ジョブズはFacebookなどのプライバシー問題について2010年に警鐘を鳴らしていた

5000万人分の個人情報が流出して利用された一件やAndroidスマートフォンの通話履歴やSMS履歴を収集していたことで注目を集めているFacebookは、株価の時価総額が10日間で7兆円も下落して広告も減少するなどプライバシーをめぐる厳しい批判を受けています。このプライバシーをめぐる考え方はFacebookのみならず情報を集めて活用する企業とは切っても切れないものといえますが、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏は2010年にFacebookを含むシリコンバレー各社のプライバシーについて警鐘を鳴らしていました。

Apple's Steve Jobs tried to warn Facebook's Mark Zuckerberg about privacy years before the Cambridge Analytica debacle — Quartz
https://qz.com/1236322/apples-steve-jobs-tried-to-warn-facebooks-mark-zuckerberg-about-privacy-years-before-the-cambridge-analytica-debacle/

2010年に開催されたWall Street Journalのカンファレンス「AllThingsD」に登壇したジョブズ氏は、ジャーナリストのウォルト・モスバーグ氏から「ソーシャルネットワークのプライバシー」について尋ねられました。当時すでにFacebookをはじめとするSNSは広がりを見せており、規約の上ではユーザーの承認を得た上ではありますが、個人情報を収集して経済活動に利用することに注目が集まっている時で、このカンファレンスの聴衆の中にはマーク・ザッカーバーグ氏も混じっていたとのこと。

Steve Jobs on privacy, Steve Jobs at the D8 Conference (Video) - YouTube

質問に対してジョブズ氏は「シリコンバレーはモノリシックではない」と回答。「モノリシック」は「一枚岩」といった意味を持つ単語で、この場合は「必ずしも同じ価値観で動いているわけではない」ということを意味します。ジョブズ氏はさらに「Appleはプライバシーに関して、常に他のシリコンバレーの住人とは全く異なる見方を持ってきました」と答え、個人情報をもとにしたビジネスの展開は考えていないことを表明しています。

その姿勢が現れているのが、アプリの動作に対する考え方であるとのこと。Appleの場合、アプリがユーザーの行動や位置情報をトラッキングしようとする場合には、そのことをユーザーに伝えて確認を促す段階が入るようになっているといいます。また、ユーザーがそれを望まない場合には機能をオフにすることも可能で、「我々はそのような、アプリがやっていることをユーザーに知らせる仕組みを持っています」ともジョブズ氏は述べています。

これを受けてモスバーグ氏は、その姿勢が自社のiCloudにも反映されているのかと質問。するとジョブズ氏は「プライバシーとは、自分がどんなものにサインアップしているかがわかり、それが明快な言葉で、しかも何度も示されることを意味します。私は楽観主義者で、基本的に人々は賢くて、その中には他の人よりもデータをシェアすることを望む人もいると思います。そのような人には、毎回尋ねればいいのです。もしその確認が面倒くさくなったとしたら、確認を行わせないようにする仕組みを作れば良いのです。人々には、自分のデータがどのように扱われているのかを知らせるべきです」と答えています。

この考え方は、ジョブズ氏の後を引き継いだティム・クックCEOにも受け継がれている模様。プライバシーを中国政府に引き渡したという見方がある一方で、クック氏はAppleのプライバシー方針がFacebookとは全く異なることをインタビューで語っています。

「もしザッカーバーグの立場だったらどうする？」との問いにティム・クックは「私はあんな状況には陥らない」と回答 - GIGAZINE

ジョブズ氏はインタビューの中で「シリコンバレーの住民には『Appleのやり方は古くさい』と言う人も多くいます。たしかにそうでしょう。しかし、Appleはプライバシーに関して注意深くなっています」とも述べています。