市販のティーバッグから1mlあたり数百万~10億個超のプラスチック粒子が放出されておりヒトの腸細胞に吸収されることが判明
近年は、直径5mm以下のプラスチック粒子や断片であるマイクロプラスチックやさらに小さいナノプラスチックが、環境や生物の体内の至るところに入り込んでいることが指摘されています。新たにスペインのバルセロナ自治大学などの研究チームが、「市販のティーバッグから膨大なマイクロ/ナノプラスチックが放出されており、ヒトの腸細胞に吸収される」という研究結果を発表しました。
Teabag-derived micro/nanoplastics (true-to-life MNPLs) as a surrogate for real-life exposure scenarios - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0045653524026377
Commercial tea bags release millions of microplastics, entering human intestinal cells
https://medicalxpress.com/news/2024-12-commercial-tea-bags-millions-microplastics.html
プラスチック廃棄物による環境汚染は、将来の世代の幸福と健康に影響を及ぼす重大な課題です。これまでの研究でヒトの肺・血液・胎盤・精巣・脳などからプラスチック片が見つかっており、マイクロプラスチックが腸に炎症を引き起こす可能性も示唆されています。
中でも食品の包装に使われるプラスチックは、マイクロ/ナノプラスチック汚染の主要な原因であると共に、人体に入り込む主な経路となっています。そこで研究チームは、AmazonやAliExpress、地元のスーパーマーケットなどで購入したティーバッグを使用し、実際に紅茶やお茶を入れる工程を模倣する実験を行いました。
研究チームはティーバッグの中身を空にして洗浄し、それぞれを熱湯に入れてかき混ぜてから、残った水溶液に含まれるプラスチック片の量を測定しました。さまざまなプラスチック片の特徴を調べるため、研究チームは走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、赤外分光法、動的光散乱法、レーザドップラー流速計、ナノ粒子トラッキング解析といった高度な分析技術を使用したとのこと。
分析の結果、ティーバッグの種類ごとに以下の通りのプラスチック汚染が確認されました。
・ポリプロピレン製ティーバッグでは、1mlあたり約12億個のプラスチック粒子が放出され、平均サイズは136.7nm(ナノメートル)だった。
・ポリマー組成物としてセルロースを含むティーバッグでは、1mlあたり1億3500万個のプラスチック粒子が放出され、平均サイズは244nmだった。
・ナイロン6製のティーバッグでは、1mlあたり818万個のプラスチック粒子が放出され、平均サイズは138.4nmだった。
論文の共著者であるバルセロナ自治大学のアルバ・ガルシア氏は、「私たちは一連の最先端技術を使用して、これらの汚染物質を革新的に特徴付けることに成功しました。これは、人間の健康に及ぼす可能性がある影響について、研究を進めるための非常に重要なツールです」とコメントしました。
さらに研究チームは、検出されたプラスチック粒子を染色してさまざまなヒト腸細胞に暴露し、それらの相互作用についても観察しました。その結果、粘液を産生する腸細胞がマイクロ/ナノプラスチックを特に多く取り込み、一部の粒子は細胞核にまで侵入することが示されました。これは、慢性的なマイクロ/ナノプラスチックへの暴露が人間の健康に及ぼす影響について、さらに研究するべきであることを強調しています。
研究チームは、「食品に接触するプラスチック材料から放出されるマイクロ/ナノプラスチック汚染を評価するため、標準化された試験方法を開発して、汚染を効果的に緩和・最小化するための規制方針を策定することが重要です。食品包装におけるプラスチック使用が増加し続ける中、食品の安全性を確保しつつ公衆衛生を守るためには、マイクロ/ナノプラスチック汚染に対処することが必要不可欠です」と述べました。
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