サイエンス

プラスチック製の食品容器を電子レンジで加熱すると膨大な数のプラスチック粒子が放出されることが判明


スーパーマーケットやコンビニでは「プラスチック容器に入れたまま電子レンジで加熱できる食品や弁当」が販売されているほか、調理した料理をプラスチック容器に入れて保存している人もいるはず。新たに、アメリカのブラスカ大学リンカーン校で土木環境工学科の博士課程に在籍するカジ・アルバブ・フセイン氏らの研究チームが、「規制当局に承認されたプラスチック製の食品容器を電子レンジで加熱すると、膨大な数のプラスチック粒子が放出される」という実験結果を発表しました。

Assessing the Release of Microplastics and Nanoplastics from Plastic Containers and Reusable Food Pouches: Implications for Human Health | Environmental Science & Technology
https://doi.org/10.1021/acs.est.3c01942


Nebraska study finds billions of nanoplastics released when microwaving containers | Nebraska Today | University of Nebraska–Lincoln
https://news.unl.edu/newsrooms/today/article/nebraska-study-finds-billions-of-nanoplastics-released-when-microwaving/

Microwaving 'Safe' Plastics Can Release Billions of Particles, Scientists Warn : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/microwaving-safe-plastics-can-release-billions-of-particles-scientists-warn

フセイン氏は以前から哺乳瓶から放出されるマイクロプラスチックなどの研究を行っていましたが、2021年に自身が父親になると、赤ちゃん用の離乳食を入れる容器もプラスチック製であることに気づいたとのこと。多くの親がプラスチック製の離乳食容器を使っているにもかかわらず、これらから放出されるプラスチック粒子についての研究はなかったことから、自らで実験することに決めたそうです。

研究チームはアメリカ食品医薬品局(FDA)が承認しているポリプロピレン製の離乳食容器やポリエチレン製の食品容器に、水またはさまざまな食品をシミュレートする3%の酢酸水を入れて、1000Wの電子レンジで3分間加熱しました。加熱が終わった後、研究チームは容器に入った液体にどれほどのプラスチック粒子が放出されたのかを分析しました。


実験結果を分析した研究チームは、わずか1cm2のプラスチックから422万個のマイクロプラスチック(粒子の直径が1μm~5mm)と21億1000万個ものナノプラスチック(粒子の直径が1μm未満)が液体に放出されると推定しました。

電子レンジの加熱によって放出されるプラスチック粒子の数は、容器や液体といったさまざまな要因に左右されます。しかし、容器に入った液体の量やプラスチック粒子の放出数、摂取する人の体重などを考慮すると、「電子レンジで加熱したプラスチック容器入りの液体を飲んだり食品を食べたりする幼児」が、相対的なプラスチック粒子の摂取量が最も大きいと研究チームは指摘しています。


記事作成時点では、微小なプラスチック粒子が人体に及ぼす具体的な影響は明らかになっていません。しかし、研究チームが胚性腎細胞をプラスチック容器から放出された高濃度のプラスチック粒子にさらしたところ、48時間後に全体の76.7%が死亡したとのことです。

また、別の研究チームは人間の細胞から作り出した腸オルガノイド(ミニ臓器)を用いた実験で、小さなプラスチック粒子は腸オルガノイドの細胞に取り込まれて侵入し、炎症作用をもたらすことを発見しました。

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もちろん、細胞やミニ臓器でプラスチック粒子の悪影響が確認されたからといって、必ずしも生きている人間の体で同様の反応が起きるとは限りません。しかし、これらの研究結果がプラスチック容器の使用に関する懸念を引き起こすのは確かです。

フセイン氏は、「私たちは特定の食品を食べる時、そのカロリーや糖分、その他の栄養素について知らされたり、考えたりしています。私は、食品に含まれるプラスチック粒子の数を認識することも同様に重要だと考えています」「カロリーや栄養素が私たちの健康に与える影響を理解するのと同じように、プラスチック粒子の摂取量を知ることは、それらが引き起こす可能性のある害を理解する上で極めて重要です。私たちの研究を含む多くの研究結果が、マイクロプラスチックやナノプラスチックの毒性が暴露レベルに大きく関係していることを示しています」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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