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Facebookが「政治広告の可視化を図る研究ツール」を削除するよう研究者に要求

by Spencer E Holtaway

2016年のアメリカ大統領選ではSNSのフェイクニュースが大きな影響を与えたとみられていることから、2020年11月のアメリカ大統領選を前に、さまざまな取り組みが実施されています。ニューヨーク大学の研究者はFacebook上の政治広告が誰をターゲットとし、どのように表示されているかを可視化するツールを開発しましたが、Facebookは「ツールを無効化し収集した情報を削除するように」と研究者に要求しているとして、大きな非難を浴びています。

Facebook Seeks Shutdown of NYU Research Project Into Political Ad Targeting - WSJ
https://www.wsj.com/articles/facebook-seeks-shutdown-of-nyu-research-project-into-political-ad-targeting-11603488533


Facebook demands academics disable ad-targeting data tool
https://apnews.com/article/media-social-media-76247e67b19ca0cd77f2732f84f489d5


2020年10月23日、ウォール・ストリート・ジャーナルはニューヨーク大学の研究者らが作成したツール「Ad Observer」をFacebookが禁止しようとしていることを報じました。Ad ObserverはGoogle Chrome拡張機能Firefoxアドオンが公開されており、研究のボランティアがAd Observerをブラウザに追加することで、Facebook上で表示される政治広告の情報が研究者のもとに送信され、どのような政治広告や偽情報が出回っているのかを確認できるようになります。研究チームの一人であるデーモン・マッコイ氏は、Ad Observerにより「Facebookがプロファイルしたデータを広告主がどのように使用しているのか」や「選挙に影響を与えたり有権者を抑圧したりするための、候補者や政策に関する誤情報がどのように送信されているか」が明らかになるとのこと。

Ad Observer - Ad Observer
https://adobserver.org/


研究者によって収集された情報は以下のページで公開されています。

Ad Observatory by NYU Tandon School of Engineering
https://adobservatory.org/


研究者がツールを公開したのは9月3日ですが、10月16日にFacebook役員のアリソン・ヘンドリックス氏は研究者に対し、ツールを無効にし収集した情報を削除するように書簡を送りました。ヘンドリックス氏によると、Ad Observerは「Facebook上の情報を自動収集することを禁じる規約」に違反するとのこと。11月30日までにAd Observerが無効にされなかった場合、Facebookは「さらなるアクションをとる」と伝えています。

Facebookの行動に対しては反発の声が多く上がっています。弁護士のラムヤ・クリシュナ氏は「アメリカ史上もっとも重要な選挙の1つである今回の選挙において、偽情報を摘発するためのツールをFacebookが削除しようとしていることは問題です。政治広告の表示状況や、自分がそのターゲットになっているのかについて、人々は知る権利があります。Facebookは私たちの民主主義を守る情報のゲートキーパーになるべきではありません」と述べました。

またジャーナリストのジュリア・アングウィン氏も「ニューヨーク大学のAd Observatoryは、Facebook上の政治広告に関して、研究者が情報のマイクロターゲティングを確認できる唯一の方法です。Facebookがこれを削除しようとしていることには大いに失望しました」とTwitterに投稿しています。

The NYU Ad Observatory is the only window researchers have to see microtargeting information about political ads on Facebook.

Very disappointing to see that Facebook is trying to shut that down. https://t.co/WDEPmvlQBG

— Julia Angwin (@JuliaAngwin)


Facebookは以前から研究者が自社のプラットフォームにアクセスすることを制限してきました。2019年には研究者200人が公益のために研究者がプラットフォームからデータを自動収集することを可能にすべきだと書簡を送っています。

Call on Facebook to lift restrictions on digital research and journalism on its platform
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScLcoINv_uMedadkMvp4ZUSLmayCLQZPKQcbiV1cnGXtpy_4Q/viewform


なお、Facebookも2020年11月のアメリカ大統領選挙に関して混乱が起こるリスクを懸念しており、マーク・ザッカーバーグCEOは「少なくとも何らかの暴力が起こる潜在的可能性があります」と述べています。このため、Facebookでは大統領選の1週間前は政治広告をブロックすることも発表されています。

これに加え、Facebookは投稿の拡散速度を低速にしたり、ニュースフィードのアルゴリズムを変更したり、削除対象のコンテンツを定めるルールを変更したりといった、新たな戦略を取ることを計画しているとのこと。Facebookは国連から「ミャンマー国内でロヒンギャへの差別意識が膨らむ温床となっている」と指摘された過去を持ち、これらの戦略はミャンマーを含むいわゆる「リスクある国」で使用されたものとなっています。

Facebook Prepares Measures for Possible Election Unrest - WSJ
https://www.wsj.com/articles/facebook-prepares-measures-for-possible-election-unrest-11603651659


Facebook reportedly bracing for US election chaos with tools designed for ‘at-risk’ countries - The Verge
https://www.theverge.com/2020/10/25/21533352/facebook-us-election-chaos-at-risk-countries-trump

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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