を飲み干すでしょう」と冗談めかして語っています。


修理する権利を求めて非常に精力的に活動するロスマン氏ですが、Rossmann Repair Groupの最高執行責任者(COO)であるSteve Younis氏によると、ロスマン氏は非常に寛大な性格だとのこと。店に訪れたものの手持ちのお金がない顧客に対しては、ロスマン氏は必要な機材だけを提供し、後は自分で修理する方法を解説したYouTube動画を見るように指示することもあるそうです。「ルイスを駆り立てているのは、人々が自分のデバイスをコントロールできるようにすることです」と、Younis氏は述べました。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by log1h_ik

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