サイエンス

ほとんどすべての微生物はマイクロプラスチックを飲み込むが「クマムシ」は回避したことが実験で判明

by Philippe Garcelon

緩歩動物(クマムシ)は極度の高温や低温環境、真空状態、強い放射線などに耐えられる強い生命力で知られています。新たな研究では、ほとんどの微生物はマイクロプラスチックを飲み込んでしまうにもかかわらず、クマムシだけはマイクロプラスチックを飲み込まなかったことが報告されました。

Short-term microplastic effects on marine meiofauna abundance, diversity and community composition [PeerJ]
https://peerj.com/articles/17641/


Microplastics Seem to Be in Every Kind of Animal... Except One : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/microplastics-seem-to-be-in-every-kind-of-animal-except-one

マイクロプラスチックは環境中に存在する微小なプラスチック片の総称であり、食品や飲料などを経由して人体に入り込むことが知られています。すでに人間の精巣などからもマイクロプラスチックが見つかっており、健康被害があるのではないかと懸念されています。

また、海にはプラスチックが大量に廃棄されているため、特に海の底に生息する底生生物がマイクロプラスチックを吸収しやすいのではないかと考えられています。そこでブラジルのペルナンプコ連邦大学の動物学者であるフラビア・デ・フランサ氏が率いる研究チームは、体長1mm未満の底生生物を指すメイオファウナにマイクロプラスチックが及ぼす影響を調査しました。


研究チームはブラジル北東部の海岸で、干潮時の砂浜の堆積物から体長約45μm~1mmのメイオファウナのサンプルを収集しました。サンプルには線虫類環形動物扁形動物ゴカイ類貝虫腹毛動物ダニ甲殻類、そしてクマムシなどを含む5629体もの生物が見つかりました。

これらの生物は、可能な限り自然環境を模倣するように設計された複数のタンクに入れられ、さまざまな量のプラスチック粒子を含む100gの堆積物と共に保管されました。この実験に用いられたプラスチック粒子には、半径が0.001mm未満の厳密には「ナノプラスチック」に分類されるものも含まれていましたが、研究チームは粒子のサイズによる分類は議論中であることを踏まえ、すべて「マイクロプラスチック」と総称しています。


しばらく生物を放置してから分析した結果、クマムシを除くすべての生物がマイクロプラスチックを吸収したことが確認されました。クマムシだけがマイクロプラスチックを飲み込まなかったのは、エサを丸ごと摂食するのではなく、細長い管のような口から出る口針(歯針)をエサに突き刺して、吸い込むように食べるからだと推測されています。

とはいえ、一口にクマムシといってもさまざまな種類が存在しているため、種類によってはマイクロプラスチックを飲み込む可能性があるとのこと。また、今回観察されたクマムシは体内にマイクロプラスチックを吸収していなかったものの、脚(運動器)など体の表面にはマイクロプラスチックが付着していたと報告されています。

by Philippe Garcelon

今回の研究結果はクマムシの特殊さを強調するだけでなく、非常に小さな生物にまでマイクロプラスチック汚染が及んでいることを示すものです。一部のメイオファウナは他の個体を捕食することが知られているため、マイクロプラスチックは食物連鎖によって濃縮される可能性が示唆されています。

なお、マイクロプラスチック濃度が最も高いタンクとマイクロプラスチックを添加していないタンクでは、メイオファウナの密度や種の豊富さに違いがみられませんでした。しかし、より低いマイクロプラスチック濃度のタンクでメイオファウナの減少が引き起こされているなど、直感に反する結果もみられたとのことで、根本的なメカニズムを理解するにはさらなる研究が必要です。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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