サイエンス

紙コップでコーヒーを1杯飲むと2万5000個のマイクロプラスチックを摂取することになる


コンビニやコーヒーショップで飲み物を購入した時や、公共施設の休憩スペースに設置されているドリンクコーナーなど、使い捨て紙コップは日常生活の至る所で使われています。そんな紙コップに注いだ熱湯を分析した研究により、紙コップでコーヒーやお茶を飲むと大量のマイクロプラスチックが飲料に溶け出すことが判明しました。

Microplastics and other harmful substances released from disposable paper cups into hot water - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304389420321087

Drinking hot beverages from paper cups poses health risks, shows study
https://www.news-medical.net/news/20201119/Drinking-hot-beverages-from-paper-cups-poses-health-risks-shows-study.aspx

Coffee with a side of microplastics: paper cups likely leach plastic into your cup of joe
https://www.zmescience.com/science/coffee-with-a-side-of-microplastics-paper-cups-likely-leech-plastic-into-your-cup-of-joe/

今回、使い捨ての紙コップで温かい飲み物を飲んだ際の影響についての実験を行ったのは、インド工科大学カラグプル校で環境工学を研究しているSudha Goel准教授らの研究チームです。研究チームは、紙コップにコーヒーなどを注いだ状況を再現するため、まず市販されている使い捨て紙コップを5種類収集しました。5種類の紙コップのうち、4種類は高密度ポリエチレン(HDPE)グレードのプラスチックフィルムで内側がコーティングされたものだったとのこと。


研究チームが紙コップに85~90度の熱湯を100ミリリットル注ぎ、15分間放置してその様子を蛍光顕微鏡で観察したところ、マイクロプラスチックが湯の中に放出されていることが確認されました。

以下は、研究チームが撮影したマイクロプラスチックの顕微鏡写真です。Goel氏らがマイクロプラスチックの数を計測したところ、ミクロンサイズのマイクロプラスチック粒子が100ミリリットル中に約2万5000個含まれていることが分かりました。


この結果についてGoel氏は、「コーヒーやお茶を飲むのにかかる15分間でカップのプラスチック層が劣化し、2万5000個のミクロンサイズの粒子となって飲料中に放出されます。つまり、紙コップ入りの温かい飲み物を毎日3杯飲む人は、肉眼では見えないマイクロプラスチックの粒子を1日に7万5000個摂取することになります」と話しました。

また、紙コップの中の試料を走査型電子顕微鏡で観察した結果、1ミクロンより小さいサブミクロンサイズのマイクロプラスチックは約102億個も入っていたことが分かりました。さらに、フィルムの劣化によりフッ化物・塩化物・硫酸塩・硝酸塩などのイオンが飲料に溶け込んだことも確認されています。研究チームは、「実験には超純水を使用したため、これらの物質はほぼ確実に紙コップ由来」としています。

記事作成時点では、マイクロプラスチックが直接人体に及ぼす影響や毒性は明らかになっていませんが、Goel氏は「マイクロプラスチックはパラジウム・クロム・カドミウムなどの有害な重金属を運ぶ媒体として機能することが分かっています。従って、長期間にわたり定期的に摂取すると、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります」と述べて、懸念を示しました。


市場調査会社IMARC Groupの調べによると、2019年に世界で生産された紙コップの数は約2640億個にのぼるとのこと。また、生分解性プラスチックの普及を目指している業界団体のEcoLifeは「使い捨て紙コップには大きな需要があり、リサイクルもできないので森林伐採の原因となり得ます。また、プラスチックを含んでいるため土中でも完全には分解されず、薄いプラスチックのフィルムが残ってしまいます」と話しています。

こうした問題を踏まえて、インド工科大学カラグプル校の農業食品工学部長であるVirendra Tewari氏は、「私たちは、プラスチック製の容器が環境に負荷を与えるとして、すみやかに紙コップに置き換えました。しかし、今回の研究によりこうした対策を行う際には慎重な検討が必要なことが示唆されています」とコメントしました。

なお、インドでは伝統的に「Kulhar」と呼ばれる粘土製の使い捨てコップが飲み物の販売などに使われていますが、近年では紙コップの普及により都市部などでは使われなくなってきているそうです。

by Peter Burka

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in サイエンス,   , Posted by log1l_ks

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