タコは小さな「街」を造り集団で社会的に暮らす


2009年、複数人によるダイバーのグループが、廃棄金属で造られたタコの「街」を発見しました。「街」では複数匹のタコが一緒に暮らしており、発見したダイバーたちは、このタコの巣を「オクタポリス」と名付けました。オクタポリスが発見された当時、科学者たちは人間が環境を汚染することでできてしまった副産物のようなものだと信じていました。しかし、2016年になって別のタコが群れで暮らす「街」が見つかり、そこには金属などの廃棄物が存在しておらず、タコがグループで街を造って生息するという新しい発見となっています。

Why octopuses are building small “cities” off the coast of Australia | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2017/09/why-octopuses-are-building-small-cities-off-the-coast-of-australia/

Alaska Pacific Universityの海洋生物学者であるデビッド・シェール氏とその同僚は、オンライン論文提供サイトのTaylor & Francis Onlineで、ダイバーたちが見つけたタコの住む街についての研究結果を発表しています。論文の中では、2016年に見つかったタコの住む街が「オクラティス」と呼ばれており、数か月にわたる観察が行われました。観察結果によると、オクラティスには10~15匹ほどの「Octopus tetricus」という種類のタコが住んでおり、岩の周りには数世代にわたって築かれた居住空間のようなものがあるとのこと。


Octopus tetricusの寿命は約3年なので各世代が生きる時間は比較的短いのですが、居住空間である貝塚の奥にビール瓶や釣り用のルアーなど、海に捨てられたものを宝物のように隠し持っているそうです。なお、居住空間は岩の周りに貝殻などを集め、その中に空間を設けることで造り出しているそうです。

以下の画像は2016年に見つかったオクラティスを図示したもの。グレーの岩場を囲うように貝塚が広がり、その下にタコの居住空間があります。小さな丸い点がタコの造った居住空間で、まるでタコが住むアパートか何かのように居住空間が3つに分かれてまとまっています。


オクラティスの観察にはカメラを使ったムービー撮影が行われ、タコたちが社会的行動を取ることがわかったとのこと。オクラティスでは少なくとも3組のタコの集団が確認されており、さらに、観察中に仲間に加わろうとしてくるタコもいたそうです。タコの生殖器官は長距離受胎が可能になるように最適化されているため、街に住むタコにとって交尾はとても奇妙なものだっただろう、と科学者は述べています。通常、タコの雄は精子の塊を水を介して雌に送り込みます。そして、精子の塊が雌タコの肌を突き破り、そして体内に入っていくため、通常はタコが交尾の際にお互いにふれあうことはありません。

また、観察中には1匹のタコが巣に入っていき、中から住んでいたタコを追い出したり、追い出されたタコが造った穴を再び他のタコが奪ったりという光景が見られたそうです。加えて、タコとタコによる居住空間の奪い合いは、しばしばタコ同士のケンカにもつながったとのこと。他にも、オクラティスの中からタコが出てくるのを待ち構えるサメも確認されたそうです。


このように、オクラティスを造ることはタコ自身を危険な状態に置くことにつながるかもしれません。研究者はオクラティスに住むタコがこれまで見たことがないような社会的行動をとることに驚いています。そして、その社会的な行動は、ひとりで海をさまようタコよりもタコ自身の身を危険にさらすような行動であるとのこと。

自らの身にふりかかる危険を考えると、なぜタコがあえて危険をおかしてまで集団でコミュニティを形成しているのでしょうか。その理由についてシェール氏は、「ところどころにタコの生息地があり、食べ物が豊富な場合、恐らくこのような巣が形成されるのだろう」と語っています。実際、オクタポリスとオクラティスの両方が岩や廃棄金属により海底にタコが隠れる場所を形成しており、さらに、岩や廃棄金属の周りに貝塚を形成することでタコのエサとなるホタテなどにとっての生息地にもなっているとのこと。外敵から身を守り、食料を安定して得るためにタコは街を形成し、その中で社会的行動を身につけているというわけです。


シェール氏とその同僚によると、Octopus tetricus以外の種類のタコも密集地帯に住むことがあるそうで、人間が思っているよりもタコの街は海の至る所に存在するのかもしれません。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii