サイエンス

海洋マイクロプラスチックの大部分は自動車のタイヤから発生していることが報告される


細かく砕けたプラスチック粒子「マイクロプラスチック」は、川や海に流れた際に魚介類が食べてしまうことがあり、海洋汚染の原因の一つになっています。カリフォルニア大学バークレー校などの研究チームが、タイヤの製造過程で使用される添加物「6PPD」がマイクロプラスチックとして魚に取り込まれていることを報告したことで、海洋マイクロプラスチックの一部がタイヤから発生していることが明らかになりました。

Road Hazard: Evidence Mounts on Toxic Pollution from Tires - Yale E360
https://e360.yale.edu/features/tire-pollution-toxic-chemicals


Tire Dust Makes Up the Majority of Ocean Microplastics: Study
https://www.thedrive.com/news/tire-dust-makes-up-the-majority-of-ocean-microplastics-study-finds


2020年にカリフォルニア大学バークレー校のエドワード・コロジェイ氏らが発表した論文では、アメリカの西海岸に生息するギンザケの調査が行われました。これにより、研究チームは弱ったギンザケが「6PPD」という化学物質を取り込んでいることを特定しました。

一般的に、6PPDはタイヤの製造過程で亀裂や劣化を抑えるために使用される老化防止剤です。研究チームによると、6PPD自体はそれほど毒性を持たないものの、大気中のオゾンにさらされると、「6PPD-quinone」という物質に変化するとのこと。6PPD-quinoneが水に溶けると非常に強い毒性が発生し、その結果ギンザケを含む多くの魚が死に至ることが報告されています。


コロジェイ氏らの研究チームが発表した6PPD-quinoneの発見とその影響に関する研究により、タイヤやブレーキから放出される粒子によるマイクロプラスチック汚染に関する研究が活発化しました。非政府組織のピュー慈善信託は2020年に、「海洋マイクロプラスチックの約78%は合成タイヤゴム由来である」との(PDFファイル)研究結果を報告しています。


また、ピュー慈善信託は、合成タイヤゴムから放出されたマイクロプラスチックの有毒な粒子を取り込んでしまった海洋生物は、行動が変化したり、成長に異常をきたしたりする可能性があることを指摘しています。

イギリスの自動車研究機関「エミッション・アナリティクス」は、「自動車1台が1km走行するごとに合計1兆個の超微細なマイクロプラスチック粒子を放出しています」と報告。また、これらの超微細粒子のサイズは100ナノメートル以下であるため、肺を通過して直接血液中に入る可能性があることが指摘されています。イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンは、「タイヤの摩耗に伴って放出されたマイクロプラスチック粒子が、心臓病や肺の病気、発達障害、生殖障害、がんなどのさまざまな健康被害を起こす可能性があります」と(PDFファイル)述べています。

マイクロプラスチック粒子の発生源が自動車のタイヤである以上、電気自動車が普及してもこの問題を解決することは困難です。むしろ、電気自動車は従来のガソリン車に比べて重量やトルクが高いため、ガソリン車よりも約20%多くマイクロプラスチック粒子を放出する可能性がエミッション・アナリティクスによって指摘されています。


一方で各国の規制当局はこの問題に対してさまざまな取り組みを行っており、EUでは2022年11月に新たな排ガス規制「Euro 7」を策定しました。Euro 7では、ブレーキやタイヤの摩耗に伴って放出されるマイクロプラスチックの排出が規制されています。

カリフォルニア州の環境規制当局は、今後大気中に放出される6PPD-quinoneを削減するために、タイヤメーカーに対して2024年までに6PPDの代替物質を見つけるよう要求しています。規制当局の要求を受けて、タイヤメーカーは新たなタイヤの構成や、マイクロプラスチック粒子放出を抑えつつ6PPDをタイヤに付着させる特別な帯電の仕組みなど、さまざまな研究を行っています。

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in 乗り物,   サイエンス, Posted by log1r_ut

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