サイエンス

「歯磨き」で院内感染のリスクを劇的に減らすことができるとの研究結果


歯磨きによって口腔(こうくう)衛生を保つことは虫歯や歯周病を防ぐだけでなく、糖尿病リスクの減少健康寿命の増進にも役立つ可能性があります。オーストラリアの病院で行われた実験では、入院患者が歯磨きをすることで「院内感染のリスク」を劇的に減らすことができる可能性が示されました。

Effectiveness of oral care for the prevention of non-ventilator hospital-acquired pneumonia (HAPPEN): a multicentre, stepped-wedge, cluster-randomised trial in Australia - The Lancet Infectious Diseases
https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(26)00235-5/fulltext

Brushing your teeth in hospital could reduce the chance of catching pneumonia
https://theconversation.com/brushing-your-teeth-in-hospital-could-reduce-the-chance-of-catching-pneumonia-283574

非人工呼吸器使用患者における院内肺炎(NV-HAP)は最も一般的な院内感染症のひとつであり、口や喉から細菌に感染することで発症します。このタイプの肺炎を発症した患者は入院期間が10~48日間も長くなり、入院中に死亡する確率も約8.4倍になるという研究結果があります。

オーストラリアの病院では毎年約5万人の患者が肺炎に感染し、そのうち約1900人が死亡しているとのことですが、あまりに一般的なためNV-HAPはほとんど監視されることはなく、その予防法を調べた研究もほとんどないそうです。

そこで、オーストラリア・クイーンズランド工科大学の統計学准教授であるニコール・ホワイト氏らの研究チームは、オーストラリアの3つの病院に入院している患者を対象として、歯磨きを含む口腔ケアの改善がこの種の肺炎を減らすのに役立つかどうかを調べました。


口の中には何十億もの細菌が生息しており、体調不良や鎮静剤の使用、運動不足、特定の薬剤の服用などがあると口腔衛生が悪化しがちです。こうなると歯や歯茎、舌に細菌が繁殖しやすくなり、これらの細菌を吸い込むことで肺炎を発症するリスクがあります。

毎日の歯磨きは肺炎の原因となる細菌を減らす簡単な方法ですが、入院する患者の多くは歯ブラシを持参しておらず、混雑した病棟では個々の患者に対する口腔ケアまで注意が行き渡らないこともあります。また、中にはけがや病気の状態が重く、自分で歯磨きできない患者もいます。


今回の実験では、「入院した患者に歯ブラシと歯磨き粉を袋に入れて渡す」「患者と病院スタッフに歯磨きの重要性について啓発活動を行い、歯ブラシに『肺炎を歯ブラシで撃退しよう』というメッセージを記入する」「歯磨きに介助が必要な患者を支援する」「口腔ケアの提供状況を監査し、病院の各病棟にフィードバックを行う」といった医療介入を病棟ごとに行い、その効果を調べました。

試験期間中に48時間以上にわたって入院していた合計8840人の患者を分析した結果、これらの比較的簡単な介入によって歯磨きをする割合が16%から62%に激増したことが判明。口腔ケアの改善によって肺炎の発症リスクは60%減少し、30人の患者がいる典型的な病棟では月平均8件だった感染件数が月平均4件未満になったと報告されています。


今回の研究結果は、入院する患者は自らの手で歯磨きをすることで、そうでない患者は医療従事者が歯磨きをサポートすることで、自分が肺炎にかかるリスクを抑えられることを示しています。研究チームは家族や大切な人が入院した場合、歯ブラシや歯磨き粉を持っていったり、自分で歯磨きできない場合はスタッフに助けを求めたりすることで、肺炎のリスクを軽減できるとアドバイスしています。

ホワイト氏らは、「肺炎は命・入院日数・医療費といった面で大きな損失をもたらしますが、人工呼吸器を使用しない院内肺炎は定期的に報告されないため、しばしば見過ごされてしまいます。私たちの研究は、入院時の院内肺炎は避けられない合併症であるという前提に疑問を投げかけるものです」「口腔ケアは華やかでも高価でもなければ、高度な技術を必要とするものでもありませんが効果は絶大です。時には、最もシンプルな対策こそが最も効果的なのです」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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