AppleはユーザーがApple製品を「修理する権利」を認める方向だと内部文書から判明

by Wapster

Appleは故障したApple製品を修理できる業者を、「認定サービスプロバイダ」として登録されたApple Storeおよび代理店に制限しています。その一方で、「誰でも自分が持つ製品を修理する権利がある」と主張する動きも拡大しており、「入手したAppleの内部文書から判断すると、Appleは修理する権利を認めていく方針だ」とテクノロジー系メディアのMotherboardが報じています。

Internal Documents Show Apple Is Capable of Implementing Right to Repair Legislation - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/d3mqna/internal-documents-show-apple-is-capable-of-implementing-right-to-repair-legislation

Appleは2018年4月付で、「Apple Genuine Parts Repair(Apple純正部品修理)」と題した社内プレゼンテーションを行ったそうで、Motherboardはこのプレゼンテーション資料を入手しました。プレゼンテーションの中で、Appleは独立した修理業者に対しApple製品の診断ソフトウェア、さまざまなAppleの純正修理部品、修理方法のトレーニングといったサービスの提供を行うとしています。

独立した修理業者に対するこれらの対応は、修理する権利を認めるように求める活動家らが要求するものとほぼ同じです。最新ガジェットを分解して修理に関連する情報を公開する「iFixit」のCEOであるKyle Wiens氏は、「この動きは修理する権利の枠組みに従うものです。今のところAppleは巨大なチェーンにしか修理関連のサービスを提供していませんが、Appleは全ての修理業者に対して同等のサービスを提供可能でしょう」と、Motherboardに対して語りました。

多くのテクノロジー企業は外部の独立した業者や消費者の修理する権利を制限することで、デバイスを修理する権利を自らの手に収めようとしています。しかし、近年では修理する権利を消費者の手に取り戻そうとする動きが活発化しており、アメリカでは複数の州で消費者の修理する権利を保護する法案が導入されているとのこと。

誰でも全ての機器を「修理する権利」を法律レベルで永久的に認めさせる動きが進行中 - GIGAZINE

その一方でAppleのような巨大企業は修理する権利の拡大を防ぐため、さまざまなロビー活動を展開してきました。ネブラスカ州ではAppleのロビイストが「人々が購入した製品を修理する権利を認めれば、その地域はハッカーのメッカになってしまう」と話したほか、修理する権利の拡大は消費者の安全やセキュリティを脅かし、イノベーションを阻害するといった主張を行っていました。

しかし、入手した社内プレゼンテーション資料を見る限り、Appleは修理する権利を認める方針を持っているようだとMotherboardは述べています。どの業者に対して修理サービスを提供するのかといった具体的な内容までは判明していませんが、3700を超える正規サービスプロバイダに加え、アメリカ国内やイギリス、ドバイなどの修理業者はすでにApple診断ツールへのアクセスを得ているとのこと。

このプレゼンテーションで主張されている内容は、以前からAppleが提供していた「認定サービスプロバイダ」へのサービスとは違うものだそうです。認定サービスプロバイダは特定のタイプの修理しか行うことができず、許可されていない修理が必要な場合はAppleに製品を送る必要がありましたが、今回の取り組みは全てのタイプの修理を業者側で行うことが可能となっています。

by Ryan Ozawa

消費者権利団体であるUS PIRGのリーダーであるNathan Proctor氏は、「Appleが修理する権利を拡大しようとしていることは、より広範な修理する権利の拡大につながり、人々の活動がAppleの方針を変えたという証明となります」と述べました。

その一方で、確かにAppleが修理する権利について譲歩しているものの、依然として消費者の修理する権利は制限されたままだという主張もあります。Wiens氏は「Appleの対応は、国民からの圧力を軽減するための試みです」と語ったほか、Proctor氏も「いまだに消費者が自身の購入した製品を修理する自由は得られていません」と指摘。今後も修理する権利を求める活動は続けられる見込みです。