誰でも簡単に自分のメールを自分で管理しセキュアに運営できるメールサーバーが作れる「Helm」
インターネット上に限らずさまざまな場面で「メールアドレス」が個人を特定する情報として利用されるようになってきていますが、利用場面が増えるとともに、メールアドレスの乗っ取りなどで発生する被害は大きくなっています。アカウントを保護しメールの内容をクラウドサービス経由で盗み見されるリスクも減らすため「自前でセキュアなメールサーバーを確保したい」という需要に応えるべく、誰でも簡単にたった5分で設定できるメールサーバー「Helm」が登場しています。
Helm
https://thehelm.com/
インターネットプロバイダーなどから提供されるメールサービスだけでなく、Gmailなどのクラウドベースのフリーのメールサービスが普及していますが、「メールに関するデータは自分以外の第三者が管理している」という状況から発生するリスクは、ユーザー自身で避けられないという構造になっています。多機能なGmailを無料で使えるという利便性と引き換えに、メールの中身を誰かに見られたり、メールアカウント自体を乗っ取られたりするというリスクが常につきまとっているというわけです。
そんなリスクを嫌って自前でメールサーバーを持つという方法を選ぶユーザーもいますが、メールサーバーの設定や管理には知識と技術が求められ、初心者には手が出せない状況でした。そこで誕生したのが誰でも簡単に自分のメールを自分で管理しセキュアに運営できるメールサーバー「Helm」です。
Helmは全自動でHelm ゲートウェイサービスとの接続を確立し、静的IPアドレスを提供可能なメールサーバーです。とてつもなくシンプルに説明すると、「簡単に作れる、メールサービスに用いるクラウドサーバー」。Helmがあれば、これまでGmailのGoogleやYahooメールのYahoo!などのサービス提供者によって提供されていたクラウドを、自前で保有・管理できるようになります。
自前で管理できるメールサーバー自体は古くからあるアイデアですが、Helmの特筆すべきところは設定の簡単さ。必要な作業はメールのドメインを指定して、Helmアプリを使ってパスワードとリカバリーキーを設定するだけ。標準的なプロトコルをサポートしており、OutlookやMozilla Thunderbird、各種メールアプリからのメールクライアント情報やメールデータの移行もHelmがすべて自動でやってくれます。GmailやYahooメールなどのクラウドメールについては、カスタムドメインを選択して新しいメールアドレスを作成できます。なお、HelmはSSL/TLS経由でメールを送受信するので、サービス提供者のHelmでさえメール情報へのアクセスは不可能です。
また、CalDAV、iCal、CardDAVをサポートしているので、カレンダーや連絡先の同期も可能です。
HelmはAES-XTR-256bitやRSA-2048bit/AES-256bitをサポートし端末内のデータはすべて暗号化されるため、第三者による無断の解読作業は困難です。
以下の記事ではMashableがHelmを実際に試しています。
Helm is the personal email server you never knew you needed
https://mashable.com/article/helm-personal-email-server/
Mashableによると、既存のドメインがある場合の登録作業に必要な時間は約5分だったとのことで、スマートフォンアプリを使った設定作業はHelmのアピール通り簡単なようです。
また、Helmは専用の物理キーによって秘密鍵を保管する仕組みのため、物理キーさえ安全に管理しておけばメールサーバーをセキュアに保てます。
さらに物理キーを紛失するリスクに備えて、Helmアプリを使って秘密鍵をスマートフォンに保存しておくことも可能です。
Helmには標準で128GBのNVMe対応SSDが内蔵されています。一般的なメールサービスで利用できる容量は15GBなので、約120GBが利用できるHelmの場合、個人利用であればデータ容量にはかなり余裕がありそう。さらに、最大5TBのHDDを増量可能なので、大量のメールを処理する一般企業ユースにも対応します。なお、RAIDに対応しているかどうかについては記載がありません。
山形の独特の形状のHelm。ARM Cortex-A72のクアッドコアSoC、2GBのECCメモリ、128GBのNVMe接続SSD、2つのUSB3.0ポート、ギガビットLANポートを備え、Wi-Fi4&5(802.11 ac/a/b/g/n)とBluetooth4.2にも対応。消費電力はONモード時が10Wでスタンバイ時は0.4W。停電時には安全にシャットダウンする機能もあるとのこと。
サイズは4.375インチ×7.125インチ×5.125インチ(約11cm×18cm×13cm)と小型なので、スペースをとりません。
さらに、山形の筐体は、USB3.0接続でスタックすることも可能で、IoT製品のハブなどを想定した拡張性も確保されています。
Helmはハードウェアの価格が449ドル(約5万円)で、年間の利用料が99ドル(約1万1000円、初年度は無料)。自分でメールサービスを管理するというHelmの場合、サーバーが物理的な損傷を受けたり喪失した場合、メールデータを失ってしまうというリスクがあります。これに対応するため、Helmではメールデータをクラウドでバックアップするサービスがあり、万一の場合、ユーザーがデータを復旧できる仕組みが採用されています。ちなみにSSL/TLS経由で送受信されなかったデータは、プライバシー保護の観点からHelm(サーバーではなくサービス)側で保存しない運用になっています。また、Helmでは定期的にセキュリティアップデートやバグフィックスが提供される予定で、これらのサポート費用として年間利用料が必要となっています。
Helmと同じような機能を持つNASもあります。個人・小規模な法人に人気のSynology NASの場合、「MailPlus」機能によって5ライセンスが無料となっています。
SynologyのDSMでNASをグループウェア化してカレンダー・チャット・メモ・メール・スプレッドシートなどを使う方法まとめ - GIGAZINE
無料で使えるMailPlusですが、さらに5ライセンスを追加するには3万円以上が必要です。
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このため、仮に管理したいメールクライアントが5つ以上あるような場合、Helmの利用料は相対的に見てかなり有利な価格設定だとみることができそうです。
誰でも簡単に5分で設定できるメールサーバー「Helm」は2018年11月出荷予定。ただし、記事作成時点では出荷エリアはアメリカ国内に限られています。
Shop – Helm
https://thehelm.com/pages/shop
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