サイエンス

人間が出した微小な「マイクロプラスチック」が魚の成長を妨げている可能性

By Frank_am_Main

リサイクル回収されなかったプラスチックの多くは川や海に流れて大きさがだんだん小さくなり、5mm以下の粒子はマイクロプラスチックと呼ばれ、魚介類が食べてしまうこともあり環境問題の1つになっています。スウェーデンのウプサラ大学の調査では、マイクロプラスチックの密度が高くなればなるほど、その水質で育った生き物に悪影響を与えることがわかりました。

Environmentally relevant concentrations of microplastic particles influence larval fish ecology | Science
http://science.sciencemag.org/content/352/6290/1213

Fish raised with plastic debris eat it instead of food—then become food themselves | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/06/fish-raised-with-plastic-debris-eat-it-instead-of-food-then-become-food-themselves/

ウプサラ大学がスウェーデンの海岸沿いで動物プランクトンの採取調査をしていたところ、最大で1立方メートル当たり10万200個ものマイクロプラスチックが発見されました。調査海域に生息する魚介類が多くのマイクロプラスチックを誤飲している可能性があり、調査チームはマイクロプラスチックを食べた魚介類にどのような影響が出るのか調査に乗り出しました。

By Oregon State University

「マイクロプラスチックを含まない」「調査海域で平均とされる1立方メートル当たり1万個のマイクロプラスチックを含む」「1立方メートル当たり8万個のプラスチックを含む」という3つの水質の海水に、スズキの卵を入れて観察するという調査が行われました。その結果、マイクロプラスチックを含まない海水では96%の卵がふ化したものの、1立方メートル当たり8万個のプラスチックを含む海水では81%しか卵がふ化せず、3つの水質の中で最低の結果となり、調査チームはマイクロプラスチックが卵のふ化を妨げた可能性があるとしています。

ふ化して1週間が経過した時点で、それぞれの水槽の稚魚に変化が見られ始めました。マイクロプラスチックを含む海水の稚魚は、マイクロプラスチックを含まない海水の稚魚と比べて、移動距離や行動量が劇的に少ないことが判明。

また、ふ化から2週間が経過するとマイクロプラスチックの密度が高くなるれなるほど、稚魚の成長が遅くなることもわかりました。3つの水質の海水で育った魚の中で最も成長が遅かった、つまり最も小さかったのは1立方メートル当たり8万個のプラスチックを含む海水で育った稚魚で、最も大きかったのはマイクロプラスチックを含まない海水で育った稚魚で、その差は0.9mmありました。

By Artur

調査チームによると、高密度のマイクロプラスチックで育った魚は多くのマイクロプラスチックを摂取することになり、通常の魚向けのエサよりもマイクロプラスチックを好む傾向も見られたとのこと。また、マイクロプラスチックの密度が高くなれば、マイクロプラスチックの摂取量が増えるのは当然で、それが稚魚の成長スピードに悪影響を与えているとしています。

マイクロプラスチックは日本を含めた世界各国で問題視されており、2015年6月に開催されたG7エルマウ・サミットでも取り上げられました。日本だと、環境省が2014年に行った調査では日本の沖合海域でマイクロプラスチックが一定の密度で確認されています。また、(PDF)国連環境計画が発表した報告書では、マイクロプラスチックが当初は海洋ゴミに含まれる漂流プラスチック劣化だと思われていたものの、歯磨き粉・洗浄ジェル・顔用クレンザーなど近年マイクロプラスチックを使用した製品が増加しており、生活排水もマイクロプラスチックの問題に拍車をかけていると指摘されています。

東京大学の機構の1つである東京大学海洋アライアンスは「マイクロプラスチックは海面で確認される量が予想より少なく、どこかに行ってしまっているのを見逃しているという見方もでています。相当な量のマイクロプラスチックが、すでに海のどこかにたまっているのかもしれません」という見解を示しており、日本でも大きく議論されている問題です。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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