サイエンス

ついにマイクロプラスチックの危険性が明らかに、ヒトの腸に深刻な障害をもたらす炎症が発生するとの実験結果


細かく砕けたプラスチック粒子であるマイクロプラスチックは、これまで血液胎盤など体のさまざまな場所から見つかっていますが、人体への毒性は長らく不明だったため本格的な対応は後手に回っています。人間の細胞から作り出したミニ臓器である腸オルガノイドを用いた実験により、マイクロプラスチックが腸に炎症作用をもたらすことがわかりました。

Biological effects of polystyrene micro- and nano-plastics on human intestinal organoid-derived epithelial tissue models without and with M cells - ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.nano.2023.102680

What Microplastics Might Be Doing to Our Intestines | Tufts Now
https://now.tufts.edu/2023/06/09/what-microplastics-might-be-doing-our-intestines

Microplastics May Pose a Serious Danger to The Intestine : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/microplastics-may-pose-a-serious-danger-to-the-intestine

マイクロプラスチックは都市の空気や海、極地の氷原まであらゆる場所に存在しており、人は日々マイクロプラスチックを吸い込んだり飲み込んだりしています。このマイクロプラスチックが人体に与える影響を調べるため、アメリカ・タフツ大学のイン・チェン氏らの研究チームは、人体への侵入経路として最も可能性が高い腸への影響に焦点を当てた研究を行いました。


研究チームはまず、別のオルガノイドから採取した幹細胞を腸壁のさまざまな細胞へと分化させ、栄養の吸収、粘液の分泌、ホルモンの産生、炎症反応など腸の複雑な機能を再現するヒトの腸管モデルを作成しました。

こうした実験で使われる臓器モデルの多くは、自然な反応を示さない可能性のある単一の細胞の塊であったり、がん細胞から作られたりしたものが多いため、チェン氏は「大幅な進歩です」としています。


そして、腸管モデルを複数のサイズのプラスチック粒子にさらしたところ、最も小さなサイズのナノプラスチック粒子が腸の内壁を覆う上皮細胞に取り込まれることや、大きめの粒子が腸の免疫応答に関連するマイクロフォールド細胞(M細胞)に取り込まれて腸組織内に侵入することがわかりました。

以下は実験の様子を示す写真で、黄色に色づけされているのがマイクロプラスチック粒子、紫色がM細胞、青色が腸の細胞の細胞核です。


実験では、マイクロフォールド細胞が存在し、小さなプラスチック粒子の濃度が高い場合にのみ腸管モデルが損傷を受けたことが突き止められており、研究チームは論文に「こうした損傷はマイクロプラスチックが腸管病変の形成に寄与する可能性を示唆しています」と記しています。

さらに、オルガノイドはナノプラスチックの濃度が高ければ高いほど炎症性サイトカインを放出することもわかりました。サイトカインが放出されること自体は正常な免疫反応ですが、何らかのバランスが崩れて正常な働きが阻害されると炎症性疾患(IBD)などの疾患につながる可能性があります


論文の共著者であるタフツ大学のデビッド・カプラン氏は、「本研究の結果は、ヒト細胞オルガノイドを用いることが、マイクロプラスチックやナノプラスチック、ひいては環境中の粒子全般の潜在的な毒性をよりよく理解するための有効な手段となり得ることを示唆しています。こうした小さな粒子は環境中の化学物質やその他の汚染物質の発生源や媒体になる可能性があるため、潜在的な影響はさらに大きくなるでしょう」と話しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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