Facebookでワクチン反対派が優勢な傾向にある理由とは?
病気治療のためのワクチン接種を否定するワクチン反対派のコミュニティが、Facebookにおいて規模を拡大しつつあります。ジョージワシントン大学の物理学者であるニール・ジョンソン氏らの研究チームによって、Facebookにおけるワクチン反対派の規模や、反対派がどのように増加していったのかが報告されています。
The online competition between pro- and anti-vaccination views | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2281-1
ワクチン反対派の人々は新型コロナウイルス感染症に対して「言われているほど危険ではない」「日常生活の中で感染リスクを下げられる」といった考えを示すだけでなく、中には「5Gが原因で流行が広まった」といった陰謀論を唱えるコミュニティも存在しています。
ジョンソン氏は、Facebookユーザー約1億人分の投稿を分析し、各ユーザーがワクチンに対してどのような考えを持っているかを調査しました。なお、ジョンソン氏らの調査は2019年2月~2019年10月に行われたものであり、新型コロナウイルスの症例が確認された2019年11月以前のデータとなっています。
以下の図は、コミュニティを点、コミュニティのメンバー数を点の大きさ、調査期間中に生まれたコミュニティのつながりは線で表されています。赤はワクチン反対派、青はワクチン賛成派、緑は中立派のコミュニティで示され、それぞれのコミュニティの関連が強いほど、点の距離が近くなっています。図を見ると、反対派側に中立派のコミュニティが偏っているのが分かります。
上記の図について、反対派のコミュニティとつながりを前面に表示したのが以下の図。コミュニティは大きく3つの集まりに分けられ、最も大きなコミュニティの集まりに反対派が集中しているのが分かります。また、反対派のコミュニティは一カ所に集中しており、それぞれが密接な関わりを持っていることが示唆されています。
以下の図は賛成派のコミュニティを前面に表したものです。最も大きなコミュニティの集まりには賛成派が少なく、コミュニティも小規模。さらに、賛成派は集まりが2つに分かれていることから、各コミュニティの交流が反対派と比較して希薄であるとも推測されています。
以下の表はそれぞれのコミュニティの人数を表したもの。ワクチン反対派(Anti-vaccination)のユーザーはおよそ420万人で、ユーザー数ではワクチン賛成派(Pro-vaccination)の数、690万人を下回っていました。しかし、コミュニティの数はワクチン反対派が317、ワクチン賛成派が124と、反対派が2倍以上のコミュニティを形成。中立派は7410万人と圧倒的に多いため、中立派と反対派のコミュニティが密接にある状況が続けば、より多くのユーザーがワクチン反対派に流れる可能性があります。
ジョンソン氏らは、中立派が反対派に偏っている原因として、まず反対派の広報活動を挙げています。反対派はワクチンの危険性や陰謀論を含んだ投稿で不安をあおり、代替医療を提案することで中立派を引きつけているとのこと。また、コミュニティの多さも反対派を増やす原因であるとジョンソン氏は指摘。コミュニティの多さは、参加窓口の多さでもあり、情報の拡散しやすさにもつながります。
さらにFacebookでは、少数のコミュニティによって反ワクチンを訴える広告が数多く表示されていました。どのような団体によって反ワクチンの広告が広められていたのかは、以下の記事を見るとよく分かります。
反ワクチン派がFacebookに表示した広告の54%はたった2つの団体が広告主になっていた - GIGAZINE
また、2019年2月~2019年10月の調査期間はアメリカではしかが流行した時期であり、はしかの流行によりワクチン反対派の活動が活発になった結果、反対派が増加したともジョンソン氏らは推測しています。実際、はしかの流行によって一部の反対派コミュニティは、最大で3倍近くユーザーを増やしました。一方で賛成派のコミュニティは、はしかの流行前後でコミュニティのユーザー数に大きな変化は見られなかったとのこと。
以下の図は、Facebookにおけるワクチン反対派と賛成派の2019年2月~2019年10月における増加傾向から、それぞれの派閥における今後のユーザー増加を推測したグラフです。2030年代前半にはワクチン反対派が賛成派を上回ると予測されています。
ジョンソン氏らは、多くの人々はウイルスだけでなく、ソーシャルメディアそのものに対する理解が不足していると指摘。悪質なワクチン反対派コミュニティだけでなく、間違った情報を拡散するボットにもだまされている可能性が高いと述べています。また、ジョンソン氏らは「私たちの分析は不完全であり、今後は他の影響力あるソーシャルメディアや、各コミュニティに共通するユーザーの数などを調査する必要があります」ともコメントしています。
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