スマート電球を点灯すると「発禁本図書館」が起動、インターネット不要で電子書籍を配信

市販のWi-Fi接続可能なスマート電球を改造し、周囲のスマートフォンやPCへ電子書籍を配信する「Banned Book Library」をリック・オズグッド氏が開発しました。
Banned Book Library | Rick's Blog
https://www.richardosgood.com/posts/banned-book-library/
ウェブサイトが遮断されたり、クラウドストレージからファイルが削除されたりすると、オンライン上の情報は簡単に読めなくなります。オズグッド氏は異議申し立てや閲覧制限の対象となった書籍を目立たない場所で共有する「サイバーパンクなデジタル・デッドドロップ」として、スマート電球を利用することを思い付いたとのこと。照明器具に取り付けたスマート電球なら点灯中にのみ電源が供給されるため、情報配信用の機器だと気付かれにくいというアイデアです。
改造の土台にはAthom Techの「Tasmota Matter 12W Color Bulb」が使われました。この電球にはスマート家電をクラウドサービス不要のローカル環境で操作できるようにするオープンソースのファームウェア「Tasmota」が使われているのが特徴です。

電球にはWi-Fi通信が可能なマイコン「ESP32-C3」と4MBのフラッシュメモリが搭載されており、無線経由でファームウェアを書き換えるOTA更新にも対応しています。

4MBのフラッシュメモリには電球を動かすプログラムやウェブページも保存する必要があります。元の構成ではウェブページや電子書籍などのファイルを保存できる領域がわずか320KBだったため、電子書籍を1冊保存するだけでも容量不足になる可能性がありました。
オズグッド氏はmicroSDカードを利用する方法も検証しましたが、実際の電球へカードリーダーを取り付けるには電球を分解して細い配線をはんだ付けする必要がありました。内部基板は樹脂状の充てん材で固定されており、取り出した基板を安全な状態で元に戻せる保証もありません。誰でも導入しやすい装置を目指していたため、外部ストレージの追加は断念したとのこと。

代わりにオズグッド氏は必要な機能だけを備えた専用ファームウェアを新たに作成しました。さらに、Tasmota向けに約2.8MBが割り当てられていたメインファームウェア領域を縮小し、ウェブページや電子書籍を保存する領域を2MBへ拡大。限られたメモリを図書館として利用できる構成に変更したというわけです。
Banned Book Libraryを導入した電球は、パスワードなしで接続できるWi-Fiアクセスポイントとして動作します。利用者がアクセスポイントへ接続すると、ホテルや空港の無料Wi-Fiで見かける「キャプティブポータル」の仕組みによって図書館のページが自動的に表示されます。利用者がIPアドレスや専用URLを知っておく必要はありません。
図書館のページには書籍名や著者名に加えて、書籍が異議申し立てや発禁の対象になった理由も掲載されます。電球自体がウェブサーバーとして電子書籍を配信するため、外部のインターネット接続が遮断されていても閲覧可能です。

目立たずに設置するための機能として、パスワードで保護された管理画面も用意されています。管理画面では電球の白色光を暖色または寒色へ切り替えられるため、周囲に設置されている照明へ色合いを近づけることが可能。設定した色は電源を切った後も保存され、次回の点灯時に復元されます。

また、元のTasmota環境ではWi-Fiのネットワーク名とパスワードが暗号化されずに保存されていました。Banned Book Libraryのファームウェアでは既存の設定領域を消去し、設置した電球を回収された場合でも自宅などのWi-Fi情報が読み出されないようにしているとのこと。
OTA更新を行うための小型ファームウェア「セーフブート」も独自に作成されており、管理画面からセーフブートへ切り替えることで別のファームウェアを書き込めます。ただし元のTasmota用パーティション構成を完全に復元する機能ではないと説明されています。
なお、EPUB形式の電子書籍は1冊当たり約350KBほどあり、1個の電球には数冊程度しか保存できません。オズグッド氏は当初、大量の書籍を収録できない点を欠点だと考えていましたが、限られた冊数から設置者が重要だと思う本を選ぶことで、電球ごとに異なる図書館が生まれると考えるようになったとのこと。
各電球が独立した図書館として機能するため、設置場所ごとに異なる本と出会える可能性があります。一方で将来のアイデアとしては、複数の電球をメッシュネットワークで接続し、近くにある電球へ接続するだけでネットワーク内の全書籍を利用できる仕組みも挙げられています。オズグッド氏は、こうした構想によってそれぞれのBanned Book Libraryに個人の好みや個性が反映されたり、探検に出かけて見つけたBanned Book Libraryに何が残されているのかを楽しめたりできる可能性があると説明しています。
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