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Metaが自社の象徴たるエンジニアリング文化を崩壊させてしまった理由とは?


FacebookやInstagramといったソーシャルメディアを運営するMetaの経営陣は、自社のエンジニアリング組織における「AIを駆使した改革」を猛烈な勢いで進めています。そんなMeta内で行なわれている改革の実態を、ゲルゲイ・オロス氏が解説しました。

Why is Meta destroying its engineering organization?
https://newsletter.pragmaticengineer.com/p/why-is-meta-destroying-its-engineering


Metaは20年間にわたって他に類を見ない優秀なエンジニアリング組織を擁してきました。その根底にあるのは「迅速に行動し、時には失敗を恐れない」という創業当初から続く社内文化です。そして、この社内文化は2020年初頭頃から「迅速に行動し、安定したインフラを維持する」というものに変化していきました。

そして、2026年4月頃のAI導入により状況は一変したとオロス氏は指摘。「Metaの経営陣は、実績のある成功したエンジニアリング文化を、可能な限り最も冷酷かつ効率的な方法で破壊しようとする設計図に従っているかのようだ」と語っています。


そもそもAI導入前のMetaのエンジニアリング文化は、創業以降の「迅速に行動し、時には失敗を恐れない」時代と、2020年初頭以降の「迅速に行動し、安定したインフラを維持する」時代に分けられます。

◆迅速に行動し、時には失敗を恐れない時代
MetaがまだFacebookだった2010年代、Facebookの型破りなエンジニアリング文化は従来のベストプラクティスに逆らいながら大成功を収め、テクノロジー業界の伝説的な存在となりました。2012年にFacebookのユーザー数が10億人を突破した際、同社は自社文化を紹介する小さな冊子を作成し、従業員に配布したそうです。この冊子は1964年に出版された毛沢東主席の思想をまとめた「毛沢東語録(Little Red Book)」に似た見た目だったことから社内で「Little Red Book(小さな赤い本)」と呼ばれて親しまれています。

Little Red Bookは約70ページの冊子で、スピード・恐れを知らない精神・責任感・既成概念にとらわれない思考といった、当時のFacebookのエンジニアリング文化を体系化したものとなっていました。Little Red Bookに記されていた代表的なスローガンとして以下があります。

・素早く行動し、常識を打ち破れ
・完璧を目指すより、やり遂げる方が良い
・もっと失敗しよう
・もし恐怖心がなかったら、あなたは何をしますか?
・毎日がまるで一週間のように感じられる
・ライト兄弟はパイロット免許を持っていなかった
・愚かな待ち時間
・幸運は勇敢な者に味方する

Little Red Bookは無料でダウンロードできる形式でインターネット上に公開されています。

2012年にFacebookの精神を伝えるために社員へ配られた伝説の本「Little Red Book(小さな赤本)」が無料でダウンロード可能に - GIGAZINE


◆迅速に行動し、安定したインフラを維持する時代
その後、2020年初頭からFacebookのエンジニアリング文化は「迅速に行動し、安定したインフラを維持する」時代へと変化していきます。この時代にはかつての無鉄砲さはほとんどなくなり、迅速な開発と安定したインフラストラクチャの構築という原則に代わっていました。

Facebookは他の大手テクノロジー企業と比べても非常にエンジニアリング中心の企業で、これは創業者でありCEOも務めるマーク・ザッカーバーグ氏自身がエンジニアであること、Facebookの創業初期のイノベーションの多くがエンジニアによって生み出されたことなどが原因であると考えられていました。


また、当時のFacebookは大手テクノロジー企業と比べて厳格なプロセスや標準化が欠けており、テスト・ドキュメント作成・コードコメントに対する重視度が驚くほど低かったとのこと。Amazonのエンジニアリング文化とは比べるべくもなく、Google・Microsoft・Uberといった企業と比べても、Facebookのプロセスははるかに緩やかだった模様。その理由は、Facebookがエンジニア中心の企業であり、エンジニアはプロセスを好まないことに起因しているとオロス氏は指摘しています。

当時のFacebookで働くエンジニアは有能で意欲が高く、製品志向で、エンジニアの仕事は非常に高く評価されていました。そして、エンジニアは自分たちが利益を生み出す部門で働いているという実感を持ってもいたそうです。


しかし、FacebookはMetaへと変身し、AIへの投資を加速させています。MetaはApple・Microsoft・Amazon・Googleといった大手テクノロジー企業と比べると、ハードウェアプラットフォームやOSを所有していない唯一の企業です。AppleはiPhoneやMacといったハードウェアとiOS・macOSなどのOS、GoogleはPixelシリーズというハードウェアと、Android・ChromeOSといったOS、MicrosoftはWindows、AmazonはKindleを所有しています。

Metaは2010年代に独自のハードウェアやOSを展開することができなかったことを受け、新しいプラットフォームを確立するための投資を続けています。例えば、Oculusをベースとした仮想現実(VR)への投資や、Ray-Ban Metaを初めとする拡張現実(AR)への投資などです。Metaはこれらの分野で市場リーダーとなるべく、数千億円規模の投資を続けていますが、「VRは結局主流にはなれなかった」とオロス氏は指摘。

実際、MetaはVR方面への出資で多額の赤字を計上しており、その結果、人員削減とVRスタジオの閉鎖が実施されています。

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2022年にAIが一大トレンドになることが明らかになった際、MetaのザッカーバーグCEOはそれを見逃しませんでした。Metaは社内に基礎AI研究チームと生成AI製品組織を結成し、オープンウェイトのAIモデルとして「Llama」を発表。Llamaが発表されたのは2023年2月で、ChatGPTがリリースされる3カ月前のことでした。

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さらに、2023年7月にはLlamaの後継モデルとなる「Llama 2」を公開。

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2024年4月には「Llama 3」をリリースしています。オロス氏はLlama 3について、「Metaの大規模言語モデル(LLM)の中で最も競争力が高く、業界全体で採用が加速した」と称しています。

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一方、2025年4月にリリースされた「Llama 4」については、「非常に期待外れだった」と表現しています。

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さらに、2025年6月にMetaはAI事業を加速させるためにScale AIの株式の49%を取得し、Scale AIのアレクサンダー・ワンCEOをトップとしたAI研究所のMeta Superintelligence Labsを設立。

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MetaはAI業界における優秀な人材をまとめた「ザ・リスト」を作成し、引き抜きを画策していると報じられています。

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Metaは他にも中国発のAIスタートアップであるManus AIの買収を進めていたものの、こちらは中国政府の介入により解消目前となっています。

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MetaのAI開発において大きな役割を果たすのが、Scale AIとワン氏です。Scale AIはMetaに「トレーニングデータとラベル付け」および「RLHFファインチューニング」をもたらし、ワン氏はこれらの分野で非常に広範な権限を与えられています。

ワン氏はこの権限を用い、従業員のマウスの動きやキーストロークをAIトレーニングデータとして利用するため収集し始めました。これについて、オロス氏は「言うまでもなくこれはプライバシー侵害で、懸念を生じさせるものです」と指摘。

Metaが従業員のマウスの動きやキーストロークをAIトレーニングデータとして収集開始 - GIGAZINE


さらに、Metaのコアチームエンジニアの30~50%がデータラベリングとRLHFに強制的に再配置されたことで、社内では不満が高まっているとオロス氏は指摘。Metaのエンジニアは2004年の設立から2025年まで、勤務場所と担当業務を自由に選択できる裁量権を持っていました。これはMetaの業務構造の中核を成すものでした。

しかし、Metaのコアチームエンジニアの30~50%がデータラベリングとRLHFに強制的に再配置されます。この業務はAIが生成したGitHubリポジトリに人間によるフィードバックを何度も繰り返すだけの単純作業であり、これまでの「何億人ものユーザーが利用する製品の開発」とは大きく異なるものであるとオロス氏は指摘。この影響を大きく受けることになったのはインフラストラクチャチームとセキュリティチームのエンジニアでした。

影響を受けたエンジニアのひとりはこの状況を「まるで『ハンガー・ゲーム』のよう」と語っています。なお、ハンガー・ゲームはランダムに選出された男女24人が殺人サバイバルを強制させられるという内容です。

そして、2026年4月にMetaは全従業員の10%に当たる8000人を解雇すると発表。

Metaが従業員の10%に当たる約8000人を削減へ - GIGAZINE


Metaは従業員のパフォーマンス評価にパフォーマンス・サマリー・サイクル(PSC)を採用しています。このPSCはGoogleやAppleといった企業と比べても非常に厳格です。Metaの人事マネージャーは部下の給与を巡り、他チームのエンジニアの評価を下げ、自チームのエンジニアの評価を高めようとします。PSCではビジネスへの影響、コードレビューの数、記述したコード行数などが指標として使用されるそうです。さらに、MetaはPSCの一環としてAIのトークン使用状況も測定するようになりました。

この結果、Metaのエンジニアは本来の仕事に関心を持たなくなり、パフォーマンス重視の仕事にばかり目を向けるようになってしまったとオロス氏は指摘しています。

Metaがこれまで築き上げてきたエンジニアリング文化がAIの導入により一気に崩れていった結果、2026年5月末にMetaは「Meta史上最も恥ずべきシステム障害」を経験します。それは、「ハッカーがMeta AIのサポートチャットボットを騙して有名人のInstagramアカウントを盗む」というものです。Metaの関係者は、AIが生成・レビューしたコードと、セキュリティチームの人員削減が重なり、この恥ずべき事態を引き起こしたと説明しています。

ハッカーがMeta AIのサポートチャットボットを騙して有名人のInstagramアカウントを盗む - GIGAZINE


このシステム障害は2026年6月1日に復旧したものの、6月2日にはMetaの最高セキュリティ責任者であるガイ・ローゼン氏が辞任する事態へと発展しています。

なお、Metaの社内からは同社のエンジニアリング文化が崩壊した原因として、マーク・ザッカーバーグCEOとアレキサンダー・ワン氏の名前が挙げられています。ザッカーバーグCEOは事業を完全に掌握しており、エンジニアの大規模なデータラベリングへの再配置や、従業員のキーボード・マウス操作のトラッキング、従業員の10%の解雇といった決定を下してきた人物であるため、当然と言えば当然です。

しかし、人員削減を除けばMetaが行った従業員から反感を集める施策のほとんどが、Scale AIのワン氏によるものであることは明らかであるとオロス氏は指摘しました。

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in メモ, Posted by logu_ii

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