クマムシは秒速825メートルの弾丸として射出されても生き残ることが判明
特定の条件下では超高圧や極低温にも耐えられることで知られる「クマムシ」ですが、新たな研究により秒速825mまでの速度であれば、その衝撃に耐えられることが明らかになりました。
Tardigrade Survival Limits in High-Speed Impacts—Implications for Panspermia and Collection of Samples from Plumes Emitted by Ice Worlds | Astrobiology
https://www.liebertpub.com/doi/full/10.1089/ast.2020.2405
体長50マイクロメートル~1.7ミリメートルの大きさで4対8本の脚を持つクマムシは、日本を含む世界中の淡水環境などで簡単に見つけることができる生き物です。クマムシの一部の種類は、周囲が乾燥してくるとじっくりと時間をかけて体を縮めて生命活動を停止させ、「クリプトビオシス」状態となります。クリプトビオシス状態となったクマムシは極端な圧力や極低温、高線量の放射線にも耐えることができます。
by Philippe Garcelon
イギリスのケント大学の研究者であるアレハンドラ・トラスパス氏とマーク・バーチェル氏は、クマムシが宇宙空間で岩石などに衝突した際、その衝撃に耐えられるのかという疑問を解決するために調査を行いました。トラスパス氏らはクリプトビオシス状態をとれるクマムシ「Hypsibius dujardini」を用意し、そのうち2~3匹を2段式ライトガスガンのシャフトの中に少量の水とともに詰め、48時間かけてシャフト内でクマムシのクリプトビオシス状態を引き起こしました。その後シャフトをライトガスガンに装着し、真空チャンバー内で49.9cm離れた砂の中めがけて射出しました。
速度を変えて計6回射出を行ったところ、秒速556メートル~秒速825メートルのスピードであればクマムシが無傷で活動を再開できたのに対し、秒速901メートル・秒速1000メートルの場合はクマムシがバラバラになってしまったとのこと。また、各衝撃のピーク時の圧力を計算したところ、秒速825メートルの場合は1.01GPa、秒速901メートルの場合は1.14GPa、秒速1000メートルの場合は1.31GPaとなり、トラスパス氏らは「1.14GPa以上の衝撃が加わるとクマムシの生存確率は0%となる」と結論付けています。
クマムシは600MPa~7.5GPaの静荷重に耐えられるということが既存の研究で明らかになっていましたが、今回の研究により衝撃荷重に関する新たな知見が得られました。トラスパス氏らは「既存の研究によると、月面への隕石(いんせき)衝突の際の最大衝撃圧は2GPaを超えることが明らかになっており、他の星でも1GPa以上の衝撃を受けることが多くあることが分かっている」と述べており、クマムシは宇宙空間で発生する衝撃には耐えられない可能性が示唆されています。
また、射出の衝撃を受けたクマムシは衝撃を受けなかったクマムシに比べて活動状態への移行時間が長くなったことも判明しており、トラスパス氏は「ある程度の内部損傷を修復する必要があるのでは」と推測しています。トラスパス氏らは「今回の研究と同様にクマムシの卵を射出し、射出後にそれらが発育できるかどうかを評価することも有益な研究分野です」と述べています。
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in サイエンス, 生き物, Posted by log1p_kr
You can read the machine translated English article Kumamushi turns out to survive when fire….